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Press Release

超小型・大出力SiCインバータを開発

-体積0.5リットル、15kWのモーターを駆動-
2011年9月6日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構

 NEDOの次世代パワーエレクトロニクス技術開発の研究委託先である技術研究組合「次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)」は、同一パワーとしては世界最小の完全空冷オールSiC(※1)インバータを開発、出力15kWのモーターの連続動作に成功しました。このインバータは体積500cm3、出力パワー密度(※2)は30 kW/リットルの超小型で、産業用モーターの制御はもちろん、スマートコミュニティの実現に必要な電力変換や、電気自動車の小型化・軽量化・効率アップなど幅広い分野での利用が見込めます。このプロジェクトでは、引き続き開発を進め、さらに高いパワー密度の実現を目指します。

  • 1. シリコンカーバイド(炭化ケイ素)。ケイ素と炭素の化合物で、これを用いて作った半導体デバイスを従来のシリコン半導体デバイスに比べると、内部の電力損失が1/100と小さく、高い周波数・高い温度(300℃程度まで。Siの場合は100℃程度まで)で使用することができる。
  • 2. インバータの単位体積あたり変換できる電力の値。これまでの最大値は、同じくFUPETが報告した20 kW/リットル(CEATEC 2010)。

  • 図1 汎用インバータとの比較
    図1 汎用インバータとの比較
  • 図2 開発したインバータ
    図2 開発したインバータ

1.背景

 太陽光や風力による発電や、電気自動車の普及をはじめとする電力利用の高度化は、資源枯渇や地球温暖化解決の切り札です。その中で、電力を望ましい電圧や周波数に変換する電力変換器(インバータ)が大きな役割を果たします。現在は、インバータに使われる半導体デバイスのほとんどが、材料にシリコン(Si)を用いたものです。材料にSiCを用いたデバイスは、現在開発中の新たなデバイスですが、内部の損失がSiの1/100と小さく、300℃程度までの高温で動作できるなど、いろいろな特性でSiデバイスを凌ぐので、インバータの効率を大きく向上させるものと期待されています。NEDOでは、SiCデバイスやその応用機器の本格普及を目指して、材料からデバイス、インバータ機器の開発に至る幅広いプロジェクトを推進しています。その中で、技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)(下村 節宏理事長)は、NEDOからの研究委託を受け、2009年より、小型で高性能なSiCパワー半導体デバイスを使用した電力変換器の実現と普及に向けた技術開発を推進してきました。

2.今回の成果

 完全空冷のオールSiC三相インバータのプロトタイプ(モデル名”MAINA”)を開発するとともに、15 kWの三相モーターを実際に連続動作させ、出力パワー密度30 kW/L (または30 W/cc)の実証に成功しました。
 このインバータはすべてのパワー半導体デバイスに従来のSiに代わりSiCを用いたものにしています。体積は僅か0.5リットルほどで、Si-IGBT(※1)を用いた市販の汎用インバータと比べると1/10~1/20のサイズです(図1)。
 今回の結果は、体積を維持したまま、定格出力を初代モデル(”TOPPA”, CEATEC 2010で展示)に比べて50%向上させたものです。
 技術上のポイントの一つは、小さい冷却器で高い冷却性能を得るために、パワーデバイスが最大200℃で動作し続けられるように内部のモジュール(パワーモジュール)を設計した点にあります。このように200℃という高温で動作できるのが、SiCデバイスならではの特長で、これが大幅な小型化ができる理由のひとつです。15 kW出力時の電力変換効率は約99%(※2)で、これもまた世界トップレベルです。今回の高出力実負荷動作性能を達成した技術上のポントは、次の3点です。

  1. 実測とよく合う高確度な熱シミュレーションの実施
  2. 誤動作防止回路を内蔵したパワーモジュールの開発
  3. 高耐熱かつ低損失なSiC-JFETの採用
 このような大幅な小型化によって、これまで適用できなかったさまざまな用途に、インバータが使われていくものと考えています。
 このリリースの詳細は、9月10日から米国で開催される国際会議ICSCRMで報告します。

3.今後の予定

 引き続き、前記の特徴を持つSiCインバータの設計の高度化を進めてさらなる小型・大容量のインバータの実現を目指すとともに信頼性強化を進めます。これにより、スマートコミュニティやEVなど、多くの応用分野へ展開できる技術を確立し、CO2排出量を削減したグリーンな社会の実現に貢献するよう、努力していきます。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部  担当: 芦田
TEL: 044-520-5210 E-mail: ashidasmo@nedo.go.jp

FUPET 研究センター 担当: 谷本、山田
TEL: 03-5512-7144 E-mail: t-yamada@fupet.or.jp


(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当: 田窪、遠藤
TEL: 044-520-5151 E-mail: nedo_press@ml.nedo.go.jp


【用語解説】

  • 1. 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor)。材料にSiを用いたパワーエレクトロニクスデバイスの中では最も大きい電力の制御に適したもの。
  • 2. 駆動回路の損失は含まない