HOME
>
ニュース
>
プレス発表
> 表示中のページ
平成19年2月16日
独立行政法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 牧野 力
新しい小型高効率リアクターの実現による
エネルギー・環境問題の解決に向けての取り組み
〜革新的なものづくり技術による精密なセラミック部材の集積化〜
NEDO技術開発機構は、平成17年よりセラミックリアクター開発プロジェクトを実施しており、これまでに、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の心臓部であるリアクター(反応器)に関して、従来にない低温動作の実証と、集積化による高い電力密度の発電を達成いたしました。
本プロジェクトは優れた特性を持つ「機能性セラミックス」の特徴を最大限引き出す「ものづくり技術」を開発し、今まで世の中で実現できなかった新しい「ミクロ材料を精巧に組み上げた化学反応器=セラミックリアクター」を実現することを目的としています。
記
プロジェクトの背景・概要
今、地球温暖化の危機が叫ばれ、その対策のために二酸化炭素の排出を減らすための様々な努力が進められていますが、その道はまだまだ険しく、新エネルギー開発や省エネルギー技術の向上が世の中では特に強く求められています。
NEDO技術開発機構では、上記課題を解決するためのキーデバイスの創出を目的として、平成17年度より「セラミックリアクター※開発」を行っています。他の方法に比べて効率の優れている「電気化学反応」に、高度なセラミックス製造技術を組み合わせ、革新的な材料・部材の開発により従来は実現不可能であったような高機能リアクターを創り出すことで、高効率でエネルギーを生み出したり、環境を浄化して地球温暖化対策に貢献すると共に、セラミックスを中心とした日本の製造産業における競争力の強化を果たすことを目指しています。
本プロジェクトでは、直径が数ミリメートルから1ミリに満たないような円筒形の形状をもつ高機能リアクターを開発し、近年、研究開発が急速に進められている燃料電池の一つである固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)において、いわゆる“マイクロSOFC”を実現させることが大きな狙いの一つであり、「作動温度を飛躍的に下げることが可能な材料の開発」、「微細構造の反応ユニット(燃料電池セル)を精密に並べ、積み重ねてリアクターにするための製造技術の開発」を行い、性能実証用のモジュールを作製して、小型高効率化・低温作動化・急速作動停止性能等の優れた機能を自動車用の補助電源や家庭用のコジェネシステム等、実用ニーズへ適用するための基礎的検討を行っています。 具体的には以下のとおりです。
[1]
セラミックリアクターの作動温度域を650
以下にまで低減し、500
作動をも可能とする低温作動用の電解質・低温でも高活性な電極材料開発と部材化の目標として、650
で0.5W/cm2以上の単位出力密度の達成や、将来の用途拡大を念頭において500
でも従来性能を超える特性向上を目指す。
[2]
セラミックリアクターを構成する部材の微細化・集積化のための革新的な製造プロセス技術の開発に より実現が期待される小型高効率化の目標としては、径0.5mm以下のセルを1cm角のキューブ当り100本以上で一回の連続行程により形成することを可能とし、インターフェースでの電気的な損失を5%以下に抑える等により、単位体積当たりの発電出力を2W/cm3以上にすることを目指す。
[3]
セラミックリアクターを構成するセル、キューブ及びモジュールの性能評価を進め、実際のモジュール作動条件に適応可能であることの実証のため、650
以下での2kW/
レベルの出力密度及び発電効率40%以上の達成と、急速作動停止状態の耐久性実証等を目標として設定、プロトタイプモジュールでの実証を進める。
※
「セラミックリアクター」とは、さまざまな優れた機能を備えている「セラミックス(原始的な焼き物から出発し、スペースシャトルの超耐熱タイル、身近なケータイやオーディオの部品、さらには高温超電導体まで、優れた機能を発揮)」を用いて作られる「電池のような“電気化学的な機能”を活かした化学反応システム=リアクター」を組み合わせた本プロジェクト内容を表現する造語。
これまで得られた成果
[1]
低い温度で高い出力を出すことが可能となる、燃料電池セルの電極用の高性能材料を開発し、作動温度をこれまでに開発されたセルに比べて100
以上下げることに成功<2006.1>【
資料[1] PDF:537KB
】
[2]
ミクロチューブ型SOFCで、これまでは到底不可能であった大幅な低温作動化に成功し(450℃でも0.17W/cm2の発電出力)、570
で1W/cm2という世界最高の高効率出力を実現<2006.1>【
資料[2] PDF:391KB
】
[3]
マイクロSOFCのユニットを組み立てて発電器(モジュール)にするのに必要な、新しいフレキシブルなシール(ガスを逃がさないようにする)用のシート材料を開発<2006.7>【
資料[3] PDF:162KB
】
[4]
ミクロハニカム(蜂の巣の形をした0.数ミリのチューブ形の孔が開いている多孔体フィルター)型のSOFCの製造プロセスを世界で初めて開発、角砂糖大(1cm3)の大きさの中に250本以上の発電セルを造り込むことに成功<2006.10>【
資料[4] PDF:276KB
】
[5]
銀ナノ粒子を超微細分散させた新しい燃料電池の電極を開発し、中温域(650
)で従来の2倍近い高出力化に成功<2006.12>【
資料[5] PDF:255KB
】
[6]
ミクロチューブ型SOFCを数10本組み合わせて、3×3×3cmのコンパクトサイズで10〜20W程度の発電が出来ることを実証<2007.1>【
資料[6] PDF:98KB
】
今後の予定、開発ポイント
これまでに得られた研究開発成果を発展させて、低い温度でも十分に作動することを可能にする高活性材料・部材を用い、高度なセラミック製造プロセス技術の適用により、ミクロチューブ型SOFCの集積モジュール化による発電実証を進めて行きます。また、ミクロハニカム型SOFCによる究極の微細造り込み技術を完成させて、高性能リアクターへの適用性を検討します。
これからの開発ポイントとして特に重要となるのは、SOFCのセルが集積した角砂糖=「キューブ」を、さらに多数組み上げて発電モジュールとする際に、キューブの各々へとスムーズに燃料ガスや空気を流し込むことが出来るように、また同時にセルで生成した電気を、出来るだけロス無く集めるようにすることです。そこで、キューブ同士をつなぎ込む「インターフェース」に適した材料の開発と、精緻な造り込みをするためのプロセス技術開発を強力に進めて行く予定です。
その結果得られる「プロトタイプモジュール」、すなわちセラミックリアクターのコアとなる燃料電池の反応器を用いて、様々なアプリケーションで必要とされる、各種の運転条件への適用性を高めるのと同時に高性能を発揮するための検討を行い、さらに信頼性の保証や製造コストを下げる等のための実証化研究を経て、2015年頃までを目標とした実用展開を目指します。
なお、本成果の一部は2月21日〜23日開催の「nano tech 2007」において展示すると共に、技術詳細については、3月14日に開催される「第2回セラミックリアクター開発シンポジウム」においての発表を予定しております。
お問い合わせ先
NEDO技術開発機構 ナノテクノロジー・材料技術開発部 林、尾花山
TEL 044-520-5220