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Press Release

アルツハイマー病の診断方法が大きく前進

―国際連携による標準診断法の確立へ―
2011年7月20日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 村田 成二

 NEDOは、2007年度よりアルツハイマー病研究プロジェクト(J-ADNI)を実施し、全国38施設で600人の高齢被験者の協力のもと、臨床研究及び技術開発を進めています。同様に、アルツハイマー病の早期診断を目指して、世界各国で研究開発が進められており、国際連携による標準診断法の確立を目指しています。
 今回、J-ADNIのアミロイドPET画像診断コア・リーダーである東京都健康長寿医療センター研究所付属診療所 石井賢二所長らの研究グループは、J-ADNIの研究により得られたデータと各国のデータを解析した結果、アルツハイマー病を発症する危険因子である特定の遺伝子型と脳内でのたんぱく質の蓄積との相関関係を初めて見出しました。今後、アルツハイマー病の早期診断に向けて、画像情報に併せ遺伝子型を考慮した診断技術、治療法の開発が重要となってくることが示唆されます。
 なお、この成果は、7月17日からフランスで開催された国際アルツハイマー病カンファレンス(ICAD2011)で報告されました。また、今年度の学会トピックスの1つとして選定され、この研究が超早期アルツハイマー病の画像診断・バイオマーカー・臨床指標の国際標準化に大きく貢献したことが賞賛されています。

1.研究成果概要

 米国で2005年よりAlzeheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)と命名された国家規模の臨床研究が開始されました(US-ADNI)。現在、日本(Japanese-ADNI)、欧州(EU-ADNI)、豪州(AIBL:The Australian Imaging, Biomarker & Lifestyle Flagship Study of Ageing)で同様のプログラムが進められ、アジア、南米諸国でも参画に向けて検討が進められています。ADNIは、多数の高齢被験者に対し、「磁気共鳴画像法(MRI)を用いた脳容積測定、陽電子放出断層法(PET)による機能画像評価」などの神経イメージング」と、「血液・脳脊髄液などのバイオマーカー測定」を2つの柱として、記憶検査などの臨床指標と共に、継時的に計測を実施し、軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病(AD)への進行を正確かつ客観的に評価する技術を確立させ、根本治療薬の開発に役立てるものです。心理試験、生化学検査、画像診断の撮像法、画像処理技術等の統一でデータの互換性を確保しながら、国際連携による標準診断法の確立を目指しています。
 今回の研究では、PET・プローブ(※1)として11C-PiB(炭素放射性同位体でラベルしたPittsburgh compound B;PiB)を用い、脳内のAβ蛋白の蓄積をモニターしました。日本人高齢健常者、軽度認知障害患者、AD患者を対象にアポリポ蛋白E(ApoE)の遺伝子型(※2)と共にAβ蛋白の脳内蓄積を計測し、US-ADNI、オーストラリア(AIBL)のデータを比較、解析(※3)したところ、ApoEのε4の遺伝子型は人種を超えたAβ蛋白脳内蓄積の危険因子でも有ることが判明しました。また、本遺伝子型を保有する高齢者被験者では、保有しない場合に比べ、より早期にAβ蓄積が始まることを見出しました。今後、ADの早期診断、治療に向けて、画像診断情報に併せ遺伝子型を考慮した技術開発が重要となってくることが示唆されます。
 本報告は、石井賢二所長(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所附属診療所所長「アルツハイマー病総合診断体系実用化プロジェクト」アミロイドPET画像診断コア・リーダー)が国際アルツハイマー病カンファレンス(ICAD 2011)で報告しました。ICAD2011は、米国アルツハイマー協会が主催する、アルツハイマー病研究関連の国際学会では最大且つ最も権威があり、本年はフランス(パリ)で開催されました。例年学会のトピックスが冒頭にプレスリリースされており、今回NEDOプロジェクトの成果がそのうちの一つとして選ばれました。世界-ADNIとしてアルツハイマー病の診断に関する研究を国際連携で進めた画期的な成果が賞賛されております。

  • 発表タイトル:“Age, APOE ε4, and Ethnic Effect on [C-11] PiB in Multi-national ADNI Studies— Direct Comparison of J-ADNI, US-ADNI and AIBL Data —”
  • 研究者リスト:Kenji Ishii, Muneyuki Sakata, Keiichi Oda, Jun Toyohara, Kiichi Ishiwata, Michio Senda, Kengo Ito, Ryozo Kuwano, Takeshi Iwatsubo, J-ADNI, ADNI, and AIBL Study

2.NEDOプロジェクトについて

 NEDOで実施している、「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発(創薬・診断分野)/アルツハイマー病総合診断体系実用化プロジェクト:根本治療の実現に向けて」(プロジェクト・リーダー:東京大学 医学部 岩坪威教授)は、2007年度より米国ADNIとの国際連携、厚生労働省の協力の下、J-ADNIとして実施しております。国内有数の研究機関(※4)と38の代表的臨床施設が一体となり、製薬企業コンソーシアム(※5)、画像コンソーシアム(※6)の協力の下で研究を展開しております。国際連携による標準診断法の確立を目指すとともに、日本独自の研究、技術開発を図りながら、この困難な疾患の診断・治療のため研究を展開しております。

3. お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO バイオテクノロジー・医療技術部
担当: 澤田、中村、矢野  TEL : 044-520-5231

(その他NEDO事業についての一般的な問合せ先)
NEDO 広報室
担当: 田窪、遠藤  TEL: 044-520-5151

【用語解説】

  • 1: PET・プローブとは、脳内に蓄積したAβに結合する低分子化合物であり、予め放射性同位体でラベルすることで、脳内のAβ蓄積部位をPET装置で検出することが出来ます。
  • 2: ApoE遺伝子は多型(2, 3, 4型が存在)を持ち、ApoEε4の遺伝子型は、ADの強力な危険因子として知られています。
  • 3: PET装置、撮像法、撮像条件、画像処理、PET・プローブを各国ADNIと統一し、画像データの互換性を確立し、今回のような国、地域、人種を超えた診断、病因解析研究を可能としております。日本国内においてPET画像診断技術の標準化は本プロジェクトで初めて達成されており、精神・神経疾患の診断、治療、病因解析で注目されている画像診断、解析による成果が期待されております。
  • 4: 研究機関:東京大学、国立精神・神経医療研究センター等、全10機関
  • 5: 製薬企業コンソーシアム:アステラス、エーザイ他、全11社
  • 6: 画像コンソーシアム:GEヘルスケア・ジャパン、東芝メディカルシステムズ他、全7社