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Press Release

次世代熱エネルギー輸送デバイス「ループヒートパイプ」を開発

―電力を一切用いることなく大量の熱輸送を実現―
2009年12月17日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人 名古屋大学
 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として、名古屋大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻の長野方星講師は、電力を用いることなく半永久的に大量の熱輸送を可能にするループヒートパイプ(LHP)(注1)技術を開発しました。この技術の確立により、広範な熱要求に対するループヒートパイプの設計および試作が可能となりました。省エネルギー冷却や熱エネルギー有効利用が要求される分野への活用が期待される技術です。

図1 LHPの概念図(左)とLHP実験検証システム(右)
図1 LHPの概念図(左)とLHP実験検証システム(右)

 LHPの概念図(左)とLHP実験検証システム(右)です。名古屋大学大学院 工学研究科では、熱輸送能力を高めるための第1ウィック(注2)と動作信頼性および抗重力性を高める目的で用いる第2ウィックを複合化することで、従来よりもシンプルで低コストなLHPを目指しております。LHP実験検証システムは、各要素の形状、熱負荷量、ウィック、作動流体が可変で様々な熱条件下での実験が可能です。

  • (注1)ループヒートパイプ(LHP)とは、毛細管現象を利用して熱源で奪った熱を放熱部まで受動的に輸送する二相流体熱輸送デバイスのこと。
  • (注2)ウィックとは、ポンプ動力となる毛細管力を生み出す多孔質体で、熱源と接触する蒸発部に取り付けられている。

1.背景及び研究概要

 今回名古屋大学大学院 工学研究科で開発したループヒートパイプは、細孔半径1ミクロン以下の高分子多孔質体をウィックに用いており、大量熱輸送(熱輸送容量:10W~1kW程度)、長距離熱輸送(熱輸送距離:10cm~10m程度)ならびに小型・軽量化を可能にすることに成功しました。
 省エネが強く望まれる今日において、高効率熱エネルギーの輸送や冷却技術は民生、産業、運輸のほぼ全分野にまたがる重要な研究開発課題です。省エネルギー化に貢献する熱輸送システムの一つとしてヒートパイプが注目を集めていますが、既存のヒートパイプは管全長にわたってウィックが存在し、また、気液が双方向に流れることから長距離熱輸送および大量熱輸送が困難でした。
 一方、ループヒートパイプは、ウィックが蒸発器内のみに存在し、他の流路は平滑管を用いることができるため、従来のヒートパイプよりも毛細管力を高めることが可能です。そのため、重力の影響も受けにくく長距離熱輸送が可能になります。また、平滑管はフレキシブルな管を用いることができるため、レイアウトの自由度が高いのも特徴です。
 本技術により、従来のヒートパイプよりも高い熱輸送が実現され、また液冷ポンプシステムのような電力や機構を要することなく高い熱エネルギー輸送が実現できる見通しです。

2.競合技術への強み

 この技術には、次のような強みがあります。
  • (1)大量熱輸送、長距離輸送が可能
     電力やメカニカルな機構を一切必要としない半永久的な熱輸送デバイスで、ヒートパイプ技術と比較して大量熱輸送、長距離輸送が可能かつ抗重力性にも優れています。
  • (2)既存のループヒートパイプよりも更に高い熱輸送が可能
     細孔半径1μm以下のウィックにより、従来のLHPよりも更に高い熱輸送が可能になります。
  • (3)幅広い熱要求に対応可能
     詳細な熱輸送物理モデルにより幅広い熱要求(10W~1kW程度の熱輸送、10cm~10m程度の熱輸送距離)に対応が可能です。

表1.本技術と従来手法との比較表
名称
(略称)
ループヒートパイプ
【今回の技術】
ヒートパイプ液冷ポンプシステム
電力◎不要◎不要×要
メカニカル機構
(寿命)
◎不要
(長)
◎不要
(長)
×要
(短)
熱輸送量
(熱輸送形態)
◎大
(潜熱・二相)10W~1kW
△中
(潜熱・二相)
○大
(顕熱・単相が主)
熱輸送距離◎長、10cm~10m×短○長(電力に依存)
重量◎小◎小×大
三次元的面伝熱◎可能×実質的不可能◎可能
重力依存性△有(本研究課題)×有○電力補償可
コスト×高(本研究課題)◎低△システムに依存
民生実用例×研究開発開始
(本研究課題)
◎様々な高発熱機器△CPU冷却、エンジン冷却など一部
宇宙実用例○有
SWIFT、ICESATなど
◎多
様々な衛星
○有
ISS、スペースシャトル、火星ローバなど
総合評価○研究課題を克服することで将来性と発展性のある“◎”な熱制御デバイスとなる。△熱輸送量に限界があるため、使用に制限がある。△電力と重量の問題があるため、適用範囲が制限される。

3.今後の展望

 今後、名古屋大学ではさらなる高性能化と低コスト化ならびに様々な分野への応用展開を進めて行きます。省エネルギー冷却技術の開発や熱エネルギー有効利用を目指す企業、ならびにヒートパイプ等の冷却デバイスの研究開発に実績のある/興味のある企業等との共同開発を提案します。直近の優先課題・開発テーマは以下の通りです。
  • (1)適用性限界(最大・最小熱輸送量)の拡大
  • (2)ウィックの高機能化による信頼性向上
  • (3)ウィックおよびループヒートパイプ製造低コスト化

研究者(長野方(ホウ)星(セイ)講師)の略歴

 1998年  慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業
 2000年  慶應義塾大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了
 2003年  慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学博士課程修了
 2001年  文部科学省宇宙科学研究所リサーチアシスタント
 2003年  慶應義塾大学理工学部SD工学科訪問研究員
 2006年  宇宙航空研究開発機構宇宙航空プロジェクト研究員
 2005年  NASAゴダード宇宙飛行センター客員研究員
 2008年  名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻講師
 2009年~ 名古屋大学大学院工学研究科附属複合材工学研究センター講師(兼任)

5.お問い合わせ先

(本プレス発表の内容についての問い合わせ先)
名古屋大学大学院・工学研究科・航空宇宙工学専攻・講師・長野方星
TEL: 052-789-3281  FAX: 052-789-3280
E-mail: nagano@nuae.nagoya-u.ac.jp

(NEDO制度内容についての一般的な問い合せ先)
 NEDO 研究開発推進部 若手研究グラントグループ 望月、松崎、千田、長崎
 TEL: 044-520-5174  FAX: 044-520-5178

(その他NEDO事業についての一般的な問合せ先)
 NEDO 広報室 坂本、萬木(ゆるぎ)、田窪
 TEL: 044-520-5151