4次元X線CT装置Aquilion ONE™の全景

320列Aquilion ONE™

4次元X線CT画像表示、頭部検査中のモニター画面表示の例

高速で回転する検出部。患者さんに負担をかけず、
立体でしかも時間経過まで観察できるCTは、
医療に新たな発見や発展をもたらす可能性も

撮影範囲の拡大 32mm→160mm
撮影時間の短縮 7秒→0.35秒(心臓撮影時)
被曝量の減少 従来の1/4(心臓撮影時)

病院における主な画像診断装置には、MRI、超音波などとともにX線CT装置があります。X線CT装置はX線を照射して臓器などの断層撮影を行う装置ですが、1990年代までのCTは心臓や脳などの臓器全体を高精細かつ立体的に捉えることは困難で、臨床現場からは患者負担が小さく、リアルタイムにかつ鮮明な画像が撮影できる診断機器の開発が求められていました。このような状況下、東芝メディカルシステムズは1998年にNEDOプロジェクト「高速コーンビーム3次元X線CTの開発」に参加。その後さらにNEDO助成事業「リアルタイム4Dイメージングシステムの開発」などによって開発を進めてきました。そして、2007年11月、ついに世界でも初めての「1回転の撮影で心臓や脳などの臓器全体を撮影することができる」X線CT装置「Aquilion ONE™」を発表しました。2010年現在、世界の300施設以上に販売されています。

検査時間、被曝量、造影剤などを減らし、
患者さんの負担も軽減

現代の医療にとって、画像診断機器は欠かせないものです。代表的な画像診断機器のひとつであるCTは、X線を照射しながら人体のまわりを回転させて、X線の吸収率の差によって白黒の濃淡をつけた断層画像を撮影します。最近では1回転で複数の画像を撮影したり、撮影した画像をコンピュータ処理して3次元再構成することも可能です。例えば脳の診断を行う場合は、頭蓋底から頭頂部に向かって順に脳を輪切りするようにスライス画像を撮影していき、脳全体の診断を行います。

しかし、従来型のCTでは、患者さんにとって負担になるような問題がいくつかありました。まず、CTが体のまわりを1回転して撮影している間、まったく動いてはいけないこと。この間は呼吸も止めていなければなりません。そして、撮影時間が長ければ長いほど、放射線による被曝量が増えてしまいますし、血管の診断などに使用する造影剤の量も多くなるといった身体的負担が増大します。

NEDOプロジェクトでは、このような課題に挑み、より高度な診断が可能で、患者さんの負担が小さいCTの開発を進めてきました。目指したのは撮影時間の大幅短縮により、被曝量や造影剤の使用量を減らす方法で、従来型のCTとはまったく異なる概念の「未来のCT」とも呼べるものでした。

心臓全体を1回で撮影する「1回転1臓器」への挑戦

1970年代に登場した初期のCTは、1つのX線管球に対して1列の検出器が対向した形で回転して画像データを収集していました。当時のX線管球から照射されるX線ビームは細く、1回転で得られる画像も1枚だけです。その後、細いペンシル型だったX線が扇状になり、何列もの検出器でデータ収集ができるようになります。

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Aquilion ONE™で撮影した臓器の立体画像(左)と、従来のCTで撮影した断面画像(右)。Aquilion ONE™は、1回転、0.35秒で、臓器全体を撮影可能。動いている心臓でも高精細な立体画像が得られる(画像提供:東芝メディカルシステムズ)

1990年代後半に1回転で複数の画像データを取得できるマルチスライスCTが開発され、1列だった検出器が4列になりました。2000年代になって16列、32列、2004年には64列CTが開発され、1回転で64枚の画像を取得、32mmの幅を撮影可能となりました。

その一方で、臓器全体または全身を撮影するために、従来行われてきたのが「ベッドを動かしながら撮影する」ヘリカルスキャンという方法です。初期のCTでは1枚ずつ画像を撮影しては患者さんを乗せているベッドを動かすという動作を繰り返さなければならず、20枚の画像を撮影するのに約10分も時間がかかりました。患者さんは回転の度に20回も息を止めなければならなかったのです。

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図1 ベッドを動かしながら撮影する「ヘリカルCT」(左)では時間がかかる上に、撮影範囲の重なる部分の画像の劣化や放射線量が増えてしまうというデメリットがある

その後、人体のまわりをらせん状に回転しながら撮影を行う「ヘリカルCT(世界初のヘリカルスキャン標準装備CTは東芝メディカルシステムズから1990年に発売)」が登場したことで、臓器全体の撮影時間は数十秒、息止めも1回で済むほどまで進化しました。

東芝メディカルシステムズではこうした技術開発を行いつつ、さらに先を見据えた研究開発に着手していました。1回転で1枚の画像しか撮影できなかった1980年代の後半に「1回転で臓器全体を撮影できるCT」というコンセプトを打ち立ててはいたものの、これは企業単独で実施するにはリスクが非常に高いものでした。それが1998年からNEDOプロジェクト「高速コーンビーム3次元X線CTの開発」に参加したことにより本格的な研究開発をスタートすることとなりました。「高速コーンビーム3次元X線CTの開発」プロジェクト終了後も、その成果を引き継ぎ、さらに技術の精度を高めるため、NEDO事業「リアルタイム4Dイメージングシステムの開発」に参加し、NEDOからの切れ目の無い支援により実用化に向けた技術開発を続けてきました。それから約3年を経て、世界初となる1回転0.35秒で心臓全部を撮影できるX線CT「Aquilion ONE™」を完成させました。

なるほど基礎知識

どうして体の断面図を撮影できる?
X線CTの仕組みと、他の画像診断装置との違い

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X線ビームを照射するX線管球と対向するように設置された検出器が人体のまわりを1回転しながらそれぞれの方向でのX線吸収率を測定し、その測定データからコンピュータ処理された断面図がCT画像です。CT画像では、X線吸収率の高い部分が白く、吸収率が低い部分が黒く、白黒の濃淡によって表示します。X線吸収率の高いカルシウムを多く含む骨は白、吸収率が低い空気などは黒、その中間にあたる筋肉は灰色で表示されます。動脈瘤や血管損傷の診断の際には、X線を透過しにくい造影剤を血管内に注入した後に撮影を行います。

X線を使用するという点ではいわゆるレントゲン(X線)写真と同じですが、レントゲンは平面的な投影画像なので、重なっている部分が見えにくいというのが難点です。

また、同じように輪切り画像を撮影できる診断機器にMRI(磁気共鳴画像)がありますが、こちらは磁気共鳴現象を利用して断層画面を作り出していて、放射線被曝の恐れはないものの、骨の状態を診ることができないというデメリットがあります。

近年注目が高まっているPET(陽電子放射断層撮影)検査は、ガン細胞がブドウ糖を取り込みやすいという性質を利用し、ブドウ糖の薬剤(FDG)を体内に注入して体内のブドウ糖代謝の様子からがんを発見するという診断法です。

この他にも超音波検査などの画像診断機器があり(表参照)、新たな診断法も次々と確立されています。それぞれに得られる情報や得意分野が異なりますから、適正な診断を受けることが大切です。

世界初の320列CT「Aquilion ONE™」の誕生

2007年に発表された「Aquilion ONE™」は、当初掲げた目標の通り、1回転で1臓器を撮影し、かつ3次元画像に時間軸を加えることで4次元画像として鮮明に映像化できる世界で初めての4次元X線CT装置です。

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(左)4次元X線CT装置Aquilion ONE™の全景
(右)Aquilion ONE™のX線検出部。
320列の検出器は断層撮影をするCTとしては
かなり幅があることが分かる

「Aquilion ONE™」最大の特徴は、わずか0.35秒で1回転のスキャンを完了し、160mmという広範囲を撮影できることです。160mmの撮影範囲であれば、ベッドを移動させることなく、脳、心臓を1ボリュームとして撮影することが可能になります。これにより従来の最上位機種に比べて、例えば心臓撮影なら撮影時間は約1/20に、被曝量は約1/4、造影剤の使用量も1/2程度まで軽減できます。ベッドを移動させずに継ぎ目なく一度で撮影した画像なので、ミスレジストレーション(画像処理時の誤差によって生じる画像劣化)のない極めて高品質な画像を得ることにもなります。

この「Aquilion ONE™」の超高速、広範囲スキャンを可能にしたのが、320列検出器(Area Detector)です。多列化が進んでいたとはいえ、「Aquilion ONE™」発表までは最上位機種でも64列だったことを考えると、320列という数字がいかに大きなものか分かります。

形態診断から機能診断へ
"血流まで見える"4次元イメージング

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図2 検査の流れを分かりやすく表示した検査画面イメージ(上)とこの検査で得られる画像の例(下)。全脳の非造影断層画像の他、動脈・静脈の血管像、血流観察、血流量マップ計算など血流の動態情報を取得できる

「Aquilion ONE™」のもう一つの特徴は、1回転160mmの高速スキャンを連続で行うことで血流や臓器などの動態(動画)観察を広範囲で行えることです。

輪切り画像の連続であるCTでは、カタチを見ることはできても、動きを見ることができないという欠点がありました。輪切り画像をコンピュータ処理して立体化できたとしても、その画像は止まったままです。しかし、「Aquilion ONE™」は1回転0.35秒という高速回転であるため、もともとの3次元撮影に連続して撮影する"時間軸"というベクトルが加わり、リアルタイム4次元イメージングが可能になりました。

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4次元X線CT画像表示、頭部検査中のモニター画面表示の例

実際の臨床現場での応用範囲を広げ、質の高い診断を実現するために、頭部用、心臓用など、診断部位や機能に応じた解析アプリケーションソフトウェアの開発にも力を注ぎました。脳卒中診断などに有用な頭部用解析ソフトウェアでは、血管のみのボリュームや、脳の3次元血流量マップを作成することが可能です。

心臓用解析ソフトウェアでは、心機能を評価する上で重要な「拡張/収縮末期容量(拡張/収縮時の血液容量)」「1回排出量(1回の収縮で排出される血液量)」「心駆出率(排出量を拡張時の容量で割った値)」「心拍出量(1分間に排出する血液量)」などを算出し、心筋の動きを視覚的に評価できるなど、「形態」「機能」「動態」いずれにおいても高い精度での診断ができます。これらのソフトウェアは現在「Aquilion ONE™」を使用している世界中の医療機関からフィードバックされたデータや情報をもとにさらにバージョンアップされ、新たな診断に役立つソフトウェアの開発も進められています。

今までにないCTだからこそ、
今までにない診断が可能になる

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ガントリ(回転部)は頭部撮影時などに角度調整ができる

「Aquilion ONE™」の誕生によって、画像診断の可能性は一気に広がりました。血流速度の速い脳の血流動態を観察することができますし、動脈と静脈を分離して捉えることも容易です。これにより、患者さんに負担のかかる血管カテーテル検査が不必要になります。また、これまでCT撮影が困難だった、息止めが困難な小児や認知症などの患者さんでも検査しやすくなりました。

また、動いている関節の動態診断(整形領域)、自然呼吸下での肺の動き(呼吸器領域)など、従来のCTでは不可能とされてきた新たな領域での診断でも有用です。さらにものを飲み込むときの嚥下運動を観察してリハビリに役立てるなど、診断の枠を超えた応用法も検討されています。

break through

東芝メディカルシステムズが「1回転1臓器」というコンセプトの"未来のCT"について議論を始めたのは1990年頃でした。当時は1列のシングルスライスが主流で、4列多列化に向けて各企業が模索している最中でしたから、320列など夢のような話でした。

コーンビームX線と256列検出器で
"高速に"撮影する

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256列CT内部構造:試作段階だが製品と配置などは同じ

1998年にスタートしたNEDOプロジェクト「高速コーンビーム3次元X線CTの開発」では、ソニー、独立行政法人放射線医学研究所(放医研)と共同の研究開発により、被写体に向けてX線をコーン状に照射するX線管球に対して、256列の検出器を配することに成功しています。この当時、医療用として実現していたのは16列検出器まででしたから、この時点で16倍の視野を持つことになりました。

課題は、検出器が多列化すれば検出器素子数が飛躍的に多くなり(1列で約900素子、256列では約23万素子)、信号を処理するデータ収集回路の実装密度を大幅に上げる必要があること、そしてデータ量の増大に伴い素子からの信号を収集、伝送、画像再構成する時間も併せて増加してしまうことでした。高画質化と放射線量軽減のためには「小型化・高速化」が重要なポイントです。

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320列Aquilion ONE™(左)と64列従来機(右)の検出器幅比較

そこで、データ収集回路を高密度化し、高速データ伝送を実現する独自の回路方式を開発した他、従来のように画像を1枚ずつ再構成するのではなく、スキャンボリューム全体を一度で再構成するボリューム再構成方式を採用。当初1回転1秒程度だった回転速度は0.5秒まで短縮され、最終的に製品化される際には0.35秒という超高速回転まで実現するに至りました。また、検出器やデータ収集装置を極限まで小型化・高集積化したことで、従来のCTと同程度の実装サイズを実現。これほどの広範囲撮影が可能でありながら今までと変わらないサイズであるという点は、設置スペースもとらず、患者さんへの圧迫感もないので臨床現場で高く評価されているといいます。

「撮影範囲160mm」にこだわり、
256列→320列へと大きな飛躍

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Aquilion ONE™での頭部撮影画像。
1回転160mmの撮影範囲があれば
脳、心臓、腎臓などが1度で撮影できる

2001年から引き続き進められたNEDOプロジェクト「リアルタイム4Dイメージングシステムの開発」では、256列の検出器で128mmの範囲まで撮影することが可能になりました。

撮影数の限られる研究段階では、256列CTの撮影幅128mmは心臓撮影を行うのに十分でした。しかし、通常の臨床現場を前提に再検証すると、128mmでは足りないということが分かりました。心臓自体は128mmの撮影範囲で収まったとしても、呼吸や体動によって上下動する際に動いた部分が切れてしまったり、肥大した心臓もはみ出てしまいます。脳を撮影する場合でも、外国人の場合は小脳の一部が入りきらないのです。これは世界市場を目指す商品としてどうしても避けたい問題でした。

従来のCTから比較すれば128mmは十分すぎるほどのサイズですが、治療に役立つ診断機器の開発を目指す開発担当者たちは納得しませんでした。「Aquilion ONE™」の開発担当者であるCT事業部CT開発部の杉原直樹さんは「たとえ世界最高の数字であろうと、通常臨床で使われる診断機器である以上、中途半端となるような製品は世に出したくありませんでした」と、当時を振り返ります。結果、脳も心臓も余裕をもって撮影できる160mmというサイズを実現する検出器配列ということを前提に、320列で製品化することを決めました。

アーチファクト(偽像)を低減して
高精度な画像を実現

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coneXact™再構成(上)と従来再構成(下)。
コーン角が広がると、下側のようにアーチファクト(偽像)が
出てしまう

64列から256列、320列へと検出器幅が拡大すると、X線管球から照射されるX線のコーン角も広がります。64列で3度だったコーン角は、320列で15度になりました。コーン角が広がると、X線が斜めに入る外側に「アーチファクト(偽像)」がある画像が再構成されてしまいます。

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CTの画質評価に用いるファントム類。
白い円柱は骨を模したもの。
アクリルの外枠には軟部組織を模して水を注入してある

しかも、アーチファクトは体型や部位、骨密度などによって発生の仕方が変わるという難しさもあります。そこで、藤田保健衛生大学などの医療機関の協力を得て、様々な年齢、体型、疾患の患者さんによる臨床評価を行い、アーチファクトの影響を低減するアルゴリズム「coneXact™」を開発。「Aquilion ONE™」に組込み、アーチファクトのない高画質画像を実現しました。

200例を超える臨床評価を経て
さらにブラッシュアップ

NEDOプロジェクトからAquilion ONE™製品発表に至るまでには、放医研、藤田保健衛生大学、国立がんセンターの協力により、数々の臨床評価を実施しました。128mmから160mmへと撮影範囲を拡大するという意見も、256列CTを実際の患者さんに使用した臨床医からの意見に基づいたものでした。

2007年からは製品開発に向けた臨床評価として、米国ジョンズ・ホプキンス大学に256列CTを持ち込み、動物実験、実際の患者さんによる臨床評価を行っています。これらの医療機関で行われた臨床評価は200例以上にものぼり、主に機能診断を行うソフトウェアの開発に役立てられています。

志、アイデアがあっても成功すると
言い切れない状態をNEDOが支援

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プロジェクト開始当初に撮影した生きたザリガニの3D画像

「世の中がまだ1列から4列への道を模索している1998年、私たちは1回転で1臓器を立体的に捉えるという未知のCTを開発しようとしていました。しかし、当時の私たちには志、アイデアはあっても実現に伴うリスクも極めて大きく、あの段階で当社単独で256列CTの開発をスタートすることは難しかった。NEDOには志を全うする道を切り拓いてもらった」と、杉原さんは振り返ります。製品として発売された「Aquilion ONE™」は320列で160mmの撮影範囲となりましたが、そこまでの結果が得られたのは、NEDOプロジェクトによって256列128mmを実現できたという実績があったからだといいます。

NEDOプロジェクトによって集結した各分野のエキスパートの存在も、当時の常識をはるかに超える256列を実現することに大きく貢献しているとのこと。1998年のプロジェクト当時、装置を制御するコンソールと画像再構成装置の設計は他社が担当し、東芝メディカルシステムズでは検出器の開発に集中することができました。更に他社と共同研究することで装置全体を早期に実現できたと言います。

また、開発委員会では、医学、工学などさまざまな分野のエキスパートから意見を得ることになり、医工連携の実現や臨床研究の範囲拡大にも繋がりました。

想像を超えるCTの登場に世界中が注目

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高速で回転する検出部。患者さんに負担をかけず、
立体でしかも時間経過まで観察できるCTは、
医療に新たな発見や発展をもたらす可能性も

2007年11月、北米放射線学会でお披露目となった「Aquilion ONE™」は、世界の医療機器メーカー、医療界に衝撃を与えることになりました。従来とサイズはほぼ同じでありながら、64列マルチスキャンをはるかに超える320列で心臓や脳を高速1回転で撮影し、高精細な4次元画像を捉えることができる「新しい概念のCTの誕生」として、世界中から注目を集めました。

以来「Aquilion ONE™」は2011年1月末までに世界で約300台を出荷しています。日本では大学病院をはじめ、地域の中核病院の導入が進んでおり、低侵襲で全身のあらゆる診断に役立つ「Aquilion ONE™」を導入したことが、患者さんへのアピールポイントにもなっているといいます。

現場の放射線科医師や放射線技師への対応を担当する臨床応用開発担当である谷口彰さんによれば「Aquilion ONE™の導入は患者さんにとってはもちろん、これを使う医師や技師の負担軽減にも繋がりますし、より良い診断・治療をしようという医師のモチベーションアップになっているようです」。

Aquilion ONE™は、CTとしては高価な製品ですが、実際に導入した医療機関からはそれ以上に大きなベネフィットがあると評価されています。発売2年目頃からは健診ビジネスが急成長している中国での売上げが伸びており、日本市場を追い越す勢いです。

今後のバージョンアップについて、杉原さんに聞きました。「現在も世界中の最先端の医療機関からAquilion ONE™の最新臨床データと要望・提案が集まってきます。さらに新しい、幅広い診断に役立つ価値を創り出すため、機能診断アプリケーションソフトウェアの開発を進めていきたいと思います。また、Aquilion ONE™装置自体の機能・性能も向上させ、我々からも新しい提案ができるように、様々な要素技術の開発にも努めていきたいと思います」(2011年1月取材)

開発者の横顔

「臓器の立体・動画診断を目指して」

東芝メディカルシステムズ株式会社

コラム

妥協を許さないから実現できた320列

杉原さん

2003年からプロジェクトに加わり、「Aquilion ONE™」に向けた責任者という重責を担ってきた杉原直樹さんは、入社以来X線CTの開発一筋に関わってきました。大学院では原子力工学を専攻していたそうですが、「放射線の知識を生かして人を救う仕事がしたい」と東芝メディカルシステムズに入社。入社から10年間は検出器の開発に携わり、その後いくつかのシステムの企画、開発を経て、今回の「Aquilion ONE™」開発へと至りました。杉原さんが「中途半端な状態で製品化したくない」と256列で満足しなかったことは、320列160mmという世界初・最高品質の製品誕生への大きな推進力となりました。「コストなど悩ましい面はありましたが、10年以上をかけた大きなプロジェクトですから、自信を持って発表できるシステムにしたいと思っていました」

臨床ニーズを誰よりも知る臨床のスペシャリスト

谷口さん

診療放射線技師の資格を持つ谷口彰さんは、その経験を活かして東芝メディカルシステムズに入社。今では各部門に谷口さん同様の臨床のスペシャリストがいますが、谷口さんはその第1号で、医師や技師に対して操作方法を指導したり、臨床評価のフィードバックから研究、開発まで担当し、臨床現場との橋渡し役を担っている。「以前、ある先生に『CTは車のように作った人が使えない機械だ』と言われたことがありますが、その通りだからこそ、作る人と使う人がお互いに密なコミュニケーションをとる必要があると痛感しています」

4列から256列へ一気に高くなった壁を超えた

宮崎さん

杉原さん同様、入社以来CT一筋で開発に打ち込んできたのはハードウエア開発担当の宮崎博明さんです。このプロジェクトに加わることになった当時、宮崎さんは4列マルチスライス検出器の開発が完了したところでした。そこから一気に256列を目指すことになり、戸惑う部分もあったといいます。「正直なところ、本当にできるのか?と思っていました。それは共同で開発をしたメーカさんも同じでしたから、今回のプロジェクトでは、初期の実験データを示しながら『大丈夫ですから』と説得することも大切な仕事のひとつでした」

アンケート

「NEDO実用化ドキュメント
-東芝メディカルシステムズ株式会社」

に係るアンケートです。
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