バイオ・医療

ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術開発/
化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発

創薬に新たな道を拓いたペプチド探索システム

東京大学、株式会社ペプチドリーム

取材:November 2017

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バイオ・医療

ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術開発/
化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発

創薬に新たな道を拓いたペプチド探索システム

東京大学、株式会社ペプチドリーム

取材:November 2017

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新たな創薬基盤を構築

医薬品は分子量の大きさによって、いくつかの種類に分かれます。長年にわたり医薬品の中心を担ってきた低分子医薬品に、遺伝子工学などにより実現した高分子医薬品。そして、それらが抱える短所を克服する医薬品として期待される中分子量の「ペプチド医薬品」があります。これまで「ペプチド医薬品」は創薬が困難なため、多くの研究者が実用化を諦めかけていました。そんなペプチド創薬に無限の可能性を与えたのが、東京大学と株式会社ペプチドリームです。NEDOプロジェクト「ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術開発」への参画を通じて、ペプチド創薬の基盤システムを揺るぎないものにすると同時に、国内外の製薬企業がペプチド創薬に挑む機会を大きく広げました。


「ペプチド医薬品」が医療を変える

医薬品は分子量の大きさによって種類があり、分子量の小さい低分子医薬品は長年にわたり飲み薬などとして、また分子量の大きい高分子医薬品は免疫システムと似た働きをするバイオ医薬品などとして使われてきました。

低分子医薬品は、開発費が安く、飲み薬として普及しやすいなどの利点がある一方で、分子量が小さいがゆえに体内の至るところに入っていくため、病巣を“狙い撃ち”しづらいなどの短所があります。

高分子医薬品についても、標的となるタンパク質に特異的に作用して副作用が起こりづらいなどの長所がある一方、開発費が高くつくことや、分子量が大きいために細胞膜を透過しづらいなどの短所があります。

そこで、低分子医薬品と高分子医薬品の“中間どころ”に位置するのが「ペプチド医薬品」です。これは、複数のアミノ酸からなる化合物「ペプチド」(→「なるほど基礎知識」参照)を応用して創られる医薬品のことで、標的のタンパク質に特異的に作用することができ、また、開発費を低く抑えられるなど、低分子・高分子医薬品がそれぞれ抱える短所をともに克服できることが期待されています(図1)。

図1 低分子、中分子、高分子の各医薬品

「特殊ペプチド」をつくるための研究開発の蓄積

「2000年代半ば、『ペプチドで薬を創る』と言うと、多くの製薬企業から『それは不可能だ』と言われました。過去に『ペプチド医薬品』の開発に挑んだものの、実現できなかったというイメージが、多くの製薬企業にはあったのだと思います」
こう話すのは、東京大学教授で、ペプチドリーム社外取締役の菅裕明さんです。

ペプチドで創薬するという発想や挑戦は決して新しいものではなく、半世紀以上の歴史があります。しかし、体内の酵素によりペプチドが分解されやすく、薬として期待したほどの効果が出ないなどの課題があり、実用化された「ペプチド医薬品」の数はわずかでした。

そうした中、菅教授は1990年代から東京大学で独自にペプチド創薬に向けた研究を続け、後のペプチドリーム創業につながる技術を開発しました。

その成果の一つが人工RNA触媒「フレキシザイム」です。通常、生体内では、細胞内のリボソームが20種類の天然アミノ酸を選択的に結合してペプチドを合成します。しかし、この「フレキシザイム」を触媒として用いると、N-メチルアミノ酸や環状骨格などといった「特殊」骨格を持つ非天然型アミノ酸を含んだ、従来にはない「特殊ペプチド」を合成することができます。

この特殊骨格が、これまで課題となっていた生体内安定性や細胞膜透過性の向上などに寄与し、通常の「ペプチド医薬品」の欠点を補うことができるのです。

さらに菅教授は、mRNA(メッセンジャーRNA)の情報に基づき、複数種の非天然型アミノ酸をペプチド鎖に導入するための「翻訳合成系」も構築しました。「フレキシザイム」と「翻訳合成系」を組み合わせることで、20種類の天然アミノ酸だけでなく、400種類を超える非天然型アミノ酸もペプチド合成に使うことができるようなりました。

多様なアミノ酸の組み合わせにより、実に多種多様な「特殊ペプチド」を合成することが可能となったのです。さらに、多種多様な「特殊ペプチド」のなかから、創薬に有用な「生理活性特殊ペプチド」を選び出し、高速で評価する「ディスプレイ」と呼ばれる仕組みも開発しました。

「フレキシザイム」「翻訳合成系」「ディスプレイ」。これらの技術を組み合わせることで、多種多様な「特殊ペプチド」から、新規の「生理活性特殊ペプチド」を探索することのできるシステムを実現しました。このシステムは「RAPID(Random Peptide Integrated Discovery)システム」と呼ばれています。(図2)

「フレキシザイムの開発に10年、オーバラップして翻訳系技術の確立に3、4年、またディスプレイの開発にも3、4年かかりました」と菅教授は説明します。

図2 RAPIDシステムの3要素

パトリックさんとの出会いをきっかけにペプチドリーム創業

「RAPIDシステム」を構築した菅教授は、2004年、東京大学の別の研究室に特任准教授として勤務していたリード・パトリックさん(現ペプチドリーム代表取締役社長)と出会います。

当時「RAPIDシステム」の実用化を考えていた菅教授は、起業マインドに溢れていたパトリックさんとの出会いをきっかけに、「RAPIDシステム」をベースにした起業を決意しました。その後、ベンチャーキャピタルや東京大学TLOを介して、経営を担う窪田規一さん(現ペプチドリーム代表取締役会長)とも出会い、2006年に株式会社ペプチドリームを設立しました。

ペプチドリーム設立時をパトリックさんは、「当初は事業が成功するかどうか自信はありませんでした。会社設立後の4年間は、『RAPIDシステム』を基にしたペプチドリーム独自の創薬開発プラットフォームシステムの構築に取り組みました」と振り返ります。

標的タンパク質が「特殊ペプチド」を“ディスカバリー”する

ペプチドリームは、「RAPIDシステム」の実用化に向けた改良の末、独自の創薬開発プラットフォームシステムとして「PDPS(Peptide Discovery Platform System)」を構築しました。

例えば、ある製薬企業が、「ペプチド医薬品」の材料になるような「特殊ペプチド」を欲しいとします。この時まず、製薬企業は標的タンパク質、つまり薬の作用対象となるタンパク質を用意します。

次に、このタンパク質が「PDPS」に仕掛られると、タンパク質は「フレキシザイム」を触媒に作られた1兆個の候補ペプチドから、創薬に有用な「特殊ペプチド」を見つけ出してきます。「PDPS」により選ばれた有用な「特殊ペプチド」は、その後、精製されて粉状の固化物となります。これを製薬企業に提供し、製薬企業が創薬に活かしていくことになります(写真1、2)。

「『RAPIDシステム』にも『PDPS』にも『ディスカバリー(Discovery)』の単語が入っているように、タンパク質に創薬に有用な『特殊ペプチド』を選んで“発見させる”ことがこのシステムの特色の一つです」(菅教授)

創薬につながる物質の開発は、従来、「ある物質ができたから、何かの医薬品に生かせるかもしれない」といったように新たに開発された「物質」が起点となっていました。一方、「PDPS」の場合は、「こんな医薬品を実現したいから、こんな物質を得たい」といったように、「目的」を起点としていることが、大きく異なります。

菅教授は、「『PDPS』のすごいところは、どんな標的タンパク質に対しても、そのタンパク質に作用する『特殊ペプチド』を得られるということです」と強調します。

写真1 「PDPS」を含む、標的タンパク質に対する「特殊ペプチド」探索・合成のプロセス。標的タンパク質をシーケンサに入れるとタンパク質が約1兆の「特殊ペプチド」群から活性の高いものを“ディスカバリー”する(左)、その結果はコンピュータ・ディスプレイに表示され(中央)、選択した「特殊ペプチド」が合成される(右)

写真2 合成された「特殊ペプチド」は最終的に凍結乾燥装置で精製されて(左・中央)、粉末状の固化物となる(右)。試料の入ったフラスコが凍結乾燥装置に設置されている様子(中央)


「RAPIDシステム」の完成度を高める

ペプチドリームで企業活動を進める一方、菅教授はそれとは明確に区分し東京大学で引き続き「RAPIDシステム」に関する研究活動を進めていきました。

「製薬企業と研究すると、アカデミックな発表はしづらくなりますからね。製薬企業との連携はペプチドリームが担い、研究室は自由度の高い研究をすればよいのだと思っています」(菅教授)

その中で菅教授は、2006年度から始まったNEDOプロジェクト「ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術開発」に応募しました。病気などを制御する化合物を探索・検証する技術を開発することなどを目的としたプロジェクトです。

菅教授は、「プロジェクト参画以前に、『RAPIDシステム』は技術的にはほぼ確立できていました。けれども、このシステムで何をするか、どういう標的タンパク質を狙って、どういう薬の材料を探していくかについては、まだこれからという段階でした。そこで、自分たちのやりたいことにマッチしたプロジェクトだと思って応募しました」と話します。

このNEDOプロジェクトに菅教授は、「翻訳リプログラミングに基づく統一的なスクリーニング系の構築」というテーマで臨みました。5年のプロジェクト期間のうち最初の3年間は、「RAPIDシステム」を構成する各技術の完成度を高めることに取り組みました。

例えば、「環状型特殊ペプチド」ライブラリーの合成は初年度のテーマでした。ペプチドを環状にすると、構造的なゆらぎが小さくなり、これにより標的タンパク質への結合能力が高まります。2年目には、抗ウイルス剤や抗菌剤として作用する「θ-ディフェンシン様ペプチド」の合成、また3年目には、「RAPIDディスプレイ」の構築などをテーマとし、技術の完成度を高めていきました(図3、4)。

図3 (上段)チオエーテル結合による「環状特殊ペプチド」とその合成。(下段)ペプチド鎖のアミノ酸残基(R1、R2)を変化させた時の質量分析(MALDI-TOF)解析、いずれも予想される「環状特殊ペプチド」が合成できていることを確認(資料提供:ペプチドリーム)

図4 RAPIDで合成に成功したΘ-ディフェンシン様ペプチド。Θ-ディフェンシン(左)、そのN-メチル化アナログ(類似体)(中)、シクロタイド骨格をもつペプチド(右)。これらは抗ウイルス剤や抗菌剤として作用(資料提供:ペプチドリーム)

具体的な標的を対象に、研究室で「特殊ペプチド」探索を実証

NEDOプロジェクト後半では、「『RAPIDシステム』で何をするか、どういう標的タンパク質を狙って、どういう薬の材料を探していくか」という課題解決の側面に、より重きが置かれました。

そこでプロジェクト4年目の2009年度からは、「RAPIDシステム」を駆使して、標的のタンパク質に対する「特殊ペプチド」の探索を研究室内で実証する段階に移行しました。菅教授は、「この段階は技術が完成していることを証明するために、とても重要でした」と振り返ります。

具体的に「特殊ペプチド」が作用する標的としては、細胞膜外タンパク質としてがん幹細胞に発現する「EpCAM」を、また細胞内タンパク質として子宮頸がんの標的と期待される「E6AP」および、がん細胞の増殖に関与しているといわれる「Sirt2」を選びました。いずれも薬学的な対処法が十分には確立されていないチャレンジングな標的でした。

これらを標的とした試験の結果、「EpCAM」に対しては6種の「特殊ペプチド」が探索され、うち1種は抗体並みの選択性を持つことがわかりました。また、「E6AP」に対しては4種、「Sirt2」に対しては3種の機能する「特殊ペプチド」を同定することができました。

NEDOプロジェクトだからこその“企業へのインパクト”

さらに課題解決の側面での研究開発が進みます。2010年度からは実際に企業が挙げた標的タンパク質に対して、「特殊ペプチド」を探索・同定し、提供するといった実用ベースでの研究へと移りました。同プロジェクトに参画していたいくつかの企業から、標的タンパク質を1種ずつ挙げてもらい、「特殊ペプチド」の探索を行いました。

菅教授はその当時を振り返り、「企業から『これをやってほしい』と言われたことに対して、きちんと目的となる『特殊ペプチド』を見つけ出すことを実証しようとしました。結果的には、いずれの場合も『特殊ペプチド』の獲得に成功し、上手くいきました」と言います。

そして、そのうちの1社がこの研究成果を受けて、その後の開発を進めるべく、NEDOプロジェクト終了後の2011年にペプチドリームと共同研究開発の契約を締結しました。当時、ペプチドリームの契約締結先としては海外企業が先行していたなかで、日本企業がペプチドリームの「PDPS」に興味・関心を示す契機の一つとなりました。

「ペプチドリームとの契約締結に至る企業も現れたことは、大きな成果だと考えています。日本の製薬企業にとっては、これは大きなブレークスルーとなったのではないでしょうか。今回のプロジェクトで我々は、多数の製薬企業が集まったコンソーシアムの一員だったので、企業が我々のプロジェクトに興味を持ってくれました。早期の契約締結が可能になったのは、NEDOプロジェクトのスキーム自体が良かったのだと思います」(菅教授)


「ペプチド医薬品」開発が製薬業界の潮流に

菅教授が開発した「RAPIDシステム」や、ペプチドリームが改良を進めた「PDPS」の能力は、国内外の製薬を中心とする多くの企業に知れわたっていきました。“メガファーマ”と呼ばれる世界の大手製薬企業が次々とペプチドリームと契約を結んでいったため、「PDPS」を使って「ペプチド医薬品」を開発することが、製薬業界における大きな潮流になりつつあります。

パトリックさんは、「2010年頃に『PDPS』を用いた創薬共同研究開発というビジネスモデルで海外の大手製薬企業と契約ができたあたりから、これは成功するという自信を持てるようになりました」と話します。

現在では、世界の大手製薬企業10社のうち7社がペプチドリームと契約を締結しています。また、ペプチドリームで進行しているプログラム数は60件を超え、臨床試験まで到達している案件も1件あります。さらに、ペプチドリームから「PDPS」の技術を導入し、製薬企業内で活用するといった事例も増えてきています。

写真3 バイオベンチャーが集まる川崎市臨港部にあるペプチドリームの社内。東京大学駒場リサーチキャンパスから2017年7月に移転。実験室と執務室が同フロアにあるのが特色

新しい医薬品、新しい医療への期待

菅教授は、現在の状況と、今後に向けての展望をこう話します。

「現在のペプチドリームの活況ぶりはうれしいかぎりです。アカデミックな分野で開発された技術が、多くの製薬企業で薬の探索に使われるのは稀なことですから。今後、世界のほとんどの製薬企業でこの技術を使うようになれば、創薬のパラダイムシフトが起きるでしょう。多くの製薬企業がペプチドを使った創薬に取り組めば、必ず『PDPS』の成果による医薬品が将来、誕生してくると思います」

また、菅教授とともにペプチドリームを起業し、社長となったパトリックさんは、今後の抱負をこう話します。

「2006年のペプチドリーム設立以降、最初の10年間は基礎作りでした。技術を確立し、国内外の製薬企業と『PDPS』を用いた契約を結ぶことで、評判を高めていきました。いまでは世界にペプチドリームの評判が広まっています。次の10年間で行うことは、実際に薬を世に出すことです。病気で苦しんでいる世界中の人々に薬を届けることが、社長になった私がすべきことと考えています」

国内外の製薬企業が、ペプチドリームの「PDPS」を活用し、「ペプチド医薬品」の開発に力を入れています。低分子医薬品や高分子医薬品では実現困難だった新しい治療が可能になっていくことが期待されます。

開発者の横顔

異端は認められた瞬間、先端になる

菅裕明さんは、1994年にマサチューセッツ工科大学化学科で博士号を取得し、以降8年間、米国で研究を続けます。2003年に東京大学先端科学技術研究センターへ、2010年からは東京大学大学院理学系研究科の生物有機化学教室の教授として研究を続けています。

ペプチドリームの創業者の一人であり、同社の社外取締役も務めますが、「私はアカデミックな立場から新たな技術を開発し、それを実証することをミッションとしています」と言います。

座右の銘は「異端は認められた瞬間、先端になる」。「フレキシザイム」や「RAPIDシステム」の開発もこのマインドで実現したそうです。

株式会社ペプチドリーム
社外取締役
東京大学
教授
菅 裕明 さん

バイオベンチャー起業の夢を日本で

リード・パトリックさんは、米国ダートマス医科大学でバイオケミストリーの博士号を取得したのちに、バイオベンチャーを起業するために同大学でビジネストレーニングを受けました。その際の同級生であった日本人の勤勉さに触れて、日本で起業することを決め、2004年に東京大学の分子生物医学の特任准教授として来日しました。

菅教授とは東京大学で違う研究室にいましたが、教授会のあとで必ず話をする関係となりました。菅教授からバイオベンチャーを設立するという話を聞く中で技術的な内容に興味を抱き、ペプチドリームに加わることを決めました。

来日当時は日本語が全くできませんでしたが、ペプチドリーム社内での意思疎通のために日本語を勉強し、現在では日常会話はできるようになっています。好きな言葉は「一所懸命」。暇があったらサイエンス関係の論文を読みたいと言います。

株式会社ペプチドリーム
代表取締役社長
リード・パトリック さん

なるほど基礎知識

「ペプチド」と「特殊ペプチド」

「ペプチド」は、複数個のアミノ酸から創られる化合物です。アミノ酸の分子には、「アミノ基」と「カルボキシ基」と呼ばれる原子の集まりがそれぞれあります。アミノ基は「-NH2」の形を、またカルボキシ基は「-COOH」の形をしています。

ここにAというアミノ酸と、Bというアミノ酸があるとします。Aのカルボキシ基「-COOH」と、Bのアミノ基「-NH2」が近づいていきます。

すると、Aのカルボキシ基からは酸素原子1個と水素原子1個(OH)が、Bのアミノ基からは水素原子1個(H)が、それぞれ持ち出され、水分子1個(H2O)が生じます。

一方、AとBのアミノ酸は、水となって出ていった跡の部分が結ばれて、新たな化合物になります。これが「ペプチド」です。

もとのアミノ酸がどのくらいの個数だったかにより「ペプチド」の呼称は変わってきます。2個から10個ぐらいのアミノ酸から創られる「ペプチド」は「オリゴペプチド」(Oligopeptide)と呼ばれ、さらに10個以上からなる「ペプチド」は「ポリペプチド」(Polypeptide)と呼ばれます。

図5 二つのアミノ酸から「ペプチド」がつくられる過程の例

通常、「ペプチド」は、生体内のタンパク質を構成する20種類のL-アミノ酸から構成されます。一方、その20種類以外のアミノ酸(天然に存在しないアミノ酸)を含む「ペプチド」のことを「特殊ペプチド」と呼びます。

天然には存在しないアミノ酸には、大環状構造のアミノ酸や、L-アミノ酸の光学異性体であるD-アミノ酸、また構造の一部がメチル基(CH3-)に置き換えられたN-メチル化アミノ酸などが含まれ、これらにより酵素に分解されづらいといった耐性や、細胞膜の内側に入っていくといった透過性などの機能を発揮することができます。

「特殊ペプチド」の中でも、本文で紹介している「環状ペプチド」は、構造が丈夫になり、また3次元の構造を保てるため、標的タンパク質への結合能力が高く、中分子創薬の材料として期待が高まっています。「環状ペプチド」は天然物としても入手できますが、いつでも人工的に「環状ペプチド」を合成できることは創薬の進歩につながります。

NEDOの役割

「ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術開発 /
化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発」
(2006~2010年度)

(NEDO内担当部署:バイオテクノロジー・医療技術部)

創薬における研究開発コストの増大や、新薬承認件数の減少等により、創薬に関わる企業負担と開発リスクが増えています。そこで今後の国際競争においては、ゲノム研究やポストゲノム研究の進展で解明されてきた疾患に関するタンパク質等に対し、いかに早く、正確に新たな創薬ターゲットを特定できるかが極めて重要です。こうした背景を踏まえ、NEDOは「ゲノム創薬」の加速を目指し、本プロジェクトを実施しました。

具体的には、日本の強みである完全長cDNAリソースや、世界最高レベルのタンパク質の相互作用解析技術等を最大限に活用し、創薬ターゲット候補の絞り込みを行うとともに、疾患等の生物現象を制御する新規骨格化合物等の探索・評価を行うための技術開発を実施しました。

本プロジェクトの成果を医薬開発のプラットフォームとして提供することで、産学官が連携してバイオ産業の情報基盤を強化し、個別化医療や画期的な新薬の創出を後押ししています。

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