新エネルギー

新エネルギーベンチャー技術革新事業

水素社会実現に欠かせない、
革新的な燃料電池システム用ブロワを開発

株式会社テクノ高槻

取材:November 2016

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家庭用燃料電池システム「エネファーム」や産業車両用燃料電池の補機として貢献

水素を用いて発電をする燃料電池システムには、都市ガスなどの燃料から水素を取り出す「改質器」や発電部分の「スタック」といった「中心機器」に加えて、燃料ガスを昇圧させて送りこむのに必要な「ブロワ」のような「補機」が組み合わされています。「補機」とはいっても、システムには不可欠な装置で、各補機をいかに低消費電力化、長寿命化、低コスト化するかは、燃料電池システム普及に欠かせない重要な検討課題となります。大阪府高槻市に本社のある、株式会社テクノ高槻ではその課題解決に向けて、「家庭用燃料電池システムの周辺機器の技術開発」をはじめとするNEDOプロジェクトで革新的な燃料電池システム向けブロワの研究開発に取り組みました。燃料電池システム普及促進に欠かせない高性能な「燃料昇圧ブロワ」や「水素循環ブロワ」などの新製品をNEDOプロジェクトにより実用化しました。


自社で長年培ってきた電磁式ダイヤフラムブロワ技術を、燃料電池システムの補機開発に応用

燃料電池システムには、燃料ガスの送り込みや、発電用の空気供給のため、さまざまな工程段階で「ブロワ」(気体ポンプ)が使われています。たとえば、家庭用燃料電池システム「エネファーム」では、燃料となる都市ガスやLPガスなどを改質器に送り込むために「燃料昇圧ブロワ」が搭載されています。

そうした燃料電池システム向け各種ブロワの開発・製造を担っているメーカーの一つが、株式会社テクノ高槻です。同社は「電磁式ダイヤフラムブロワ」という摩擦の生じない仕組みによる高効率ポンプ(※参照:「なるほど基礎知識」)を他社に先駆けて開発、これをコア技術として各種の気体ポンプ製造を手がけ、プロジェクト開始時にはすでに40年以上の実績がありました。

「ただし燃料電池用途への参入は全く新たな挑戦でした」と、同社常務取締役で新事業開拓担当の大西洋司さんは当時を振り返って経緯を説明します。

「弊社では、観賞魚飼育用エアーポンプを皮切りに、より耐久性の求められる浄化槽用ブロワへ電磁ダイヤフラム方式を導入するなどして順調に売り上げを伸ばしてきましたが、2000年を過ぎて、エアーポンプ事業が開始30年を迎えるなか、“次の製品”を仕込まなければという思いが強くなってきていました。家庭用や医療用などの様々な市場調査などを行った結果、たどり着いたものが、燃料電池用ブロワでした」(大西さん)

ダイヤフラムブロワの仕組み
(資料提供:株式会社テクノ高槻)

ダイヤフラムを動作させる電磁石が入ったブロワ内部

2000年当時は、燃料電池システムが本格普及する、その夜明け間近。実用化に向けて、NEDOでは経済産業省とともに「燃料電池普及基盤整備事業ミレニアムプロジェクト」を実施していました。エネファーム商用化に取り組む燃料電池システムメーカーはどの社も、高性能な燃料電池用途に特化したブロワを求めていました。そうした技術開発動向を背景に、2002年ごろ同社に1年で約30社もの相談があり、大西さんは、「これは行けると思いましたよ」と語ります。

NEDOの「補機プロジェクト」に参画して燃料昇圧ブロワ「FC-0520N」を開発

ところが同社で高まる期待感とは裏腹に、電磁式ダイヤフラムブロワを実際に採用する燃料電池システムメーカーはなかなか現れませんでした。というのも、当時のブロワの主流は、長きにわたって採用され、知見も豊富なベアリングを使った回転式だったからでした。

燃料電池システムは、一度設置すると連続運転と長期の使用が見込まれるため、なによりも耐久性の確保が求められます。そこで採用実績のない電磁式ダイヤフラムブロワに比べて、多少コストはかかっても耐久性の知見がすでに豊富にあり、保証もある、回転式ブロワのほうが信頼できると、各メーカーでは判断したためでした。

電磁式ダイヤフラムブロワに対しては、関心は高くとも一方で、本当に長時間運転に主要部材のゴムが耐えられるのか、と疑問視されていたのでした。

そうした中、国による「定置用燃料電池実証事業」が始まり、2005年時点のエネファームのシステム価格は約1,000万円となりました。この価格では一般家庭での導入へのハードルは高く、本格普及に向けて大幅なコスト削減が課題となってきました。

ここで燃料電池システム開発関係者の間では、“低コスト化の鍵は補機にあり”との見方が強まってきました。経済産業省でも、2005年4月にまとめた「定置用燃料電池市場化戦略検討会報告書」で、補機類の低コスト化の重要性を指摘し、補機供給に新規企業の参入を促すべきであると提言していました。

この提言を受けNEDOでは「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発」(2005~2009年度)を実施。そのテーマの一つとして「家庭用燃料電池システムの周辺機器の技術開発」(通称「補機プロジェクト」)を掲げ、補機の消費電力低減、耐久性向上、低コスト化などを目指すこととしました。

補機プロジェクトの委託先の一つで、家庭用燃料電池システムを製造する松下電器産業(現・パナソニック)では、テクノ高槻にもプロジェクトへの参画を呼びかけ、松下電器産業からの再委託先として採択されました。

大西さんは当時の状況を次のように説明します。「補機プロジェクトの再委託研究には、燃料昇圧ブロワに関して三つの課題が掲げられていました。そのうちの省エネ化と低コスト化は、私どもの電磁式ダイヤフラムブロワの場合、解決済みと言えました。残る一つが耐久性でした。具体的にはエネファーム実用化への共通目標となっていた「4万時間」の耐久性達成が、燃料昇圧ブロワにも求められていました」

昇圧ブロワの〝ゴム〟を工夫し、短期間で耐久性を証明

大西さんは、「製品として実績のある浄化槽用ブロワで、すでに3~4万時間の耐久性が市場で確認されていたのでそれなりの自信はありました。しかし、燃料電池システムとしての4万時間の耐久性をどのように証明すればよいのか、それは大きな課題でした。特に反復動作をするダイヤフラムゴムの耐久性保証が、システムメーカーより強く要求されました」と言います。

4万時間は日数にして1,667日、約4年半。実時間で耐久性試験をしていては実用化競争に出遅れてしまいます。そこで、部材の劣化を意図的に促進して寿命を検証する「加速試験」が必要になってきました。

ゴム製品の耐久性加速試験では、使用環境よりも高温下で劣化を促進させ、その結果を「アレニウスの式」を用いたモデルで解析する方法がよく使われます。これは種々の温度における化学反応速度を予測する手法で、例えば、75℃、80℃、85℃という具合に、いくつかの設定温度環境下にゴムを置いて劣化速度を比較することで、使用時の耐久性を予測します。

「ただし、このモデルがゴムに対して適用されるのは、パッキンなど静的な用途に使われる場合についてでした。私どものゴムは動的です。そこでダイヤフラムゴムに対しても、アレニウス・モデルが適応できるようにダイヤフラムの形状などを工夫しました」(大西さん)

同社では、燃料昇圧ブロワの耐久性を向上させる目的で、気体圧縮部の構造を見直し、ダイヤフラムゴムに係る負担を極力抑えることで、性能と耐久性を確保できるようにしました。そして、補機プロジェクトで購入した加速試験用の3台のオーブンを、それぞれ異なる温度設定にして同時並行で試験・解析を行い、ダイヤフラムゴムの耐久性を証明することができました。

(上)補機プロジェクトで加速試験用に導入された3 台のオーブン(下)温度設定パネル

大西さんは、「40年間ブロワを開発してきて、このときほど多くのデータを取ったことはありませんでした」と言います。「その結果、一気に試験を進めることができ、困難だと思っていた耐久性を実証することができました」

電磁式ダイヤフラムブロワの耐久性を実証したことにより、2005年に完成した同社の家庭用燃料電池システム用燃料昇圧ブロワ「FC-0520N」は、2006年にはメーカーの関心を集め、2007年度にはNEDOの「定置用燃料電池大規模実証研究事業」で補機の一つとして採用されました。

開発された燃料昇圧ブロワ「FC-0520N」。製品名末尾の「N」は、NEDOプロジェクトによる開発にちなんでのもの。


「新エネルギーベンチャー技術革新事業」(2010)では、燃料電池システム用水素循環ブロワを実用化

こうして定置型燃料電池システム用の燃料昇圧ブロワでの高い耐久性が確認された電磁式ダイヤフラムブロワでしたが、テクノ高槻では続いて燃料電池システム用の「水素循環ブロワ」の研究開発に取り組みました。

燃料ガスから水素を取り出す家庭用燃料電池システムなどの改質型とは違い、車両用燃料電池システムなどの純水素型ではもともと純水素を燃料としています。また、発電効率を上げるため、発電段階で反応せずに排気に残った水素を再度発電に利用します。「水素循環ブロワ」は、その残留した水素を昇圧・循環するために使用する装置です。

テクノ高槻が開発した燃料電池システム用「水素循環ブロワ」

純水素を扱うことから、信頼性や安全性は都市ガスに比べて一段と厳しくなります。そのため、これまでは要求に見合う水素循環ブロワはなく、高額で大掛かりな他用途向けのコンプレッサーで代用されていました。

テクノ高槻では、燃料電池車メーカーが、このコンプレッサーに代わる、高性能の水素循環ブロワを求めていることを市場展示会での聴取などにより把握していましたが、水素を扱うブロワは、同社でも前例がありませんでした。

そこでテクノ高槻では、電磁ダイヤフラム方式による小型、低価格、かつ安全性や耐久性にも優れた水素循環ブロワの開発を目指して、NEDOの「新エネルギーベンチャー技術革新事業」に、「補機プロジェクト」(再委託)時とは異なり、今回は自身で応募、2010年度に採択されました。

この「新エネルギーベンチャー技術革新事業」は、(A)FS(フィージビリティ・スタディ)、(B)基盤研究、(C)実用化研究開発、(D)大規模実証研究開発、の四つのフェーズで、中小企業の個別研究開発テーマを支援するもので、テクノ高槻もFSから研究開発を開始しました。

まず、水素機能材科学を専門とする九州大学の西村伸教授に知見提供の協力を仰ぎました。その結果、西村教授と産学連携の共同研究を進めることとなり、「新エネルギーベンチャー技術革新事業」での水素循環ブロワの実用化に加速がかかることになりました。次に自動車や産業車両、補助電源などのメーカーにくまなくヒアリングを行い、どのような仕様の水素循環ブロワが求められているのかを徹底的に調査しました。

大西さんは、「私どもは中小企業で、相手は大手企業ばかり。かつては会っていただくのも大変でしたが、『NEDO事業を実行中』と説明すると、先方から『ぜひ会いましょう』と言っていただき、スムーズに情報収集ができました」とNEDO事業採択後、関係企業からの信頼度が格段に向上したことを強調します。

またFSでは、純水素型燃料電池ステムの中でも既に北米において導入が進みつつあり、近い将来に普及が確実視される、フォークリフトやパレットトラックなど、産業車両用に開発対象を絞り込むことも決定し、次の基盤研究での研究開発課題を、より具体的に抽出することにもつなげました。

水素循環ブロワ開発に起きる“想定外”を、共同研究者とともに一つずつ解決

産業車両用の水素循環ブロワの開発では大きなブレークスルーがありました。大西さんは、「水素を扱うことに関連する課題が次々と出てきて、それをクリアしなければならないことに苦労しました」と振り返ります。

テクノ高槻がそれまでの製品で扱ってきたのは、空気や燃料電池システムでの都市ガスなどで、水素循環に特化したブロワの開発は初めてでした。水素ガスには、材料の強度を低下させる「水素脆性」という性質があります。西村教授に協力をお願いしたのも、この点を見極めるためでした。

テクノ高槻ではメーカーへの調査に加えて、西村教授と共同で、水素の漏れない水素循環ブロワの構造開発に、FSで、着手していました。水素循環ブロワを試作、九州大学の水素循環試験装置に接続してゴムや樹脂の脆化を調べたところ、想定外の箇所で水素脆化が起きていることが判明しました。

「ゴムや樹脂は想定される使用環境で脆化しませんでしたが、ブロワ内の永久磁石を使った部品が脆化してしまいました」と大西さんは説明します。

というのも、永久磁石に使用していた金属が水素を吸収しやすい水素吸蔵合金の一つだったからでした。大西さんは、「自動車メーカーなら当然のような知見も、そのときの私たちには、新たな発見でした」と言います。

想定外はさらに生じます。フェーズBの基盤研究をするなかで、循環する気体は純水素でなく、水素とともに窒素や高温水蒸気も含んだ混合ガスであることがわかってきたのです。「水蒸気を含む80~90℃の高温ガスを循環させるわけですからブロワが保つわけがありません。実ガス環境下で試験を行う必要性が出てきました」(大西さん)

九州大学伊都キャンパス内に置かれた、2010年導入の水素循環試験装置(左)と、2011年導入の実ガス循環試験装置(右)
(写真提供:株式会社テクノ高槻)

テクノ高槻では西村教授とともに、これらの課題を一つひとつ解決していきました。永久磁石の脆化に対しては、磁石を水素から守るべく、コーティングなどの検討を重ねました。また耐久性試験では、実ガスに近い比率の混合ガスを循環させ、温度や湿度を制御できる試験装置を開発するなどして、目標の耐久性をクリアしました。

テクノ高槻ではこうして基盤研究で、大型車両向けと小型車両向けの水素循環ブロワの開発に成功、続いて実用化研究開発では、1分間あたり風量100Lの性能を持つ「HRB-100」と、同50Lの「HVP-50」の製品化を実現しました。こうした壁はどれも乗り越えるのが困難なものでしたが、実用化・事業化をめざすことをなによりの目的としているNEDOプロジェクトだからこそ到達できた成果と言えます。

混合ガスに含まれる水蒸気が凝縮した水滴<要確認>を排出するため、ガスの挿入孔(左の穴)と排出孔(右の穴)の高さを変えた。

組立の様子


エネファーム用の各種ブロワで高いシェアを獲得

テクノ高槻がNEDOプロジェクトで開発した燃料電池システム用ブロワは、すでに社会で大いに役立っています。

2016年9月末現在のエネファーム総販売台数は約18万6000台。そのうち半数以上にテクノ高槻製の燃料昇圧ブロワ「FC-0520N」が採用されています。同機は低消費電力、長寿命、低コストが特長で、エネファーム普及拡大に果たした役割は小さくありません。プロジェクト期間中は加速試験で4万時間の耐久性を証明しましたが、現在は実時間でも4万時間を超えて問題なく作動しています。

大西さんは、NEDOプロジェクトに取り組んだことによる波及効果を語ります。「燃料昇圧ブロワの耐久性が認められたことで、バーナ空気ブロワやカソード空気ブロワといったエネファームに搭載されるほかのブロワの発注も燃料電池システムメーカーからいただくことができました。それらの機器も自社開発し、製品展開をしています」

また、NEDOプロジェクトを通じて、燃料電池システムメーカーとの距離が近くなった点も大西さんは実感していると強調します。「補機プロジェクトに誘っていただいたシステムメーカーがプロジェクトの幹事企業で、私たちが直接関わってはいない改質器の圧力の数値なども情報として提供してもらうなど、燃料電池システム開発の最先端を詳しく知ることができました。これは現在の事業展開にも大いに役立っています」

純水素型産業車両用燃料電池システム用の水素循環ブロワも、2014年に初めて1台が評価用に採用されたのを皮切りに、2015年以降、産業車両向けや補助電源向けなど幅広い用途向けに着実に実績を積んでいます。今後、更なる研究開発を進め、社会で本格的な導入が期待される一般向け燃料電池自動車での実用化の可能性も高まりました。

しかし、それだけではありません。大西さんは、「水素供給インフラが整備されれば、現在は改質型が主流のエネファームも将来は純水素型になることを予想しています。産業車両で培ったノウハウをさらに活用できるかもしれません。私どものような中小企業は10年先を見越すような先行投資を行うことが厳しいのですが、その点もNEDOのバックアップには助けられています」

コージェネシステム搭載ブロワ開発にも新たなNEDOプロジェクトで取り組む

現在、テクノ高槻では2015年度から新たに、NEDO「新エネルギーベンチャー技術革新事業」に応募・採択され、九州大学と共同で定置型業務用燃料電池システム向けブロワの技術開発にも取り組んでいます。

このプロジェクトでは、燃料電池で発電するとともに発生した廃熱を回収して熱エネルギーも併給する「コージェネレーション・システム」(CHP:Combined Heat & Power)用に、燃料電池のカソード電極に水素と反応させる空気を送りこむための「カソード空気ブロワ」の実用化をめざしています。

「海外に目を向けると、携帯電話基地局のバックアップ電源などとして、大型の業務用CHPのニーズがあります。家庭用に比べて業務用の空気ブロワには3~5倍の大きさのポンプが必要で、その製品化に取り組んでいます」(大西さん)

業務用CHPに対応するためには空気ブロワの大型化が必要で、テクノ高槻では、電磁ダイヤフラム方式に「バネ」を加えた新構造を検討しています。

「従来の電磁式ダイヤフラムブロワでは、ダイヤフラムゴムは気体を圧縮する役割ととともに永久磁石を配するロッドを支える役割も果たしてきました。しかし、ブロワの大型化に伴いダイヤフラムゴムも大きくすると、ロッドを保持する事が困難になり片寄ってしまいます。片寄りを防ぐためにゴムに厚さをもたせると、振動しにくくなりエネルギーロスになります。そこで、永久磁石を支える役割を、新たに加えるバネに担わせることを考えています。現在はバネの耐久性向上に取り組んでいるところです」(大西さん)

NEDOプロジェクトを利用した技術開発は、エネファームの燃料昇圧ブロワ、純水素型燃料電池システム用の産業車両用の水素循環ブロワに続いて3度目。電磁式ダイヤフラム方式をコア技術とし、水素社会を担う機器に適用させていく道のりが続いていきます。

「将来、日本が水素利用技術の先進国となれば、また強い国になると思います。水素社会を実現する技術の一端をこれからも担えればと思っています」(大西さん)

開発者の横顔

幹事会社や提案先メーカーとのコミュニケーションで感じられたやりがい

大西さんは、テクノ高槻が2000年ごろから乗り出した燃料電池分野事業の牽引役の一人。入社以来、国内営業を担当してきましたが、2007年に新事業立ち上げのために設置された商品企画室に移り、以来、燃料電池用ブロワの実用化に向けた事業に技術開発担当社員らとともに取り組んできました。

一連のNEDOプロジェクトにおける業務責任者でもあります。「補機プロジェクトなどでは、幹事企業の担当者はみなチームリーダーや部長クラス。そんな方々と将来の市場の可能性などの話も頻繁にさせてもらい、私自身、成長できました」

現在も、さまざまな燃料電池関連のメーカーに自ら技術提案をします。「どこに行っても興味深く聞いてもらえます。燃料電池システム用ブロワの研究開発には、将来性とやりがいがあると強く感じています」

株式会社テクノ高槻 常務取締役
大西 洋司さん

なるほど基礎知識

電磁式ダイヤフラムブロワ

ブロワは、空気やガスなどの気体を吸い上げたり送り出したりする装置です。気体を一時的に貯めるための空間を減圧すると、空間に気体が入ってきます。そして、再び空間を加圧すると、今度は空間から気体が出ていきます。これにより、空気を勢いよく移動させます。

空間の減圧・加圧の方法はブロワの方式によりさまざまです。例えば、圧縮作用をする部分が回転運動をする「回転式ブロワ」が広く知られています。

一方、「隔膜」などの意味もある「ダイヤフラム」とよばれるゴムを反復的に動かして、空間の減圧と加圧をするのが「ダイヤフラムブロワ」です。

ゴムが空間から離れて空間が減圧されると、空間入口部分にある吸入弁が開いて空気が入ってきます。逆に加圧されると出口部分にある吐出弁が開いて空気が出ていきます。

テクノ高槻が1967年に他社に先駆けて開発したのは「電磁式」のダイヤフラムブロワ。ダイヤフラムゴムにロッドを取り付け、さらにロッドに永久磁石を取り付けます。

この永久磁石を非接触に取り囲んだ電磁石のN極とS極を切り替えることで、永久磁石を反復的に動かします。永久磁石はロッドを通じてダイヤフラムゴムにつながっていますから、これでダイヤフラムゴムが反復的に動くことになります。

電磁式ダイヤフラムブロワの最大の特長は機械部品どうしが接しない点です。それゆえ摩擦が生じず、耐久性に優れ、潤滑油も不要になります。また消費電力も極めて低く抑えられるなど、他の方式のブロワにはないさまざまな特色があります。

電磁式ダイヤフラムブロワの動作のしくみ。構造上、気体圧縮室は左右の2個で1組となっている
(資料提供:株式会社テクノ高槻)

電磁式ダイヤフラムブロワのダイヤフラムの部分

反復移動するロッド(棒)を取り囲む電磁石の部分

NEDOの役割

「新エネルギーベンチャー技術革新事業」
(2007年度~、2017年度より「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」)

(NEDO 内担当部署:イノベーション推進部)

NEDOは新エネルギー分野におけるベンチャービジネスの参入促進や周辺関連産業の育成を目指し、中小企業やベンチャー等が持つ潜在的シーズを基にした技術開発を支援しています。さらに、ベンチャーキャピタル等の資金を呼び込む仕組みによって、ベンチャー等の自立的な発展や新たなナショナルプロジェクトの検討を加速させ、新エネルギー分野でのさらなるイノベーションの発展と導入普及の推進を目指しています。提案公募型の本制度では、フィージビリティ・スタディ(FS)から大規模実証研究開発までの4段階の開発フェーズについて採択された各テーマに対し、基盤技術研究の支援、さらに事業化に結びつけるための外部専門家によるハンズオン支援やビジネスマッチングの機会を提供しています。

株式会社テクノ高槻の開発テーマは本制度のFSから実用化研究開発までのフェーズに採択され、電磁式ダイヤフラムポンプをコア技術として小型で低価格、かつ安全性、耐久性にも優れた燃料電池用水素循環ブロワを実用化しました。

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