本文へジャンプ

Press Release

材料性能を飛躍的に高めるナノ粒子高速大量合成装置を開発

―10t/年の連続合成可能な超臨界水熱合成プロセスを確立―
2012年2月8日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東北大学
財団法人化学研究評価機構

 NEDOの「超ハイブリッド材料技術開発プロジェクト」において、東北大学阿尻雅文教授と(財)化学研究評価機構(JCII)は、有機材料と無機材料のそれぞれ固有の優れた特質を両立させる材料創成の鍵となるナノ粒子を合成できる超臨界連続水熱合成(※)装置の開発に成功しました。この装置により、10t/年というナノ粒子の高速大量連続合成が可能となりました。
 合成したナノ粒子を用いた絶縁高熱伝導シート材料は、世界最高レベルの熱伝導率(従来比10倍)を達成しており、パワーデバイスの熱対策への貢献が期待されます。
 この成果は、2012年2月15日~17日に開催されるnano tech 2012(東京ビッグサイト)で発表します。

  • 超臨界水熱合成
    374℃、220気圧以上の水中で、ナノ粒子を合成する方法。この状態では、有機分子も、無機分子も、水と任意の割合で混合できるため、高濃度で有機修飾ナノ粒子を合成できます。

  • 図1:ナノ粒子高速大量合成装置
    図1:ナノ粒子高速大量合成装置

1.背景

 自動車や電気・電子分野における材料開発では、年々高度な特性が求められてきており、単一の材料・単一機能を対象とした改良研究では不十分となってきています。そこで最近では、成形性、軽量性などに優れる「有機材料」と、耐熱性、熱伝導性、絶縁性などに優れる「無機材料」を混合し、お互いの良い特性の両立を実現する「超ハイブリッド材料」が求められています。
 しかし、有機材料に無機材料を単純に混ぜるだけの従来技術では、無機材料の性質が付加されるものの、有機材料の長所が失われる、いわゆる「トレードオフ(相反機能)」が生じていました。この解決方法として、ナノ(10億分の1)サイズの無機粒子の周りを有機材料でコーティング(表面修飾)し、有機材料内に高濃度で配置(分散)させる手法が研究されておりますが、その工業的大量合成法は確立しておりませんでした。また、従来法では合成の際に「高価な修飾剤・触媒」や「大量の有機溶媒」が必要であり、これらを必要としない環境適合・省エネルギー型の高速大量連続合成プロセスの開発が望まれていました。
 そこでNEDOでは、2008年から4年間にわたり「超ハイブリッド材料技術開発プロジェクト」を実施し、有機無機超ハイブリッド材料の実用化に向けた技術開発に取り組んできました。

  • 図2:超ハイブリッド材料の概念図
    図2:超ハイブリッド材料の概念図

2.今回の成果

  • 世界初-連続式超臨界水熱合成装置
  • 10t/年の有機修飾ナノ粒子生産を達成
  • 高効率な熱回収システムにより、省エネルギー運転が可能
  • 30wt%以上の高濃度の原料スラリーの供給及び反応後の連続回収が可能

 今回、高温・高圧の水(超臨界水)を反応場として用いた「超臨界水熱合成法」を用い、無機粒子表面に有機修飾を行う、ナノ粒子の高速・大量連続合成装置の開発に成功しました。超臨界水を用いることで、無機材料と有機修飾材料を任意の割合で高濃度混合することが可能となります。また、有機修飾剤として油脂等の安価な原料を用いることができること、水そのものが触媒として作用するため新たな触媒が必要ないこと、及び合成されたナノ粒子が有機相に抽出・濃縮されるため取りだしが容易であることなど、省エネルギーで環境負荷の少ないプロセスが実現できました。本プロセスは、(水)酸化物、複合酸化物、硫化物、(複合)金属等、幅広い材料への応用が可能であり、汎用的な有機修飾ナノ粒子合成法としても期待されます。 本装置は、プロジェクト終了後、(株)アイテックから販売されます。

[本成果の応用例]

-半導体パワーデバイス用材料や半導体用封止材料の飛躍的な高機能化に貢献-
 パワーデバイス用材料では、その熱対策として、高熱伝導のフィルム・シート・マット材が求められており、高熱伝導を有するBN粒子*1を高濃度充填したハイブリッド材料の開発が急務です。しかし、従来、BNの充填率を上げると、粘性が極めて高くなり、フィルム・シート状の成型加工は不可能でした。また、ボイド*2の発生により、熱伝導率のみならず、絶縁破壊電圧が急激に低下する問題がありました。そこで本装置を用いBN粒子の有機修飾を行ったところ、高充填率下においても、粘性は飛躍的に低下し、ボイド生成も抑制されました。これにより、高熱伝導率を有するフィルム状シートの連続成型が可能となり、耐絶縁電圧40-50kV、熱伝導度20-40W/m・Kを実現させることができました(JCII・電気化学工業(株)・日東電工(株)・日立化成工業(株))。
 また、本装置を用いて合成した有機修飾アルミナ粒子は、80vol%*3もの高濃度下においても流動性を有し、半導体を保護する封止材料として用いることができます。封止材料開発の長い歴史の中、10年間の研究により熱伝導率が1W/m・Kから3W/m・K程度まで向上していましたが、本プロジェクトではわずか4年間で、熱伝導率を10W/m・K以上に飛躍的に向上させることができました(JCII・住友ベークライト)。

  • 図3:有機修飾ナノ粒子を利用した高熱伝導材料とその特性比較
    図3:有機修飾ナノ粒子を利用した高熱伝導材料とその特性比較

3.今後の予定

 今後、開発した装置の更なるスケールアップを行いつつ、エネルギー効率の向上、廃水リサイクルの達成を目指します。また、完成したプロセスを使用して、多くの相反機能材料の開発に資する有機修飾ナノ粒子の合成を行ない、自動車や電気・電子産業のデバイス機能向上に貢献していきます。
 なお本プロジェクトの成果である超臨界水熱合成技術は、インキュベーションや人材育成の場として平成24年4月に結成される、東北大学を核とした「超臨界ナノ材料技術開発コンソーシアム」に引き継がれ、日本発の新たな産業技術基盤構築へ向けた取り組みが行われていきます。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
国立大学法人東北大学 教授 阿尻雅文 TEL 022-217-6321
財団法人化学研究評価機構 中西   TEL 03-5823-5521
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当: 田谷、沖、一色 TEL 044-520-5220
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当:田窪、遠藤  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

*1:BN粒子:窒化ホウ素のこと。黒鉛と同じ結晶構造を持ち、非常に高い耐熱性、化学的安定性、熱伝導特性を有する粒子。
*2:ボイド:空洞のこと。材料の不良現象の1つ。
*3:80vol%:体積あたりのアルミナ粒子体積が80%であることを示す。