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Press Release

導電性を自由にデザインできる樹脂複合材料製造方法を開発

―静電吸着力を利用して低コスト化・製造時間短縮も可能に―
2011年7月6日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人豊橋技術科学大学

 NEDOの産業技術研究助成事業(若手研究グラント)の一環として、豊橋技術科学大学の武藤浩行准教授は、革新的な複合粒子製造方法を用いて、カーボンナノチューブ(CNT)添加量が従来の1/100(注1)でも導電性を有するCNT樹脂複合材料(注2)の開発に成功しました。溶液中で混合するだけで静電吸着力(注3)によりCNTを樹脂粒子表面上に吸着できるため、ごく少量のCNTで高い導電性を持たすことができるだけでなく、吸着量を制御することによって材料の導電性を自由にデザインすることもできます。コストと製造時間も従来の導電性樹脂製造方法の1/10程度に低減されます。
 さらにこの製造方法は粒子表面が帯電すれば金属、セラミック、高分子等、様々な組み合わせの機能性複合材料を作製することが可能なため、触媒、化粧品等への展開も期待できます。

  • CNTを添加した樹脂(PMMA:アクリル)複合材料の破断面>(CNTが網目状に樹脂粒子表面を覆っている)
    CNTを添加した樹脂(PMMA:アクリル)
    複合材料の破断面
    (CNTが網目状に樹脂粒子表面を覆っている)

(注1) 絶縁性であるセラミックや高分子材料に導電性を付与しようとした場合、添加する導電性原料が材料内で連結するような構造を導入する必要があり、従来法では、添加量が重量割合で1%以上だったところ、わずか0.01%のCNT添加で導電性を持たせることができました。
(注2) CNTを樹脂に添加した複合材料。CNTが持つ高い導電性を活かし、電子部品を製造するクリーンルーム内での帯電防止用途として製品化されています。また、材料の弾性や靭性が高まることも特徴です。本製造方法は導電率を自由に制御できるだけでなく、更にその性能を向上できるため、ディスプレイ用透明導電膜(ITO代替)、蓄電池電極、半導体デバイスといったエレクトロニクス産業の中核分野への展開も期待できます。また、この樹脂複合粒子は、一般的なプラスチック製品の製造方法である射出成形や押し出し成形にも対応可能です。
(注3) CNTと母材となる樹脂粒子をそれぞれ異なる電解質溶液を用いてプラス・マイナスに帯電させ「静電引力」で吸着させる方法。電解質濃度等を制御することにより粒子表面の帯電量を変化させ、吸着量を制御することが可能です。


1.背景

 新規材料の開発において異種物質同士の複合化は、重要な手法の一つです。特に添加物としてナノ物質を用いることで、従来の特性を凌駕する新規な特性を引き出すことができます。しかしながら、従来の複合材料開発手法は、原料となる複数種の粉末を機械的に攪拌・混合するため、できあがった複合材料の特性を完全に制御することができません。たとえば、絶縁性であるセラミックや高分子材料に導電性を付与しようとした場合、添加する導電性原料が材料内で連結するような構造を導入する必要がありますが、多くの場合、添加する導電物質が分散されずに局所的に塊となって存在してしまい、導電性を発現させるためには多くの添加量を必要とします。このため、導電性といった機能が付与できても多量な添加物の影響で機械的特性が低下するなど、本来必要とされる材料特性に影響を与えることもあります。また、高価な原料を大量に添加する場合もあるため、コストの面でも、最小限の添加量で必要な材料特性が得られるような機能性材料の製造方法が望まれていました。

2.成果の特徴

 豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系の武藤浩行准教授は、CNT(カーボンナノチューブ)と母材となる樹脂粒子をそれぞれ異なる電解質溶液を用いてプラス・マイナスに帯電させ、その静電相互作用により、CNTを均一に樹脂粒子上に吸着させるという、革新的な複合粒子製造方法を開発しました。得られた複合粒子を原料とすると、ナノ複合材料の組織を任意に制御することができるため、従来品と比較してCNTを重量割合でわずか0.01%程度(従来の1/100)添加するだけで導電性を持った樹脂材料を作製することができました。この製造方法は特殊な混合・攪拌装置を一切使用しないので、従来の導電性樹脂製造方法に比べてコスト、製造時間ともに1/10程度になるため、高分子やセラミックスの特性を損なわせることなく導電性を付与した複合材料を低コストで大量に提供することが可能となります。

  • 複合粒子製造装置のプロトタイプ
    複合粒子製造装置のプロトタイプ

(1)CNT添加導電性樹脂複合材料

 これまでに、導電性物質としてCNTが用いられ多くの研究例がありますが、添加量を1wt%以上必要としていました。この手法では、これらの例と比較して極めて微量の添加量(1/100)で導電性を付与することに成功しました。また、添加量に依存して導電率を系統的に変化させることが可能となったことから、帯電防止をはじめとして、導電材料を設計することが可能となりました。また、添加量を少なくできる利点を生かして、資源枯渇の危機が叫ばれるITOに変わる透明導電性材料の代替候補としても期待され、実際に透明アクリル樹脂であるポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子表面にCNTを静電吸着させ、均一な網目状に覆うことができました。さらにこの粒子を用いて作製した複合材料の破面を観察すると、PMMA界面にCNT導電チャンネルを導入することができました。ごく少量のCNT添加量でも導電性を付与することができるため、透明性、樹脂としての特徴を兼ね備えた導電性樹脂材料を作製することが可能です。

(2)ナノ構造の制御

 本手法では、材料中のナノ構造を任意に制御することができるため、CNTなどの導電性物質を添加物に選べば電気的特性を、また、高熱伝導材料を添加物とすることで高熱伝導性を制御することが可能です。材料内部にナノチャンネルを導入することができるために、極めて少ない添加量で必要な特性を効果的に付与することができます。

(3)様々な材料への拡張

 母材となる粒子と、付与したい機能を持つ添加物の帯電量を電解質溶液で制御するだけであることから、材料種を選ばず汎用性が高いことも大きな特徴です。例えば、セラミック(アルミナ)造粒粒子表面へCNTを静電吸着させることも可能であり、これを焼結して導電性を持つセラミック材料を開発することにも成功しました。このような粉末冶金的な合成手法以外にも、高分子原料チップにCNTをはじめとしたナノ物質を複合化した複合粒子を原料として、従来の射出成形のような混練を行うことで、更に分散性の高いナノ高分子複合材料を製造することも可能です。このように、高分子、金属、セラミックスを問わずこの製造方法を適用することができるため、材料開発の新たな、キーテクノロジ-になると期待できます。

  • セラミック造粒粒子表面に静電吸着したCNT(繊維状の部分)
    セラミック造粒粒子表面に静電吸着したCNT
    (繊維状の部分)

3.今後の展開(予定)

 今後は、更に高純度の金属製CNTや金属ナノファイバー等を添加物として更に添加量を少なくした透明導電性材料の開発を進める予定です。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
国立大学法人豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系 准教授 武藤浩行
TEL 0532-44-6798 FAX 0532-48-5833
E-mail: muto@ee.tut.ac.jp

(NEDO制度内容についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 技術開発推進部 若手研究グラントグループ 鍵屋、松﨑
TEL: 044-520-5174

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 田窪
TEL: 044-520-5151     E-mail: nedo_press@ml.nedo.go.jp