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Press Release

より安全で負担の少ない高機能手術支援ロボットを開発

2012年9月4日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人九州大学

 NEDOの「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」の一環として、九州大学橋爪誠教授を中心としたグループは、医師や看護師が扱いやすく、正常な臓器機能を可能な限り温存できるコンパクトな診断・治療一体型の低侵襲内視鏡手術支援ロボットを開発しました。
 マスター・スレーブ式と呼ばれるもので、執刀医が手元のコンソール(マスター)を操作して、患者の体内に挿入されたマニピュレータ(ロボットの腕や手に相当)を操作。患者に挿入された3D(立体)内視鏡により手術部位をリアルに捉えて治療ができるなど、より安全な手術が可能になります。
 この手術支援ロボットの開発により、執刀医らの負担が軽減され、患者にとっても入院期間の短縮による医療費の低減化や早期社会復帰につながるなど、より質の高い医療を提供できるようになります。

  • 図1 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット全景
    図1 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット全景

1.背景

内視鏡外科手術は、手術創が小さく低侵襲であるため、術後の回復が早く、早期の社会復帰が可能です。しかしながら、患部を治療する際、体外から挿入した専用の手術器具を用いた微細な手術操作や内視鏡を用いるために生じる制限された視野内において高度な手術技術が求められるなど、執刀医、医療スタッフ等の医療従事者の負担が大きいという課題がありました。
 NEDOでは、2007年度から「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発(旧名:インテリジェント手術機器研究開発)」プロジェクト(研究代表者:橋爪 誠 九州大学大学院医学研究院 教授)に取り組み、より安全でより負担の少ない治療技術を目指し、我が国が世界に誇る内視鏡技術、ロボット後術、センシング技術等を融合し、医療従事者が扱いやすく、患部を精度良く効率的に治療し、正常な臓器機能を可能な限り温存できるコンパクトな診断・治療一体型の低侵襲内視鏡手術支援ロボット等の開発を実施しました。
 この手術支援ロボットにより、患者、医療従事者ともにより負担が少なく、より安全な手術が可能となり、入院期間の短縮による医療費の低減化や早期社会復帰にもつながるなど、より質の高い医療を提供します。また、将来的にはIT技術を活用した遠隔治療への展開も考えられ、地域格差や病院間格差がなく、患者が等しく優れた医療を受けられるようになることが期待されます。

2.今回の成果

今回開発した手術支援ロボットは、マスター・スレーブ式と呼ばれるもので、術者が手元のコンソール(マスター)を操作して、患者の体内に挿入されたマニピュレータ(ロボットの腕や手に相当)を操作するものです。術者の目の役割をするのは、患者に挿入された3D(立体)内視鏡です。本プロジェクトでは、脳神経外科用、胸部外科用、消化器外科用と3種類の手術支援ロボットを開発しましたが、コンソールや制御装置などは共通とし、マニュピレータは各対象部位に最適な形状となっています。いずれのマニピュレータにも、対象部位に応じて必要とされる高度な処置具やセンサーが装備されており、さらに高精度な3D画像を使用することで、手術部位をリアルに捉えて治療ができ、患者の生体情報や術前検査画像(CTやMRIなど)や術中の超音波画像をリアルタイムに術者へ提示できるなど、より安全な手術が可能になります。

  • 脳神経外科サブプロジェクト(委託先:名古屋工業大学、名古屋大学、産業技術総合研究所)では、主に脳腫瘍を対象とし、従来の顕微鏡下での手術において、低侵襲を追求すると取り残しが生じやすい側方の腫瘍にも対応できるよう、側方向からアクセスして吸引を可能とするための直視側視切り替え3D内視鏡、腫瘍の除去に用いる吸引管、止血に用いるバイポーラ※1、術野洗浄に用いるイリゲータ※2を側方に変形して操作することのできるロボティック内視鏡処置具、から構成される「脳神経外科手術用インテリジェント手術支援ロボット」技術を開発しました。

  • 図2 運動野を近傍とする腫瘍に対する低侵襲アプローチと側方死角の発生
    図2 運動野を近傍とする腫瘍に対する低侵襲アプローチと側方死角の発生
  • 図3 脳神経外科用インテリジェント手術支援ロボット全景と先端処置具部分
    図3 脳神経外科用インテリジェント手術支援ロボット全景と先端処置具部分

  • 胸部外科サブプロジェクト(委託先:東京大学、オリンパス株式会社)では、虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術や肺がんを対象としますが、肋骨の存在により機器の挿入角度や操作範囲に制限を生じます。そこで、人間の手の自由度よりも1自由度多い7関節のマニピュレータを開発し,障害物を避けながら所望の箇所にアクセスして操作が可能な処置具とそれを制御する「胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット」技術を開発しました。

  • 図4 胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット
    図4 胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット

  • 消化器外科サブプロジェクト(委託先:九州大学、HOYA株式会社)では、胃がん・肝臓がん等の消化器がんを対象としています。ここ数年で世界的に急速に普及し始めているSPS※3(シングルポートサージェリー)に対応した、立体軟性内視鏡に、2本の鉗子と集束超音波発振装置※4を融合した「消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット」技術を開発しました。

  • 図5 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット先端鉗子部分および集束超音波発信装置を出したところ
    図5 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット先端鉗子部分および集束超音波発信装置を出したところ
  • 図6 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット動作CGイメージ(提供:東京慈恵会医科大学)
    図6 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット動作CGイメージ(提供:東京慈恵会医科大学)

3.今後の予定

本プロジェクトでの成果を早期に実用化するための研究開発を引き続き行っていきます。

4.お問い合わせ先

  • 本プレスリリースの内容についての問い合わせ先
    NEDO バイオテクノロジー・医療技術部 担当:古郷、吉村 TEL 044-520-5231
  • その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先
    NEDO 広報室 担当:遠藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【参考:用語解説】

  • ※1 バイポーラ : 双極性(両極性)焼灼器。活性電極と不活性電極との間に組織を挟んで高周波電流を流す電気焼灼器。主に凝固や止血を行う。
  • ※2 イリゲータ : 灌注法を行う際に用いるもので、タンクと弾力性流出管からなり、生理的食塩液などで洗浄を行う。
  • ※3 SPS : (Single Port Surgery) 単孔式内視鏡外科手術。通常、腹腔鏡や鉗子などの手術器具をそれぞれの切開創(ポート)から挿入するのに対し、1カ所のポートから腹腔鏡や鉗子を挿入して行う腹腔鏡手術。主として臍部から挿入するため、切開創が目立たないことが特徴で、急速に普及している。
  • ※4 集束超音波発振装置 : 超音波エネルギーを一点に集束させるとその焦点部分が高温になることを利用して、がんなどに集束させることで、がんだけを高温にして治療する装置。高温にするとがん細胞が破壊されるので、従来のような切除が不要となり、焦点以外の組織には何の影響も与えないため、無血手術が可能となる。