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未踏チャレンジ2050
プログラムディレクター、プログラムオフィサー紹介

プログラムディレクター

安井 至 国立大学法人東京大学 名誉教授
安井 至

「パリ協定が採択された2015年は人類の転換点であった」。2040年ごろには、ほぼすべての人はそう理解していることでしょう。すなわち、過去300年ほど継続した「化石燃料文明」は今世紀後半のどこかで終焉を迎え、NZE(Net Zero Emission=CO2発生実質ゼロ)を実現しなければなりません。科学がこれほど明確に、人類が創出すべき未来を提示したのは初めてのことです。

この300年、特に1950年以降の人類の化石燃料への依存度はきわめて高かったので、脱化石燃料技術をほぼあらゆる分野で実現するための新しく多様なアイディアをできるだけ多く生み出すことが“NEDO未踏チャレンジ2050”の目的です。 歴史的に見て、おそらく人類最大のチャレンジである脱CO2化に有効なイノベーションの芽を生み出すことが、未踏チャレンジであることをご理解いただき、応募していただきたい。現時点で分かっている問題の解決よりも、将来、出現が予測される問題を想定し、その解決に結びつくようなイノベーションのタネの提案を期待しております。

プログラムオフィサー

■ 領域: 次世代省エネエレクトロニクス

山崎 聡 氏の写真 国立大学法人金沢大学 ナノマテリアル研究所 特任教授
山崎 聡

2050年における、温室効果ガスの抜本的削減と順調な経済発展を両立させるためには、最終エネルギーの電力化率が、現在の20%程度から、50%程度に拡大することが必要であるとされています。電力利用の拡大をスムーズに達成させるためには、パワーエレクトロニクスに関連する技術の飛躍的な進展が不可欠です。この進展によって、電力変換機器の大電流化、高耐圧化、高周波化、小型化や低コスト化が進み、電力利用分野の拡大、効率化、また再生可能エネルギー大量導入が加速すると考えられます。本プログラムでは、2050年を見据え、Si、SiC、GaNによる現状のパワーデバイス性能を凌駕するデバイス開発や電力システムの革新をもたらす周辺技術開発による若手研究者の挑戦的な提案を期待しています。

【担当テーマ】
  • 超高効率・高出力モーターに資する世界最強磁石の開発(秋田大学)
  • AINを用いたヘテロ接合型超高耐圧・大電流パワーデバイスとAIN結晶評価技術の開発(JFCC, 山口大学)
  • パワーデバイスの技術革新(金沢大学)
  • 酸化アルミニウムを用いた低価格パワーデバイスの開発(筑波大学)
  • 低消費電力フレキシブルCMOSの創成(筑波大学、九州大学)
  • スマートグリッドの先へ導くパワエレ技術(筑波大学)
  • 低ネガワットコストモジュール設計法の創成(近畿大学)
  • 負のdeltaEST実現による高効率で長寿命な有機青色発光材の開発(理研、東レ)
  • デジタルアクティブゲート技術を駆使したノイズフリー・パワエレ電力ネットワークの創生(東京大学、横浜国立大学)
  • コンパクトで安価かつ汎用的な限流遮断器の開発(埼玉大学、名古屋大学)

■ 領域: 環境改善志向次世代センシング技術

藤田 博之 氏 学校法人五島育英会 東京都市大学 教授
国立大学法人東京大学 名誉教授
藤田 博之

多数のセンサを家庭から工場や道路まで張り巡らしたセンシングネットワークで情報を集め、ムダを省く制御によって多くのエネルギーが節約できます。この時、メンテナンスフリーの安価な無線センサノードを提供する必要があり、このために超低電力消費のセンサや電子回路と、環境発電等による自立給電に関する新技術を研究開発します。また、省エネルギーに資するセンサは高温や腐蝕性の高い環境での使用も想定されるため、悪環境で信頼性高く動作するセンサも研究します。

中長期での画期的な省エネルギーを目指す、革新的な技術開発の提案を期待します。現在の技術の改善にとどまらず、例えば、マイクロナノ領域で発現する新現象を利用する提案や、異分野融合による新規な方式の発案、新たな物理概念の導入などの観点からの提案を歓迎します。

若手研究者の挑戦を支援し、次世代の技術をけん引する人材の育成を目指して、長期的な技術発展を念頭に置いた上でブレークスルーを実現しようとする研究を見出し、助成していきたい。また、萌芽的なアイディアを育てるため、単一技術の深掘りの方向と異分野技術との融合の方向の、どちらも大切にする研究計画を立てていただきたい。

【担当テーマ】
  • 周波数変調・積分型MEMSジャイロスコープの開発(東北大学)
  • 磁気-熱-電気間相互作用の体系的解明と新原理デバイスの開発(産総研、物材機構)
  • サスペンデットグラフェンを用いた低消費電力集積化センサシステムの研究(豊橋技術科学大)
  • 湿度変動発電素子の研究開発(産総研)
  • 厳環境対応SiC量子センサーの開発(電中研、量研)
  • 光波発電を用いた赤外光エネルギー利用(東北大学)
  • 昇圧回路不要の熱電発電デバイス(産総研、神戸大学)
  • 涙液糖発電センサとパッシブ通信による自立血糖モニタコンタクト(名古屋大学、メニコン)

■ 領域: 超電導・導電材料・システム開発

細野 秀雄 氏 国立大学法人東京工業大学 栄誉教授 
細野 秀雄

2050年ごろの社会実装を目指すのが本プログラムの目的ですが、そのころは私を含めプログラムディレクター、オフィサーもこの世にはいないでしょう。でもその頃に実装されるような重要な技術開発の課題を選ぶのは私たちの使命です。此れだけ未来のことを真剣に考えるのは動物の中では人間だけでしょう。「英知」のなせる業です。

私の担当領域は「超電導」です。超電導現象が発見されて100年余り。その間にいくつかの画期的な高温超電導物質が発見されて、その理解も進みましたが、新たな高温超電導物質を予測できる理論は確立していません。現象自体は明確ですが、その科学は極めて難しいのが超電導です。一方、既知の超電導体を材料に仕立て上げる技術は、着実に進展しています。しかしながら、大きな産業応用が可能になるには、性能、プロセス、コストなどでブレークスルーが必要です。常圧下で臨界温度が高く、しかも応用に適した新物質の発見が待望されています。これがこの分野の現状です。斬新な発想とそれを裏付ける予備的検討の結果をもった若手の意欲的挑戦に期待しています。

【担当テーマ】
  • 革新的エネルギーネットワーク基盤技術の創製(九州大学)

■ 領域: 未来構造・機能材料

香川 豊 氏 学校法人 片柳学園
東京工科大学 片柳研究所長
香川 豊

2050年の社会はどのようになっているのでしょうか?2050年にどのような科学技術がどのように社会に役立っているのでしょうか? 今の社会で軽量構造材料として役立っている高性能炭素繊維を利用した炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)やマグネシウムやチタンなどの軽量金属材料、耐熱材料として用いられている超合金、実用化が期待されているSiC繊維-SiCマトリックス複合材料(SiC/SiC)などは数十年単位という長い時間を費やして「使える材料」になりました。現在の材料開発が過去の優れた成果により成り立っていることは疑う余地もありません。

このプログラムで期待していることは、現時点で開発されている材料を改良することではなく、新たな材料技術を創り出すための研究テーマの設定と研究テーマを実現するアイディアです。2050年という30年先の社会のエネルギー・環境分野の課題解決に役立つ、「軽量」、「耐熱」、「耐環境」などのキーワードを実現するために役立つ材料はどのようなものなのかを考えた斬新なテーマへの若手研究者のチャレンジを期待します。

【担当テーマ】
  • 選択的酸化法による植物由来ポリマーの接着制御(大阪大学)
  • 自己増殖型資源を利用したセルプラスチックス軽量素材の実現(東京工科大学)
  • チタン合金の新規リサイクルプロセスの開発(東京大学)
  • 高次機能の実現を目指すナノ材料の精密制御手法の開発(京都大学)

■ 領域: CO2有効活用

関根 泰氏 学校法人早稲田大学 教授
関根 泰

地球という物質閉鎖系に生きている我々は、大気と水と地殻表層の範囲での物質循環・エネルギー利用の永続性を考えなくてはなりません。外部から唯一入ってくるエネルギー源である太陽光をうまく使いこなし、大気・水・表層の植物などを利用した、永続性のある化学を生み出していく必要があります。

現在はまだ化石資源利用にどっぷりと浸かっている中で、未来を見据えたパラダイムシフトに資する技術を作り出していくことが我々の使命です。日本から世界に展開しうる、独創的な技術をともに創り上げていきましょう。

【担当テーマ】
  • CO2とH2からの高付加価値化学品合成に関する先導的研究(北海道大学)
  • 二酸化炭素とジオールの重合用固体触媒プロセスの開発(東北大学)
  • 二酸化炭素のリサイクル・資源化のための新しい触媒プロセス開発(東京都立大学)
  • メタンチオール経由でCO2をオレフィン化する革新的物質変換系の開拓(静岡大学、九州大学)
  • 二酸化炭素回収と資源化の複合化技術開発(広島大学、高知大学)
石谷 治氏 国立大学法人東京工業大学 教授
石谷 治

2050年における人類は、地球温暖化の問題に加え、可採化石資源の枯渇によるエネルギー問題と炭素資源の不足の問題に直面している恐れがあります。自然界は、光合成において、CO2を炭素源、太陽光をエネルギー源そして水を還元剤として活用することで、大気中のCO2濃度を一定に保ち、しかも多量の高エネルギー炭素含有物質を作り出しています。

ところが我々人類はそのような実用的技術を持っていません。その技術基盤を成す化学および化学工学は十分な発展を遂げているとは言えません。このことが、上述の3つの深刻な問題を引き起こしている主原因です。

私が担当している「CO2有効利用」領域では、将来的にこの状況を打破する可能性のある新たな研究を支援していきたいと考えています。水を還元剤として使うこと、低濃度CO2を直接資源化すること、CO2を有機物へと直接的に変換すること、酸素共存下でCO2を還元することなど解決すべき課題が山積しています。報告されていない新しい化合物群、方法論、概念を打ち立てられることにチャレンジする若手研究者の参画を期待しています。

【担当テーマ】
  • 排気ガス由来低濃度CO2の有用化製品への直接変換(産総研、東ソー)
  • CO2循環型新製鉄システムの研究開発(九州大学)
  • 二酸化炭素水素化による有用物質ワンパス合成(東京大学)
  • 遷移金属触媒を基盤としたCO2変換に関する技術開発(産総研)
  • 二酸化炭素の効率的分子変換反応の開発(九州大学)
  • 高効率太陽光CO2電解還元システムの研究開発(豊田中央研究所、成蹊大学、岡山県立大学)
  • 個別テーマの内容については、NEDO先導研究プログラムのサイト内リンク パンフレットをご参照ください。

最終更新日:2021年9月15日