NEDO Web Magazine

省エネルギー

エネルギー使用合理化技術戦略的開発

熱と電気の比率を利用場所に合わせて最適に調整
天然ガスコージェネレーションの普及範囲を広げるガスエンジンシステムを開発

三井造船株式会社

取材:December 2013

INTRODUCTION 概要


世界最高の発電効率42.5%LHV
ガスエンジンを利用した1~2MWクラスのコージェネレーションシステムとして

熱機関で発電機を動かすと電気だけでなく、必ず廃熱が生じます。これまでわが国では、大規模集中型の発電所を中心に電力供給が行われてきたため、この廃熱を利用することができませんでした。しかし、近年では、発電設備を需要施設や地域に設置して、発電で生じる廃熱を回収し、空調や工場で利用する水蒸気の生産などを行い、熱と電気を併給する「コージェネレーション」が普及してきています。

地球温暖化防止の観点から、地域単位、あるいはもっと細かくビルや工場単位で供給・活用する「分散型発電システム」の普及促進の声が大きくなっています。「コ―ジェネレーション」は、この「分散型発電システム」としても注目されています。

一方、通常の火力発電所に比べて小型の発電システムであることから、規模によるメリットをいかせないために、効率向上が難しいという点もあります。また、電気と熱の利用比率が、季節などによって変わると、十分に省エネルギー性能を発揮できない場合もあります。

そこで長年、船舶用のディーゼルエンジンの開発・生産を手がけてきた三井造船株式会社では、NEDOプロジェクトの下、市場ニーズの高い1~2MWクラスのガスエンジンに、世界初の排気再燃ボイラーを組み合わせたガスエンジン・コージェネレーションシステムを開発しました。

これまで困難であった、熱と電気の比率を需要に合わせて最適に調整することを可能にして、導入メリットが生じる施設の幅を大きく広げました。また、ガスエンジン単体の発電効率では、世界最高水準の42.5%を達成しました。

現在、コージェネレーションシステムとして5機、ガスエンジン単体で4機、計9機が全国で稼働しています。また、エンジン単体の製品では、プロジェクト後にダイハツディーゼル株式会社との共同で、1クラス大型のガスエンジンを開発し、2012年から販売を開始、こちらも3機が既に稼働しています。

BIGINNING 開発への道


省エネルギー、低CO2化への期待に応える天然ガスコージェネレーション

化石燃料を利用しての発電は、電力と同時に大量の廃熱が生じます。しかし、需要地と離れた場所にある大型発電所ではその利用先がなく、放熱、冷却されるばかりでした。そうした廃熱を有効利用し、電力と熱双方を供給するエネルギーシステムが「ガスコージェネレーション」です。

都市ガスなどを燃料に、ガスエンジンやガスタービンなどで発電機を運転させ、その廃熱を設置施設や近隣施設・地域の暖房や給湯、工業用蒸気などの熱源として再利用します。

省エネルギー、低CO2化が期待できることから、政府でもその普及を支援しています。国内では、これまでに9,000を超えるコージェネレーションシステムが導入されており、その大半が天然ガスを燃料とするシステムです。また、最近では、省エネ性能ばかりでなく、災害時などにも利用可能な非常用独立型電源としても注目を集めています。

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三井造船が開発した、ガスエンジンを利用したコージェネレーションシステムのフィールド試験設備(写真提供:三井造船株式会社)

造船技術で蓄積した総合力をいかしてガスコージェネレーションシステムに参入

造船メーカーとして様々な船舶用大型エンジンを開発してきた三井造船では、そのノウハウをいかして、このガスコージェネレーションシステムの開発と販売に力を入れてきました。とくに発電規模としては中規模クラスに当たる出力1~2MWのガスエンジンを核としたガスコージェネレーションシステムに力を入れ、世界最高水準の発電効率(42.5%)を達成しています。

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表1 NEDOプロジェクトでの技術開発課題と目標値

同社のシステムが優れている点は、1~2MWクラスのガスエンジンコージェネレーションの短所であった熱回収量を大きく向上させることで、高いエネルギー効率を実現するとともに、発電と熱供給の割合を独自に調整できるようにしたことです。それにより、従来のシステムに比べて、設置メリットのでる施設や地域を大きく広げることになりました。

三井造船では、こうした従来にない高い技術目標の実現のため、NEDO「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」(2001~2005年度)に参画し、研究開発、実用化開発、実証までを実施することで、世界最高水準のガスコージェネレーションシステムの実用化に成功しました。

様々な「熱電比」ニーズに対応できるガスエンジンシステム

ガスコージェネレーションシステムでは、エンジンで生じる廃熱も回収するため、その性能を計るには、発電機としての効率を表す「発電効率」、回収される熱エネルギーと電気エネルギーの割合を示す「熱電比」、発電機とボイラーの双方の性能を合わせた効率を表す「総合効率」の数字から判断します。熱電比が0の場合は電気エネルギーのみ生産され、熱電比が高くなると、電気エネルギーに加え蒸気などの熱エネルギーがより多く回収されることで、システム全体としての総合効率を高めることが可能となります。

三井造船が研究開発に取り組んだ、1~2MWの中規模クラスのガスエンジンコージェネレーションシステムでは、発電効率にはすぐれる一方、産業界等でよく利用される0.78MPa程度の蒸気だけを発生させて熱エネルギーを回収する場合には、その回収効率は低く、熱電比「0~0.5」という極めて狭い範囲で、さらに約60%という総合効率でしか運転できないという課題を抱えていました(図1、表2)。

三井造船ガスコージェネレーションシステム開発プロジェクトの初代リーダーである薦田哲男さんは、「季節や時間帯によって熱と電気の需要量は多様に変化するため、発電量とは無関係に熱電比0.5~1.5まで対応できないと、システムのメリットを最大化することはできません。しかし、従来のガスコージェネレーションシステムには、効率的にみて『電気エネルギー生産に偏ったガスエンジン』と『熱エネルギー生産に偏ったガスタービン』しか選択肢がないため、1~2MWクラスのコージェネレーションシステムにとって、熱電比0.5~2.0の範囲は、高い総合効率を実現することが難しい、いわば『空白の領域』だったのです」と説明します(図1)。

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図1 1~2MWクラスのガスエンジンとガスタービンの各「熱電比」における「総合効率」。三井造船では「熱電比」0.5~2.0の範囲での高い総合効率を実現するシステムの開発を目指した

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表2 ガスタービンシステムとガスエンジンシステムの比較

そこで、薦田さんら三井造船の開発チームでは、この『空白の領域』を埋めるシステムを開発できれば、競合製品のない、しかもユーザーのニーズに応える製品を市場に送り出すことができるはずと考えました。

三井造船によって開発されたガスコージェネレーションシステムは、大きく分けて動力を発生するガスエンジン部と、廃熱を有効利用する排熱回収ボイラー部から構成されています(図2)。

ガスエンジン部分では、過給機コンプレッサで圧縮した空気と燃料となる天然ガスを最適な燃焼条件となるように混合してシリンダー内で燃焼、発電を行います。そして、排熱回収ボイラー部では、ガスエンジンで生じた350℃の排気ガスと天然ガス、空気を使った"追い焚き"で主として、蒸気を作り出します。

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図2 三井造船が開発した天然ガスコージェネレーションシステムの概要

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岡山県玉野市の三井造船玉野事業所内に設置されたコージェネレーションシステム。左手前が発電機、奥がガスエンジン

ガスエンジンは既存のディーゼルエンジン技術を応用して最適化

動力源となるエンジン部分は、技術の蓄積が豊富な既存のディーゼル技術を応用して設計、開発されました。燃料ガスと空気の混合気をシリンダ内で燃焼(予混合燃焼)させるガスエンジンと燃料をシリンダ内に高圧で噴霧し空気中に拡散させて燃焼(拡散燃焼)させるディーゼルエンジンは燃焼方式が異なること以外は、シリンダー内で燃料を燃焼爆発、その膨張力でピストンを動かす構造は全く同じです。

三井造船では、これまで船舶用のディーゼルエンジンを数多く手がけてきました。そのため、ガスコージェネレーションシステムに参入するに当たっても、そのノウハウを最大限、投入できるガスエンジンを選択し、改良、最適化を図っていきました。

まず、最初に行ったのは、高効率化と高出力化のために、ディーゼルエンジンの技術を基礎にガスエンジンのシリンダー内での燃焼を最適化させることでした。シリンダー内への燃料ガス供給、燃料ガスに点火するパイロット燃料噴射、エンジン出力や給気温度などにより変化するシリンダー内の圧力制御、そして、シリンダー内のガス流動の生成などを、電子制御で最適化できるようにしました(図3)。

次に、これもディーゼルエンジンで実績のある、直噴着火方式の点火装置を取り入れました。ガスエンジンの着火、起動にはいくつかの方法があります。シリンダー外の副燃焼室で着火する方法もありますが、装置の複雑化や耐久性に難点があります。一方、技術的には難易度が高くなりますが、着火性能や耐久性で勝るのが、シリンダー内に着火用のパイロット燃料(軽油)を直接吹き込む、直噴着火方式です(図4)。

薦田さんらは、この直噴着火方式や電子制御システムを研究するために、単気筒の試験用エンジンを作成、燃焼工学に詳しい岡山大学大学院自然科学研究科の冨田栄二教授の知見を取り入れながら、安定した着火と最適な燃焼を得る方法を模索しました。

その結果、燃料ガスと空気の混合状態(図5)、燃焼室や吸気通路の形状(図6)、シリンダー内流動の最適化に必要な制御方法を編み出しました。また、直噴着火のパイロット噴霧を最適化するために、アトマイザ噴孔数、その径、方向、噴射量に新規発想の工夫を取り入れたパイロット燃料噴射装置を開発しました。

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図3 ガスエンジンの燃焼制御システム

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図4 ガスエンジンの着火方式

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図5 吸入工程における燃料ガスと空気の混合の解析例

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図6 吸気通路の形状検討例

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岡山県玉野市の事業所内に設置された研究開発用の単気筒試験機(左)、効率アップのカギの一つとなった噴射弁(右)

二つの発電機を搭載して、世界最高の発電効率を達成

また、開発当時、三井造船のガスエンジンに搭載されていた過給機は、必要以上の圧縮空気を作り出し、それを外部に放出していました。薦田さんらは、このエネルギーロスを低減し、より効率のよい運転ができないかと検討を重ねた結果、過給機の回転軸に高速発電機を接続し、ロスしていたエネルギーを電気として回収するシステムを構築しました(図7)。

薦田さんは、「過給機のタービン装置は1分間に約5万回という高速で回転しているため、従来の発電機を接続すると、発電機の方が故障してしまいます。そこで、当時最新の高速発電機をシステムに組み込むことで、アイデアを実現することができました」と説明します。

ガスエンジン本体から得られる発電効率41%分の電気に過給機に接続された高速発電機による発電効率1.5%分を加算して、このクラス世界最高の発電効率42.5%LHVを達成することができました。

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図7 過給機に直接発電機を接続した排気エネルギー回収システム

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過給機の空気取り入れ口

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


ガスエンジンのノッキングを抑え込む

ガスエンジン開発において開発者の頭を最も悩ませたのは、ノッキング現象です。ガスエンジンは、自動車のガソリンエンジンなどと同じく、圧力を適切に制御したシリンダー内部で、天然ガスと空気の混合ガスを燃焼させています。

しかし、ガスエンジンの運転環境や天然ガスの成分の変化により、混合ガスに異常な着火が起こる「ノッキング」が発生します。ノッキングが頻繁に発生すると、シリンダー内部の圧力の急激な上昇をまねき、故障につながります。

このノッキングの発生を抑えるにはいくつかの方法がありますが、三井造船では、燃料となる天然ガスとそれに混合する空気との比率、空燃比を上げることで、発生を抑える方法を採用しました。ただし、空燃比を上げ過ぎると、駆動しているエンジンが突然失火して、運転を停止してしまう可能性もありました。

開発チームの二代目リーダーを務めた坂根篤さんは開発当時を振り返って、「ノッキングを防止する最も簡単な方法は、エンジンの出力を下げることです。ただ、それでは発電効率も低下してしまいます。発電効率を下げずにノッキングを抑えることにこだわった結果、シリンダごとに空燃比を微調整するという難問に挑むことになりました」と話します。

坂根さんらは、シリンダごとにノッキングの発生を特殊な検出装置で常にモニタリングして、ノッキングが発生した場合には、自動で空燃比を微調整して、ノッキングの頻度を限りなく低く抑えるシステムを開発しました。このシステムにより、発電効率を落とすことなく、失火の危険性を回避しながら、ノッキングによるシリンダーへのダメージを抑えて運転するという難問を解決できました(図8、9)。

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図8 ノッキング防止技術

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図9 ノッキングの発生頻度を低く抑えるための運転条件。ノッキング頻発条件と失火条件の中間部分にある、極めて狭い範囲で空燃比を安定させることで、エンジンの出力を落とすことなくノッキングの頻度を抑え込むことに成功

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ノッキングを検出するセンサー(左)、ガス噴射弁(右)。シリンダーごとにひとつずつセンサーが自動でモニタリングしており、ノッキングを検出すると、空燃比の調整システムが作動する

豊富なディーゼルエンジン開発のノウハウをガスエンジンに活かす

開発チームが次に取り組んだのは、熱回収率の向上でした。このクラスのガスエンジンコージェネレーションシステムは熱回収の効率が低く、熱電比が0~0.5の範囲にとどまっていたため、水蒸気を大量に必要とする工場などでは導入メリットがあまり発揮できませんでした。また、季節や曜日により変化する熱需要に対応することも難しく、運転効率を上げることができませんでした。

そこで、坂根さんらは、ディーゼルエンジンで実用化していた、排気再燃ボイラーを、世界で初めてガスエンジンシステムにも応用することにしました。

排気再燃ボイラーは、熱電比が低く、熱の需要が少ない場合には、追加の燃料は使用しないで、350℃という高温の排気ガスの熱だけを使って水を加熱します。一方、熱電比が高く、熱の需要が多い場合は、排気ガスの熱に加えて、ボイラーに追加の燃料を供給して再燃焼させて追い焚きをします。このとき、燃焼用空気(酸素)には、排気ガス中の残存酸素を利用しますが、火炎を安定化させるために若干の新鮮空気も使用します。

この仕組みにより、発電と熱供給を、それぞれ独立に調整しながら運転ができるようになりました。その結果、熱電比0.5~1.5という従来よりも幅広い熱の需要に対して、従来の熱電可変型ガスタービンシステムよりも最大20%以上高い総合効率を達成して、「空白の領域」での運転を実現しました(図10)。

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図10 6月に実施した試験運転での総合効率と熱電比の時間変化。8時~24時までの間に、熱電比1.2~1.7あたりで変動している。

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


NEDOのマネジメントにより、開発計画を前倒しできました

三井造船では、5年の開発期間をかけて、「空白の領域」で運転できるガスエンジンによるコージェネレーションシステムの開発に成功しました。

開発チームの初代リーダーを務めた薦田さんは、自社だけで開発した場合、もっと開発期間が延びていただろうと言います。

「開発スケジュールを厳しくマネジメントしてもらったことで、メリハリを持って開発計画を進めることができました。そのおかげもあって、当初予定していた4年目からの実証試験を前倒しして、3年目の途中から着手することができました」

また、NEDOとの共同プロジェクトだったため、社内でも注目を集めることができ、会社から優先的な支援を受けることができたといいます。

これからのエネルギー業界を担うガスエンジンコージェネレーションシステム

2001年のプロジェクト開始から開発を進めてきたMD20Gは、2004年に販売を開始しました。2013年12月現在、コージェネレーションシステムとして5機、ガスエンジンとして4機の、計9機が全国で稼働しています。大規模病院、大型商業施設、自動車関連工場といった納入先の顔ぶれは、多様な熱の需要に対して高い総合効率で応えることのできるMD20Gの潜在能力の高さを表しています(図11)。

また、2005年度でNEDOプロジェクトは終了しましたが、開発チームはその後もガスエンジン開発を継続して、ダイハツディーゼル社との共同で、MD20Gより1クラス大型のガスエンジン、MD36Gを開発しました。2012年から販売が開始されたMD36Gは、すでに3機が全国で稼働しています。

現在、ガスエンジン開発チームをまとめる近藤守男さんは、MD20GとMD36Gがより普及すると期待を込めます。「東日本大震災以降に、複数の受注をいただきました。自家発電施設に対する関心が高まり、原子力発電所の運転停止に伴う電気料金の値上げなどの影響を考えれば、販売数は今後も伸びていくと考えています」。

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図11 熱の需要が比較的少ないため、従来のガスエンジンでは普及が進んでいなかった「金属・機械工場」分野から、それよりも熱の需要が多い「製紙・化学・食品工場」分野まで、幅広い事業展開が期待される。

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本プロジェクトの成果を活かして開発されたガスエンジン「MD36G」、写真の6気筒型のMD36Gは発電量2.8MW

世界で進む地球温暖化への対策と、大気汚染の規制

三井造船は、2011年以降、複数の中国のメーカーとガスエンジンのライセンス契約を締結して、中国でのガスエンジンの普及に力を入れています。「中国は、日本に比べて天然ガスの一般小売価格が安いため、ガスエンジンが普及しやすいはずです。大気汚染が深刻化している現在、ガスエンジンやそれを使ったコージェネレーションに対する需要も高いと考えています」、と近藤さんは言います。

また、先進国では船舶用エンジンに対する排気ガス規制の厳格化が進み、従来主流のディーゼルエンジンに代わって、ガスエンジンが普及するものと考えられています。「発電効率に優れる長所を活かして、船舶用エンジンの業界にも事業を展開していきたい」、と坂根さんは意気込みを語ってくれました。

温室効果ガスや排気ガスの排出規制が高まる中で、より幅広い熱の需要に対して高い総合効率で応えることのできるガスエンジンシステムは、これからも様々な分野に普及していくことでしょう。(2013年12月取材)

開発者の横顔


開発への熱意、そして製品への強い自負

ガスエンジンは、世の中に必要とされるものだから

三井造船に入社して以来、エンジン開発一筋。ディーゼルエンジンの開発を手掛けてきた薦田さんは、1983年から始まった船舶用ガスインジェクションエンジン開発プロジェクト以降、主として天然ガスを燃料とするエンジン開発を手掛け、本コージェネレーション用ガスエンジンの開発を計画しました。

「コージェネレーション用ガスエンジンの開発には、社内でも賛否両論ありましたが、世の中で必要とされるものだからと、粘り強く交渉しました」、という薦田さん。NEDOプロジェクトでは、初代プロジェクトリーダーを務めました。三井造船を退職後、岡山大学の産学コーディネーターとして活動し、大学と企業の連携を支援しています。

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薦田さん

退職した今も、毎日エンジンを眺めています

坂根さんも、エンジン開発一筋。薦田さんと同じくディーゼルエンジンの開発を担当していましたが、NEDOプロジェクトでガスエンジンの開発を手掛けて以来、ガスエンジンの開発に関わり、NEDOプロジェクトでは二代目プロジェクトリーダーを務めました。

「ディーゼルエンジンの開発は設計部が主導していましたが、ガスエンジン開発は私たち技術部が主導してきたと自負しています」、という坂根さん。ガスエンジンへの思い入れは強く、退職後も技術コンサルタントとして、若い技術者とともにガスエンジンの開発現場に立っています。

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坂根さん

NEDOプロジェクトの成果を活かして、新たなガスエンジンを開発中

近藤さんは、入社後、薦田さんとともに船舶用ガスインジェクションエンジン開発プロジェクトで、ガスエンジン開発を経験。その後、設計部などを経て、技術部に復帰してNEDOプロジェクトに参加しました。

NEDOプロジェクト終了後、三井造船のディーゼル開発グループの主管に就任し、重油とガスの両方を燃料として利用できる、新型船舶用ガスインジェクションエンジンを開発。ガスエンジンの普及や新たな事業展開を目指して、日々開発を続けています。

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近藤さん

なるほど基礎知識


ディーゼルエンジン、ガスタービン、ガスエンジンの共通点と違い

コージェネレーションに利用される代表的な内燃機関は、ディーゼルエンジン、ガスタービン、ガスエンジンの3種類です。それぞれの特徴、共通点や違いにはどのようなものがあるのでしょうか。

ディーゼルエンジンは、大型車のエンジンや船舶のエンジン及び発電機として広く普及しており、コージェネレーションの内燃機関としても最も古くから利用されてきました。燃料には、重油などの石油から精製された液体燃料を利用します。

このため、排気ガス中には窒素酸化物や硫黄酸化物、煤塵などの微粒子が含まれており、環境負荷が大きいのが欠点です。排気ガスに対する厳しい規制が敷かれている現在、大都市圏では、ディーゼルエンジンを利用したコージェネレーションは減少しています。

ガスタービンは、ほとんど航空機に搭載されているジェットエンジンと同じ仕組みの機関です。冷却設備を設置する必要がなく、比較的小型の設計のため、非常用発電機としても普及しています。

燃料には天然ガスと空気の混合ガスを使っていて、燃焼器内部で燃焼させた際に発生する燃焼ガスでタービンを回転させて発電しています。同じ出力のガスエンジンと比べて発電効率は低いものの、熱の回収効率が良いため、熱利用の多い大規模スポーツ施設などで活用されています。

ガスエンジンは、ディーゼルエンジンとよく似た構造をしており、燃料にはガスタービンと同じ天然ガスと空気の混合ガスを使用します。同じ出力のガスタービンと比較した場合、少ない燃料で発電できるため発電効率に優れていますが、熱回収効率に課題があります。このため、熱の利用は少ないが大量の電力を必要とする大型商業施設などに導入されています(図A)。

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図A ガスエンジンとディーゼルエンジンの構造比較。ガスエンジンはディーゼルエンジンとよく似た構造をしており、三井造船の開発したMD20Gも、既存のディーゼルエンジンとの互換性が高く、メンテナンスの効率向上や修理コストの削減が可能

NEDOの役割

「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」

このプロジェクトがはじまったのは?

わが国は第1次石油ショック以来、強力に省エネルギーを推進し、そのエネルギー利用効率は世界トップレベルに到達しています。一方で、地球温暖化対策に対する要求が高まる中、温室効果ガスの大半を占めると言われているエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、2005年度の実績において1990年度比+13.6%となっており、新たな省エネルギーに関する技術の研究開発を推進することは喫緊の課題でした。また、2006年5月に策定された「新・国家エネルギー戦略」の「省エネルギーフロントランナー計画」では、技術革新と社会システム改革の好循環を確立させることにより、2030年までに少なくとも30%のエネルギー消費効率改善(GDP当たり)を目指すこととされました。

これを踏まえ、経済産業省では、省エネルギー技術の大きなブレークスルーを目指し、産学官や異なる事業分野の様々な主体の連係を図り、中長期的視点に立った技術開発を進めるために、2007年4月に「省エネルギー技術戦略」をとりまとめました。NEDOでは、上述の「新・国家エネルギー戦略」及び、これに基づく省エネルギー技術戦略で示された、産業、民生(家庭・業務)、運輸の各部門における需要側の省エネルギーに係る課題を克服するために、本プロジェクトを実施しました。

プロジェクトのねらいは?

技術革新と社会システム改革の好循環を確立させることにより、2030年までに少なくとも30%のエネルギー消費効率改善(GDP当たり)を目標としました。2011年度に実施した本制度の制度事後評価報告書によると、既に商品化もしくは今後商品化される可能性があるテーマにおける2030年時点での省エネルギー削減量は、約3,000万kLに上ると想定しています。

NEDOの役割は?

NEDOは、本制度の実施にあたり、先導研究フェーズ、実用化開発フェーズ及び実証研究フェーズの三つの事業フェーズ並びに事前調査を設けることで、市場投入の確実性をより向上させるための制度設計を行いました。また、研究開発期間が3年間となる研究テーマについては、2年目終了時に外部有識者らによる中間評価を実施しました。その評価結果をもとに、資源配分や事業計画の見直しを行い、「目標値や計画の見直し」や「中止または抜本的な改善」など、適切な研究開発マネジメントを実施してきました。

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