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Press Release

将来のネットワークの省電力化へ前進

―「次世代高効率ネットワークデバイス技術プロジェクト」で省電力技術を実現―
2012年3月1日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
アラクサラネットワークス株式会社
財団法人国際超電導産業技術研究センター
独立行政法人産業技術総合研究所
日本放送協会
一般財団法人光産業技術振興協会

 NEDOが、2007年度から実施してきた「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発プロジェクト」(*1)が今年度で終了、以下の成果を達成しました。

  1. 空冷動作する超小型100Gbps光トランシーバー(*2)を世界で初めて開発し、回路基板間の100Gbps接続を実現。
  2. 高速低電力の160Gbps光LAN-SAN(*3)システムを構築することにより、2チャンネルの非圧縮スーパーハイビジョン(*4)信号の配信実験に世界で初めて成功。
 これらの成果の一部は2012年3月4日から8日まで米国ロサンゼルスで開催されるOptical Fiber Communication Conference and Exposition and the National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC)で展示される予定です。
 
 なお、このプロジェクトには技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)(*5)、アラクサラネットワークス株式会社、財団法人国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)、日本放送協会(NHK)、一般財団法人光産業技術振興協会(OITDA)(順不同)が参加しています。

(*1)次世代高効率ネットワークデバイス技術開発プロジェクト:2007年度~2012年2月29日まで実施。プロジェクトリーダーは東京大学 浅見徹教授。
(*2)光トランシーバー:光ファイバを使って回路基板間や装置間を接続するときに、光ファイバと基板あるいは光ファイバと機器の間にて信号を中継する部品。電気信号から光信号への変換、また、光信号から電気信号への変換の送受信処理を同時に行う。
(*3)LAN-SAN:家庭内、オフィス、データセンタ内などの狭いエリアで使われるネットワーク(LAN:Local Area Network)、および、大規模な記憶装置内や、記憶装置-コンピュータ間の接続に使われる高速なネットワーク(SAN:Storage Area Network)の総称。
(*4)スーパーハイビジョン:ハイビジョンの16倍の画素(7680×4320画素)を持つ超高精細映像方式
(*5)技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 当該プロジェクト参加機関:富士通株式会社、日本電気株式会社、三菱電機株式会社、株式会社日立製作所、日本電信電話株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所(2011年度)(順不同)

1.プロジェクト概要

 高速インターネットやスマートフォンの普及に伴い、ネットワーク上での通信量が急速に増加しています。これに伴い、LANスイッチやルーターなどのネットワーク機器の消費電力は、2025年には、2006年の13倍に急増し、国内電力消費量の8.5%がネットワーク機器により消費されると予想されています。
 一方、ネットワーク機器の性能に関しては、電子(電気信号)処理の処理速度の上限が見えてきており、さらなる高速化を図るには、光技術を導入することが急務になっています。
 こうしたなかで、NEDOでは、2007年から5年間にわたり「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発プロジェクト」を実施し、2012年2月29日に終了しました。このプロジェクトでは、日本が高い技術力と国際競争力を持つ光デバイス技術を中心に、低消費電力で高性能なデバイス共通基盤技術開発と、開発した技術を統合して動作させるシステム化技術開発に取り組んできました。

2.成果概要

2-1.空冷動作可能な100Gbps超小型光トランシーバーの開発

 電子機器、特に複雑な処理をするルーターなどでは、多数の回路基板をバックプレーンとよばれる接続基板を介して電気信号により接続をして処理を行ってきました。しかし、電気信号を用いた接続は通信速度に限界があり、また、消費電力も多くなるため、光トランシーバーを用いて、電気信号を光信号に変換した後に、光信号により回路基板を接続する方式が実用化されはじめています。しかし、例えば100Gbpsの光信号で基板間を接続する場合、100Gbpsの光トランシーバーは、手のひら程度の大きさであるか、あるいは、小型のものは水冷による冷却が必要でした。本プロジェクトでは25Gbps×4個構成の面出射型レーザ、超高速受光ダイオード、インターフェイスCMOS-LSIそれぞれの消費電力低減を図り、消費電力がわずか2Wで、空冷にて100Gbps動作する、実装面積が約1.2mm2と指先に乗るほどのサイズの、超小型光トランシーバーを開発しました。また、開発した超小型光トランシーバーの動作を実証するため、エッジルーター※1に開発した超小型光トランシーバーを実装して、動作実証しました。 開発した超小型光トランシーバーは、空冷動作が可能なため、これまでの大掛かりな冷却装置が不要となり、光トランシーバーの適用範囲が飛躍的に拡大することが期待できます。

  • 図1:100Gbps基板間光接続(光バックプレーン)実証システム(左)および超小型100Gbps光トランシーバー(右)
    図1:100Gbps基板間光接続(光バックプレーン)実証システム(左)および超小型100Gbps光トランシーバー(右)

2-2.非圧縮スーパーハイビジョン配信可能とする超高速光LAN-SANシステムの開発

 映像の制作現場ではネットワークを介して記憶装置に格納された映像信号を読み出し編集することが一般的になっています。しかし、将来の超高精細映像であるスーパーハイビジョンを制作する場合、1秒あたり72Gbitの膨大な映像データを、複数の映像を切り替えながら配信する必要があります。このプロジェクトでは、160Gbps OTDM方式※2の光ネットワークを採用して、2系統のスーパーハイビジョンデータをネットワーク上で切り替えて配信するため、デバイス、モジュール、システム開発を実施し、2チャンネルの72Gbps非圧縮スーパーハイビジョン信号の配信動作に世界で初めて成功しました。
 スーパーハイビジョン配信において、開発した技術は以下です。

  • ハイブリッド集積化OTDM-NIC※3: 40Gbpsイーサネットシリアル光トランシーバー、量子ドット高効率半導体光増幅器に超高速全光スイッチを組み合わせて160Gbpsの超高速動作を達成。
  • 全光スイッチ:小型、低挿入損失、低電力励起パワーが特徴の反射型ISBT※4をベースに低消費電力の光ゲート※5を開発。
  • スーパーハイビジョン収容システム:160Gbps光信号へのスーパーハイビジョン信号を変換する技術を開発。

  • 図2:超高速光LAN-SANシステムの構成図
    図2:超高速光LAN-SANシステムの構成図
  • 図3:160Gbps超高速光LAN-SANシステムによるスーパーハイビジョン配信実験
    図3:160Gbps超高速光LAN-SANシステムによるスーパーハイビジョン配信実験

2-3.プロジェクトにおけるその他の成果

(1)LAN-WAN間のシームレス相互接続技術
 複数のLAN間を、WANを経由して接続するLAN-WAN間のシームレス相互接続技術を開発しました。開発した技術では、次世代のLAN-SANの規格として有望な40Gbpsシリアルイーサネットを想定して、40G LAN-WAN信号変換技術、40GbEインターフェイス変換技術、小型40Gシリアル光トランシーバー、ダイナミックレンジ拡大SOA※6-MZI※7型波長変換技術を開発し、これらを接続し、LAN-WAN間のシームレスな信号転送を世界で初めて実証しました。

(2)40Gbps対応トラフィック分析装置
 エッジルーターの超高速ネットワーク対応技術として高速トラフィック分析技術として、AFM分析アルゴリズム※8をベースに40Gbps対応トラフィック分析装置を開発しました。

(3)50GS/s、5bitリアルタイムオシロスコープ
 25Gbpsの光信号波形をソフトウェア補正無しに観測できるSFQ回路※9で構成した50GS/sの5bitAD変換器を用いたリアルタイムオシロスコープを開発しました。

(4)標準化
 開発したデバイス/モジュール技術の蓄積に基づき積極的に標準化活動を進め、100Gbpsトランシーバー、40GbEシリアル、LAN-WAN間変換規格の確立に主導的に貢献できました。

3.OFC/NFOEC2012での動態展示

 光通信技術の主要国際会議であるOFC/NFOEC-2012(2012年3月4日~8日)に於いて、(1) 空冷動作可能な100Gbps超小型光トランシーバーを用いたデータ転送の動態展示と、(2)超高速光LAN-SANシステムによる非圧縮スーパーハイビジョン信号72Gbpsの配信システム実験のビデオ公開を行います。 

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当: 木村、松岡  TEL:044-520-5211
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 ネットワーク研究推進部 担当:伊藤TEL:03-5225-2362
アラクサラネットワークス株式会社 広報 担当:新井 TEL:044-549-1706
財団法人国際超電導産業技術研究センター  超電導工学研究所デバイス研究開発部 低温デバイス開発室 担当:日高 TEL:029-861-5055
独立行政法人産業技術総合研究所 ネットワークフォトニクス研究センター  担当:石川、並木
TEL:029-861-3203(石川)、029-861-3250(並木)
日本放送協会  研究企画部  担当:加藤 TEL:03-5494-3112
一般財団法人光産業技術振興協会 ネットワーク研究推進部  担当:小野 TEL:03-5225-6431
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当:田窪、遠藤  TEL:044-520-5151

【用語解説】

※1 エッジルーター:ネットワーク上を流れるデータを他のネットワークに中継する機器(ルーター)のうち、基幹通信回線のエッジ(端)に配置されるもの。
※2 OTDM:Optical Time Division Multiplexing。光領域上で時分割多重を行う伝送技術。高速なシリアル伝送を実現することができる。
※3 NIC:Network Interface Card。LANなどのネットワークに接続するための拡張カード。
※4 ISBT:Inter Sub-Band Transition。半導体光デバイスを超高速処理するために用いられる、電子だけを半導体量子井戸に閉じ込めたときに形成されるサブバンドのエネルギーレベル間の光学遷移事象
※5 光ゲート:入力された光信号のうち、指定された期間のみの信号を出力する方法。OTDM信号と組み合わせて光スイッチとして動作する。
※6 SOA:Semiconductor Optical Amplifier。半導体光増幅器。
※7 MZI:Mach-Zehnder interferometer。マッハ・ツェンダー干渉計。測定系と参照系の二つの光の干渉を利用した測定法。
※8 AFM分析アルゴリズム:Aggregated Flow Mining。大容量のトラフィックから重要トラフィックをリアルタイム抽出する技術。
※9 SFQ回路:Single Flux Quantum回路。磁束を閉じ込めることができる、超伝導体でつくられたリングを用いた回路。超電導リング中の単一磁束量子の有無を情報の"1"、"0"に対応させて演算を行う。