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Press Release

印刷可能な有機TFT液晶ディスプレイの駆動に成功

―高性能フレキシブルディスプレイの早期実現へ―
2012年2月14日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人大阪大学
国立大学法人広島大学
大阪府立産業技術総合研究所
株式会社クリスタージュ

 NEDOのナノテク先端部材・部材実用化研究開発プロジェクト※1の一環として、大阪大学の竹谷純一教授をリーダーとしたグループ※2は、溶液を塗る簡便なプロセスで、世界最高の性能をもつ有機TFT※3を用いた液晶ディスプレイの駆動に成功しました。
 この液晶ディスプレイは、有機物の半導体を塗布すると同時に結晶化する方法を利用して作成するため、印刷による簡便・低コストの製造を可能にします。また従来の性能をはるかに超える高移動度※4の有機TFTを使うことで高解像度化が実現できます。
 この成果を活用することにより、ロールスクリーンテレビや電子ペーパーなどに利用できる低コストで薄型・高性能なフレキシブルディスプレイなどの開発促進が期待されます。
 2012年2月15日~17日に開催されるnano tech 2012(東京ビッグサイト)で、このディスプレイを展示します。

※1:革新的な高性能有機トランジスタを用いた薄膜ディスプレイ用マトリックスの開発
※2:大阪大学の竹谷純一教授、広島大学の瀧宮和男教授、大阪府立産業技術研究所の宇野真由美主任研究員、株式会社クリスタージュらのグループ
※3:Organic Thin Film Transistor。活性層に有機半導体を用いる薄膜トランジスタ。
※4:移動度は半導体の中に注入された電子キャリアの動きやすさを表す。現在の液晶ディスプレイに用いられているアモルファスシリコンTFTの性能はおよそ1cm2/Vs。

  • 図1 新規に開発した有機TFT液晶ディスプレイ
    図1 新規に開発した有機TFT液晶ディスプレイ

1.背景

 有機物半導体材料は、現在主に用いられているシリコンなどの無機半導体材料と比ベて、簡便かつ比較的低温での作製が容易であり低コストとなりうること、より薄型にできること、またフレキシブルディスプレイなどのユニークな用途も期待できることから、次世代トランジスタなど基本エレクトロニクス素子ヘの応用開発研究が盛んに行われています。しかしながら、実際に薄型ディスプレイを高速で制御する性能(移動度)と塗布法・印刷法といった簡便・低コストの成膜方法を両立することは困難で、この問題を解決する革新的な技術の開発が望まれていました。

2.今回の成果

(1)低コストかつ高速の有機エレクトロニクス

 典型的な塗布型有機トランジスタの性能(0.1-1 cm2/Vs)を1桁も上回る10 cm2/Vsのキャリア移動度を有する有機TFTアクティブマトリックス※5を開発し、実際に液晶パネルの駆動に成功しています。この移動度は非常に高い値であり、高速の有機エレクトロニクス素子ヘの応用に道を拓くものです。例えば、ディスプレイパネルに利用した場合、従来のアモルファスシリコン材料を用いた場合より、1桁速い動画が表示可能となります。

(2)新規印刷プロセス「塗布結晶化法」による高移動度有機半導体のパターニング

 溶液から有機半導体膜を形成する際に、有機半導体分子が規則正しく配列した結晶構造を実現する新しい成膜プロセス「塗布結晶化法」を開発しました。これは一度に高移動度の有機半導体をパターニングする方法で、溶液から有機半導体分子を析出する際に、配列しやすい分子設計を行った新規有機半導体材料「アルキルDNTT※6」を用いることにより実現しました。

  • 図2 塗布結晶化法
    図2 塗布結晶化法
  • 図3 本研究で開発した「塗布結晶化法」を用いて作製した高性能の有機TFTアクティブマトリックス。均質な有機結晶薄膜が画素の位置にパターニングされています。
    図3 本研究で開発した「塗布結晶化法」を用いて作製した高性能の有機TFTアクティブマトリックス。均質な有機結晶薄膜が画素の位置にパターニングされています。

(3)技術的詳細

 竹谷純一教授らは2003年に有機半導体の結晶を用いたトランジスタを開発し、これまでよりも格段に高い性能を実現することを見出していたため、実用化に有利な溶液塗布法によって有機半導体結晶を作製する方法を検討してきました。2011年には、本プロジェクトの成果として、広島大学の瀧宮和男教授らが開発した「アルキルDNTT」を用いて、100℃程度にした溶液から有機半導体結晶を析出させてきわめて高性能の有機TFTを開発しました。今回は、塗布結晶化法を利用して、パネル全面に一度にTFTを定められた位置にパターニングする手法を開発し、液晶ディスプレイ(対角画面サイズ2.3インチ、画素数30x23)の駆動にも成功しました。
 得られた性能は、現在の液晶薄型ディスプレイに用いられるアモルファスシリコンの性能を10倍程度も上回る上に、印刷法などの大面積・低コストの生産が可能となるため、次世代の薄型ディスプレイやフレキシブルディスプレイのアクティブマトリックスとしての応用に期待がもたれます。さらに、有機EL素子との組み合わせにより、大画面の高性能フレキシブルディスプレイの早期実現にもつながり、高速の有機エレクトロニクス素子の実用化への道を示したと言えます。

3.今後の予定

 今後、開発したアクティブマトリックスパネルの高精細化と有機EL素子と組み合わせたディスプレイの開発を行います。また、有機材料開発からパネル部材、装置開発、デバイス開発を行う企業とのコンソーシアム「ハイエンド有機半導体研究開発・研修センター」を大阪大学内に組織し、高速の有機エレクトロニクスデバイスの実用化研究を加速します。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
国立大学法人大阪大学 産業科学研究所 教授 竹谷純一
TEL:06-6879-8400, 080-5484-2760, FAX:06-6879-8404  E-mail: takeya@sanken.osaka-u.ac.jp
国立大学法人大阪大学 産業科学研究所 広報室 松本紀子
TEL&FAX 06-6879-8524 (内線8524)
広報アドレス kouhou@sanken.osaka-u.ac.jp
国立大学法人広島大学 社会連携・広報・情報室 広報グループ 岡田智代
TEL:082-424-6131 E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp
大阪府立産業技術総合研究所 研究調整課 森田均
TEL:0725-51-2581 FAX:0725-51-2513
株式会社クリスタージュ 代表取締役 姓本憲和
TEL:06-6394-8700 FAX:06-6394-9001 E-mail:norikazu.shomoto@crystage.com
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部担当: 桐原、沖、佐藤(義) TEL 044-520-5220
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当:田窪、遠藤  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

※5:1つの画素に1個以上の動作ON/OFFコントロールが可能なトランジスタ等が配列された構造で、目的の画素のみを確実に点灯・消灯させられる。現在使われている「液晶ディスプレイ」等で採用されている方式である。
※6:アルキルDNTT:ジナフトチエノチオフェン(DNTT)分子の両末端に、アルキル鎖を付加した構造をもつ分子。アルキル鎖は、溶媒への溶解性を高めるとともに、分子の凝集性を高める働きがある。