エネルギー問題解決に挑む 新エネルギーベンチャー技術革新事業、国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業

業界初! 太陽光パネルの障害を素早く発見し
場所を推定する「SOKODES(ソコデス)」を開発

株式会社システム・ジェイディー

取材:January 2016

プロジェクトの突破口

試作機を持って
北海道から沖縄まで

 太陽光パネルの劣化を検査するために、伊達さんには、半導体の検査で使っているTDR(time domain reflectometry:時間領域反射)測定という方法を応用しようというアイデアがありました(「なるほど基礎知識」参照)。

 この測定手法で、伝送線の長さや伝送線上のどの位置に異常があるかを調べることができます。「試作1号機では、パルス発生器と計測器が別々でした。重い装置を2台、ゴロゴロと台車に乗せて現場に行き、測定しました」と伊達さんは当時の苦労を語ります。試作機をつくり、その効果を実証試験によって確かめ、改良し、また確かめ改良する、というように開発を進めました。

 さらに、太陽光パネル特有の苦労もありました。

 「実証試験をするためには、故障した太陽光パネルが必要です。ただ、それを探し出すのが大変でした」と取締役社長の松尾茂則さん。

 一般に、不良品のパネルを売っているところなどありません。そこで、あらゆるつてをたどって、長野県にある中古パネルのメーカーから、なんとか不良品パネルを購入することができました。

 また、試作機を持って、日本中の太陽光発電の現場を回り、装置の有効性を直接確かめました。「住宅用はもちろん、公的な施設などさまざまな場所に設置されているものも検査しました。NEDOからもいろいろな現場を紹介してもらえたことは、大変助かりました」と松尾さんは話します。

 3年かけて、九州電力が所有する18カ所の太陽光発電所のパネルもすべて検査しました。このようにたくさんの現場を回っているうちに、太陽光パネルの故障の実態がわかってきました。

 「もちろん大部分のパネルに故障はありません。それでも調べると、私たちが考えていた以上に故障は多かったのです。年数を経たものはもちろん、新品にも故障は見つかりました。これはやってみなければわかりませんでした」と松尾さん。

通常の点検では見つけることのできない
故障原因

 不具合の原因で一番多いのは断線でした。パネルを構成するセルには、アルミニウム製の電線がはんだで接合されています。「アルミニウムのはんだ付けが適切に行われていないと、振動で剥がれたり、断線したりしてしまうことがあります」と伊達さんは話します。

 出荷するときの製品検査でパネルに問題がなくても、運転を開始し、大きな電流が流れただけではんだが剥がれることもあります。さらに、パネルを運んだり設置したりするときにマイクロクラックと呼ばれる小さいひびが入ることもあります。

 太陽光パネルは国際的な規格によって一定のスペックが決められていますが、安全性・品質に関する国際規格はすべてを網羅するまでには至らず、各国・地域で独自に基準を設けています。日本の各メーカーでも、独自の判断で品質保証をしているのが現状です。製品によって電線の接続法や材料が違うので、剥がれやすさも違います。そのため製品によって、不具合の程度にばらつきが出ることもわかりました。

 「実は、このような不具合による断線は、通常の点検では容易に見つけることは難しく、手間がかかります」と松尾さんは話します。通常の点検では、パワーコンディショナーや接続箱などに検査装置を当てて、パネルでの電圧の変化を測定します。しかし、よほど大きな電流の変化がなければ、電圧の変化として現れません。もし電圧の低下が見つかったとしても、どのパネルが原因なのかは特定できません。

 さらに断線を見つけにくくしている要因に、太陽光パネルについている「バイパスダイオード」の存在がありました。一般に、太陽光パネルにはセルが直列に60枚程度並んでおり、3分の1ごとにバイパスダイオードがついています。バイパスダイオードは、並んでいるセルやセルをつなぐ配線に不具合が発生したときに、電流をう回させることで、電力低下を防ぎます。

図2 太陽光パネルの背面にあるバイパスダイオード

 「バイパスダイオードが電流をう回させることで、かえって個々のパネルの不具合を見つけるのが難しくなります」と松尾さんは説明します。

 さらに、不良パネルによりバイパスダイオードが常時う回状態になっていると、発火して火災につながることもあるとわかりました。断線は大きな発電ロスを招くばかりでなく、火災の原因になってしまう場合があるので、いち早く断線を見つけることは安全のためにも不可欠なのです。

現場回りを通じて課題を解決するため
検査装置の精度を高める

 こうして現場を回って実証実験を繰り返し、太陽光パネルに故障があることや故障の原因が明らかになるにつれて、伊達さんたちは、自分たちの開発した装置の有効性について確信を深めていきました。

 TDR測定を利用する、新たに伊達さんたちが開発した検査方法は、これまでの検査とはアプローチが全く違います。

 太陽光パネルのセルが直列に接続したものをストリングといいます。ストリングに配線されている電線は、接続箱という装置に集まります。新しい検査法では、この接続箱からストリングごとにパルスを送ります。すると、断線箇所は抵抗が高くなっており反射波が戻ってくるので、故障の有無がわかります。その反射波が戻ってくる時間で、断線などの位置も推定できます。

図3 SOKODES(ソコデス)の高周波パルスによる検査のしくみ
高周波パルスを入力、その反射波形の異常の位置から故障箇所を推定する。接続箱からだけで検査できるのが強み

 しかし、実際にこの原理を使って装置をつくるのは、簡単ではありませんでした。

 「現場回りを通じて見つけた課題を解決するために、プログラムと装置、つまりソフトとハードの両面から改良していきました。いちばん力をいれたのは、検出の精度をあげることです」と技術開発部部長の重村敏行さんは話します。

 パルスを発信したところからの距離によって、反射波が戻ってくる時間が変わります。この時間差から、どのパネルに故障があるのかを計算することができます。しかし太陽光パネルにはいろいろな種類があり、そのうえ屋根の上から地面まで設置場所もまちまちです。そのため、パネル1枚当たりの反射の時間が変わってしまい、あの現場ではうまく検出できたのに、こちらの現場ではいくら測定しても故障箇所の推定がずれてしまう、ということもしばしば起こります。

 重村さんは故障箇所の推定のずれが見つかるたびにプログラムを新たに作ったり、改良したりしました。また、装置はパネルの設置状況を把握できるよう改良を重ねました。

図4 システム・ジェイディー社内の開発風景

 さまざまな試行錯誤を繰り返すうち、重村さんはついに解決策にたどり着きます。 「産総研の研究では、正常なパネルのデータをもとに計算する方法がありました。しかし現場によってパネルは千差万別なので、どんな場合でも正しいというデータはありません。どうしたらよいのか、ずいぶん考えました。そうしてあみだしたのが、正極および負極の両方からパルスを入力し、その反射波の比率で故障箇所を推定するプログラムです」と重村さん。

 これまでは、パネルを1枚1枚、目視により状態を点検し、電圧の変化を測定しなければ故障の位置はわかりませんでした。それが接続箱から得たデータだけで解析できるようになったのです。製品開発の中心になった重村さんでさえ、最初は故障の有無と故障の位置の推定が、まさか同時にできるようになるとは思っていなかったといいます。

 しかもこの方法は、発電していない夜中や、悪天候の日の検査も可能にしました。この画期的な技術は特許を取得しています。故障の位置を推定するプログラムの開発に成功したことが、「SOKODES(ソコデス)」誕生へのブレイクスルーとなりました。

さらに小さく、機能的に
大規模太陽光発電施設向けの遠隔監視が可能な装置も開発

 そこで重村さんのチャレンジが終わることはありませんでした。重村さんはこう話します。「装置作りでは、いろいろな人に使ってもらえるように製品の原価を下げることや、どんな現場でも使えるように壊れにくくすることなどに気を配りました」

 住宅や中小規模の発電施設用の「携帯型SOKODES(ソコデス)」は、片手でつかめるサイズになり、重さも690g以下にまでなりました。これなら、どんな現場にでも持っていけます。さらに、屋外で使うことを想定した防水や防塵、落下防止のための工夫を加え、衝撃耐性をもたせるなど機能を向上させました。SOKODES(ソコデス)は、太陽光発電装置の接続箱のプラスとマイナス、アースの端子に測定端子を当てて測定します。10〜20秒で、どの太陽光パネルが故障しているかが装置に表示されます。

図5 販売されている携帯型SOKODES(ソコデス)

 さらに、携帯型を発展させ、大規模な発電施設用の「組込型」を開発しました。この装置は接続箱に直接組み込んでおきます。夜間に自動的に測定をし、その結果は有線または無線通信で監視サーバに送られます。サーバに蓄積されたデータはインターネットを通じて監視センターに送られるため、遠隔地から太陽光パネルを監視できるシステムとなっています。

図6 試験中のSOKODES(ソコデス)
組込型はこの緑色の基板がメガソーラー敷地内各所にある接続箱のなかに設置されている

 伊達さんは、このころから開発に手応えを感じるようになっていました。

 「九州電力や沖縄電力から高い評価をいただくことができました。それに、地元の太陽光発電メーカーなどが集まる九州ソーラー&クリーンエネルギーネットワーク(SONEQ)のメンバーには、たくさんの情報をいただくとともに、試作品を使ってもらいました。いまでは、テストしてもらった施設がユーザーになってくれているので、大変感謝しています」と伊達さん。

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