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NEDOパビリオン とびだす日本のテクノロジー
Vol.9
水素分離膜
お話:福田金属箔粉工業株式会社
新商品事業部 技術開発グループ
西田元紀さん
新保洋一郎さん
西田元紀さん 新保洋一郎さん
21世紀は水素の時代
燃料電池

燃料電池

高効率でクリーンなエネルギー

次世代のエネルギーとして、燃料電池の研究開発が進んでいます。これは水素と酸素の化学反応によって電気を起こすもので、従来の石油による火力発電に比べ、エネルギー効率がよく、CO2や大気汚染物質の排出を大きく削減することもできるクリーンエネルギーとして大いに期待されています。この燃料電池に必要なのが水素。水素は天然ガスやメタノールをはじめ、さまざまな燃料からつくりだすことができます。これを改質(成分の組み立て、性質を改良する)といい、ここからいかに効率よく純度の高い水素をつくるかが、実用化への大きなカギとなっています。この役目を果たすものが水素分離膜で、さまざまな材料の研究がされています。今回ご紹介する福田金属箔粉工業(株)は独自の金属ガラス箔を使用した水素分離膜を研究開発し、大きな成果を上げています。燃料電池は自動車をはじめ、コージェネレーション(家庭用自家発電装置)、モバイル機器などの用途に一日も早い実用化が待たれています。21世紀は水素の時代。研究開発にあたる西田さんと新保さんにお話を伺いました。
高価なパラジウムに代わる
合金から水素分離膜へ

合金から水素分離膜へ

水素分離のメカニズム

水素分離のメカニズム

金属ガラスの水素分離膜

燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて電気を起こします。燃料電池に必要な水素は、たとえば天然ガスと水蒸気に熱を加えてできた、水素、酸素、CO2、COなどから、不純物を取り除き、水素原子だけを透過させて作り出します。この水素原子だけを透過させるフィルターが水素分離膜です。従来の水素分離膜は主にパラジウム合金の金属箔(金属を薄く延ばしたもの/箔帯)が使われていますが、パラジウムは資源的にも少なく、非常に高価なため、将来の燃料電池の普及に向けて大きな問題となります。そこでこれに代わり、一般的な金属の合金で水素分離膜をつくる研究が福田金属箔粉工業ではじまりました。 目標は、パラジウム合金の水素分離膜と比べて、コスト面で10分の1、水素透過係数(水素を通す率)が2倍、パラジウム使用量は50分の1というゼロに近いもの。そしてついに目標をクリアする、ニッケル、ニオブ、ジルコニウムを主成分にした金属ガラス箔を開発しました。金属ガラスは、東北大学と共同で研究を進めてきたもの。原子の配置がバラバラな状態になっていて、さまざまな加工に適しています。
均一な箔帯をつくるために
単ロール液体急冷器

単ロール液体急冷器

単ロール液体急冷

単ロール液体急冷

さまざまな合金設計

「水素分離膜の開発で一番苦労したのは、ニッケル、ニオブ、ジルコニウムの配合比率を探る合金設計です」と語る新保さん。たとえば、透過性能がよくなると、水素脆化(すいそぜいか/金属がもろくなる)を起こしてしまうなどの問題がおき、ちょうどよい配合バランスをとるのが難しいところでした。これに根気よく何度も挑戦し、今年3月に透過係数をパラジウム合金の2倍にすることに成功しました。
もう一つの課題が箔帯の幅を広くすること。実際に使うには幅5センチ以上のものが必要です。箔帯をつくる方法は単ロール液体急冷法と呼ばれ、1200〜1300℃で溶解された合金に圧力をかけ、高速で回転する銅のロールに吹きつけ、遠心力で吹き飛ばします。ロールの中は水冷式で瞬時に冷やされて箔帯ができます。噴出し口には0.5ミリ以下の細いスリット(切り込み)があり、溶かした合金が少しでも凝固してしまうと穴があくなど均一な膜はつくれません。そこで温度が下がらないノズルの材質や形状を求めて何度もチャレンジ。こうして最終的に箔の厚みが30ミクロン(1ミクロンは1000分の1mm)、幅10センチの均一な膜をつくることに成功し、実用化に向けた大きな一歩を踏み出しました。開発期間は、4年間。約10名でのトライで最終年度に全ての目標値をクリアしました。次の目標はガス会社との共同開発で水素ステーションの実用化をめざしています。
伝統文化を支えた箔粉技術から
桃山城の金箔瓦

桃山城の金箔瓦

携帯電話の材料開発

携帯電話の材料開発

ハイテクを支える材料開発へ

福田金属箔粉工業は古都京都という地域で1700年に金銀箔粉商として創業して以来、神社仏閣や、西陣織りの金糸銀糸などの伝統文化に培われた300年の歴史があります。現在では半導体などのハイテク分野から、エネルギー、環境、医療など、広範囲にわたる材料を製造しています。身近な携帯電話では電磁波シールドをはじめ、10箇所近い部分に福田金属箔粉工業の材料が使われています。このように材料の研究開発は、私たちの大切な暮らしを支えています。
西田さんからのメッセージは、「エネルギー問題や環境保全がこれからの時代の大きなテーマです。私たちもみんなが夢をもてるような社会づくりのために、積極的に材料開発を進めていきます。若い人たちも将来夢をもって仕事をしてください」。新保さんは「学生のころから、材料の勉強をしてきましたが、あまり人気がある学科ではありませんでした。しかし、世の中にあるハイテクやパソコンなどの部品には必ず材料を研究開発している人が関わり、最先端の技術が使われています。ものづくりの上流に位置する素材の研究は、非常にやりがいのある仕事だということを知ってほしいですね」と語ります。高効率で次世代のクリーンエネルギーのカギを握る燃料電池も、こうした材料開発によって実現していきます。一つの材料開発が、世の中を一気に変えてしまうほどの可能性を秘めています。こうした夢に向かって福田金属箔粉工業はこれからも新たな材料づくりに挑戦します。
バックナンバー
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