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Press Release

世界最先端の蓄電池専用解析施設

「RISING中性子ビームライン(SPICA)」が完成
2012年9月4日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
大学共用利用法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
J-PARCセンター
国立大学法人 京都大学

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING※1事業)の一環として、NEDOと大学共用利用法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、KEKの大強度陽子加速器施設「J-PARC(茨城県東海村)」に建設を進めてきた世界最先端の蓄電池専用解析施設「RISING中性子ビームライン(SPICA※2)」が完成し、9月4日(火)、現地で完成披露式典を行いました。
 SPICAは、リチウムイオン電池の一層の性能向上や、リチウムイオン電池に代わる「革新型蓄電池」の開発に不可欠な、電池内部の反応メカニズムを科学的に分析。充放電中など動いている状態の蓄電池に中性子を照射し、電池内で何が起きているかを原子レベルで解析します。
 NEDOは今年4月、大型放射光施設「Spring-8(兵庫県佐用町)」に「RISING放射光ビームライン※3 (BL28XU)」を設置しましたが、BL28XUでは主に重い元素の挙動を、SPICAでは主に軽い元素の挙動を観察。特徴の異なる2つの蓄電池専用ビームラインをフル活用することで、エネルギー密度など蓄電池の飛躍的な性能向上につながる多くの知見を獲得、革新型蓄電池の開発を加速させていきます。

  • SPICA 中性子回折装置
    SPICA 中性子回折装置
  • SPICA実験棟
    SPICA実験棟

  • 1 RISING:Research and Development Initiative for Scientific Innovation of New Generation Batteriesの略。総予算約210億円(見込み)、2009年から2015年までの7年計画で進めております。京都大学及び産業技術総合研究所関西センターを拠点として、10大学・4研究機関・12企業がオールジャパン体制で集結し、「現状比5倍のエネルギー密度を有する革新型蓄電池の実現」を目指して推進しているNEDO共同研究事業です。
  • 2 語源の由来は乙女座のα星「SPICA」(スピカ)。「SPICA」は、2つの星がお互いの重心の周りを回っている連星。複数の組織が連携し、プロジェクトを円滑に進めることを目指す象徴として「SPICA」と命名。
  • 3 Spring-8の高輝度X線を利用した電池解析専用施設。Mn、Fe、Co、Niなど主に重い元素に係る電池反応の観察・解析に適用。

1.背景

 日本の蓄電池に関する技術は世界最水準にありますが、蓄電池市場では熾烈な国際競争が展開されており、主流であるリチウムイオン電池の一層の性能向上は重要な課題です。一方で、従来型の蓄電池は理論的な性能限界も見えてきており、日本が蓄電池分野での競争力を維持・向上させて行くためには、従来の延長線上にない「革新型の蓄電池」の開発を進めることが極めて重要です。
 NEDOのRISING事業は、2009年から7年計画で「2030年に500Wh/kg(現状比5倍)のエネルギー密度を有する革新型蓄電池の実現を目指す」プロジェクトです。
 このプロジェクトでは、2つの異なる特徴をもったRISINGビームラインの整備を計画。まず、マンガンや鉄、コバルトなど重い元素の挙動を精密に観察することができる「RISING放射光ビームライン(BL28XU)」が今年4月、大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県佐用町)内に完成し、運用を開始しました。
  今回完成した、リチウムや酸素など軽い元素の挙動を観察する「RISING中性子ビームライン(SPICA)」を相互補完的に用いることで、充電中や放電中など実作動状態にある蓄電池の中で何が起きているのか、これを原子レベルで明らかにすることが可能になります。
 幅広い産業の基盤技術として、産業競争力の強化に貢献できるRISING事業の研究成果に、大きな期待がかかっております。

2.SPICAの概要

 SPICAは、実動作状態にある蓄電池に中性子を照射しながら、構成材料の原子配列をリアルタイムで観察することができる世界唯一の蓄電池専用設備です。
 J-PARCの世界最高強度のパルス中性子を利用し、蓄電池を構成するさまざまな材料中の原子配列を調べ、組成と構造を分析する中性子回折装置で、中性子の特徴からリチウム、酸素といった軽い元素が関係した蓄電池の反応機構の解明に大きな効力を発揮します。
 この装置は、中性子の直進性を活用し、約50mに及ぶ中性子導管を用いることで、中性子の飛行距離による高い分解能を有する一方で、最新の光学デバイスを駆使して大強度の中性子線を試料位置まで輸送することが可能です。
 また、最大2mの試料スペースで、様々な電池の動作環境や材料合成環境として高温・低温、ガス雰囲気、湿度、高圧環境を再現するとともに、電池材料を想定される動作環境状態で測定、構造変化を解析することが可能です。
 さらに、専用化学実験室及びストレージスペースを併設しており、長期保存された蓄電池の劣化機構の解明など専用ビームラインでしかできない高度な実験も計画。電極などの材料開発に迅速にフィードバックしていくことで、世界に先がけた革新型電池の開発につなげていきます。

3.お問い合わせ先

 (本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
  NEDO スマートコミュニティ部 蓄電技術開発室  担当:細井 
  TEL:044-520-5264  E-mail:info-rising@ml.nedo.go.jp
 
 (ビームラインの細部事項に関する問い合わせ先)
  大学共用利用法人 高エネルギー加速器研究機構  担当:椎名
  TEL:029-284-4593  E-mail:shiina@mail.kek.jp
 
 (その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
  NEDO 広報室 担当:遠藤  TEL:044-520-5151  E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp