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平成20年10月29日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
広島市立大学大学院情報科学研究科

デジタルカメラの複数画像から簡易に高品質3次元モデルを作成する手法を開発
【産技助成Vol.53】

一般的な撮影装置を使って臨場感と実在感のある3次元コンテンツを
容易に作成する手法を開発

図1.通常のディスプレイを用いて手軽に3次元物体をモデリングした例(左)と本技術のフロー(右)
図1.通常のディスプレイを用いて手軽に3次元物体をモデリングした例(左)と本技術のフロー(右)

【新規発表事項】
  独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、広島市立大学大学院情報科の准教授、椋木雅之氏は、実物体の3次元形状と表面の色やつやなどの材質感を取得して再現する技術と人の目の運動視差を用いて、デジタルカメラと視点位置検出用カメラ、汎用PCという簡単な設備で3次元モデルを高い実在感で提示する仮想展示システムを開発しました。
  このシステムは、対象物の全周囲を手持ちのデジタルカメラで一方向に自由に移動しながら30枚ほどに撮影して、その物体の形状を簡単にコンピュータ内に取り込み、撮影してからわずか30分程度の処理時間で3次元モデル形状を得られる技術です。
  従来のモデル作成手法のように撮影時に物体を回転台に乗せたり、カメラを三脚に固定したりする必要もありません。また実装方法の改良により、処理時間のさらなる短縮が可能となります。
  本成果の応用として、3次元モデルの仮想展示に適用した場合、人の目の運動視差により立体感を知覚することを利用してユーザの視点位置に応じた表示を行うことも可能となり、より臨場感・実在感のあるモデルの提示を行うことが可能です。


  1. 研究成果概要
      CPU(注1)やGPU(注2)の性能向上でパーソナルコンピュータでも高度な情報処理が可能になり、さらにデジタルカメラやビデオカメラの普及によって高精細な3次元データを取得し、取り扱うことが容易になってきました。しかし、これまでの3次元モデルの作成には画像データの取得や加工に人手と時間がかかり、環境が整ってきているにもかかわらず、利用が進んでいません。3次元モデルの利用を普及させていくには、実物体から3次元モデルのデータを容易に取得できることが必要です。そこで本研究では、実物体の3次元形状と表面の色やつやなどの材質感を取得して再現する技術と、人の目の運動視差を用いて簡単な設備で3次元モデルを高い実在感で提示する仮想展示システムを開発しました。
      デジタルカメラで撮影した物体画像と物体形状を組み合わせることで、拡散反射特性(物体表面の色を表す)・鏡面反射特性(つやを表す)・バンプ特性(表面の微細な凹凸を表す)をコンピュータ内に取り込むことが可能です。さらにバンプモデルを加えることで、実物体をよりリアルに表現でき、光輝材や木目のような複雑な表面反射特性にも適用可能です。
      また3次元モデルの提示手法として、ユーザの視点位置に応じた表示を行う仮想展示システムを開発しました。仮想展示では、ユーザは運動視差により立体感を知覚して、ディスプレイの向こう側にあたかも3次元物体が実在しているかのような臨場感・実在感を感じることができます。
      必要な機材は、3次元モデル表示用の計算機と通常のディスプレイ、視点位置検出用のカメラのみ。カメラの位置合わせも自己校正機能により行え、機器の設置・維持が容易です。

    (注1) Central Processing Unitの略。かつては訳して中央処理装置あるいは中央演算処理装置ともいった。コンピュータで数値計算をはじめとする情報処理、周辺機器の制御などを行う集積回路。
    (注2) Graphics Processing Unitの略。パーソナルコンピュータなどで画像処理を担当する専用の集積回路のこと。

    図2.バンプモデルにパーリンノイズ(注3)の考え方を導入した例
    図2.バンプモデルにパーリンノイズ(注3)の考え方を導入した例

    (注3) パーリンノイズ:1990年代後半にKen Perlinが開発したコンピュータグラフィックスの実在感を増すための技法。時間的・空間的に擬似乱数的に変化する値を生成する。 。

  2. 競合技術への強み
    1.   実物体の3次元モデルを画像から作り出せます。
        これまでの、3次元モデルの作成には細かな手作業が必要であり、多大な労力がかかっていました。画像撮影のみで3次元モデルが作成できる本手法は、モデル作成の労力を大幅に簡素化、省力化できます。
    2.   光学的反射理論に基づいた計算機処理なので実物体に忠実な3次元モデル化が行えます。
        手作業による3次元モデル化では、データによる裏付けが不十分な場合が多く、見た目が美しくても、実物体を永久保存する用途には必ずしも向いていませんでした。本手法では、画像データに基づいて対象物体の対象物体の表面形状や光沢を抽出し、モデル化を行っているため、対象物体の資料的価値を損ないません。また、光学的反射理論も、実物体の特性をよりよく反映できるよう改良が加えられています。これにより、歴史的史料や重要な文化財の保存を目的とした3次元モデル化においても、適用可能です。
    3.   人手をあまり介さない、計算による3次元モデル化なので、常に一定の品質が保証されます。
        手作業による3次元モデル化では、作業者の操作に対する熟練度や芸術的感性などにより、品質は大きく変わります。安定した品質の3次元モデルを手軽に作成できることから、通信販売用の電子カタログ向けの3次元モデル作成などにも適用可能です。

      作業コスト 正確性 品質
    Maya 等のモデリングソフトによるモデル作成
    (従来技術)
    ×
    多くの手作業が必要

    実測に基づいたモデル化ではない

    作業者の熟練度に依存
    画像列からのモデル化
    (本技術)

    対象物体の画像撮影のみでよい

    画像データから計算によりモデル化できる

    一定レベルの品質を保証
    表1.「手作業を主体とする従来技術」と「本技術」との比較表

  3. 今後の展望
      本研究の目的は、第一に3次元コンテンツ作成の省力化に適用することがあります。本技術を適切な条件下で利用すれば、従来と比較して3次元モデルの取得が容易になり、Webカタログでの商品紹介、電子博物館での展示等への適用が可能になると考えています(既に広島市公文書館にて原爆ドームの3次元モデルへ本技術を適用し、ムービー展示した実績あり)。そのため、3次元コンテンツ作成事業者と協力した事業展開が考えられます。将来的には、3次元画像の表示ができるホログラム(注4)のようなデバイスを活用して3次元モデルの利用が、インターネットやデジタルカメラ並みに普及することを期待しています。

    (注4) ホログラムとは、3次元像を記録する写真のこと。通常の2次元の写真では位相情報は記録されていないが、光の電場の振幅と位相が記録され、特別な方法で像を再生すると完全な3次元像として視認できる。

  4. 問い合わせ先
    (1) 技術内容について
    <代表研究者名・所属機関・部署名・役職名>
    椋木 雅之(広島市立大学大学院情報科学研究科知能工学専攻 准教授)
    TEL:082-830-1766      FAX:082-830-1792
    E-mail: E-mail
    研究室HP:広島市立大学情報認識学講座
       
    (2) 制度内容について
    NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
    田中 信介、松崎 肇、千田 和也
    TEL:044-520-5174 FAX:044-520-5178
    個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)

  5. 参考
    成果プレスダイジェスト:広島市立大学准教授 椋木 雅之氏【PDF:423KB】