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Press Release

世界最高水準の高温超電導ケーブルを開発

―30年相当の長期課通電で健全性も確認―
2013年1月29日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
古河電気工業株式会社
公益財団法人国際超電導産業技術研究センター

 NEDOの超電導技術開発関連事業において、古河電気工業株式会社等の研究チームは、超電導送電としては世界最高となる275kV、150万kVAの送電を可能とする高温超電導ケーブル(注1)と、電力機器との接続部にあたる気中終端接続部および中間接続部(注2)を開発、中国瀋陽市の瀋陽古河電纜有限公司(注3)で実証試験を行いました。実証試験では、30年相当の加速試験(注4)による長期課通電を実施し、ケーブルや接続部の健全性の確認にも成功しました。
 超電導送電ケーブルの技術開発は、これまで66kVが主流でしたが、さらなる高電圧送電ケーブルの需要が海外を中心に高まっており、本技術の確立により、日本国内だけでなく、アジア地域等の新しいインフラとして導入が期待されます。

  • (写真左)開発した世界最高容量超電導ケーブル、(写真右)長期課通電試験風景
    (写真左)開発した世界最高容量超電導ケーブル、(写真右)長期課通電試験風景

1.概要

経済社会の基盤となる電力の安定的かつ効率的な供給システムを実現するため、系統を適正に制御し、電力供給を安定化させるための技術および発電電力を無駄なく輸送するための高効率な送電技術の確立が現在求められています。NEDOは、「イットリウム系超電導電力機器技術開発」(プロジェクトリーダー:塩原融 公益財団法人国際超電導産業技術研究センター理事)において、これまでの技術開発によって得られた世界最先端の超電導技術を活用して、コンパクトで大容量の電力供給が期待できるイットリウムに代表されるレアアース系酸化物高温超電導線材(イットリウム系超電導線材と総称)を用いた超電導電力ケーブル、超電導変圧器等の電力機器開発に取り組んでおります。
 今回の課通電試験は、本プロジェクトの一環として実施。275 kV高温超電導ケーブルシステムは、古河電気工業株式会社が本プロジェクトで開発されたイットリウム系超電導線材(注5)を用い、直径150mm、送電損失0.8W/m、275 kVの設計仕様で高温超電導ケーブルを作製し、中国瀋陽市において全長30mのシステムとして構築したものです。
 2012年10月中旬に同ケーブルの初期性能を現地で確認した後、同ケーブルに200kVの電圧と、3kAの通電を行い、同年12月末に1ヶ月間の試験を完了しました。その後、同ケーブルに310kVの電圧を加え、ケーブルが劣化すると発生する部分放電がないことを確認し、ケーブル、気中終端接続部及び中間接続部の健全性を確認しました。

2.今後の予定

NEDOは、本技術開発の成果を含め、地球環境問題への貢献が期待できる超電導ケーブルシステムの実用化に向け、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 古河電気工業株式会社は、超電導ケーブルの実用化に向けた取り組みとして、さらに条件を変えた実験や長期間の課通電試験を実施することで、実用化に必要となる多数の設計データを詳細に取得する予定です。

3.問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 担当:臼井、三津井  TEL:044-520-5281
古河電気工業株式会社 経営企画室IR・広報ユニット 木村  TEL:03-3286-3049
(公財)国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所 塩原、大熊  TEL:03-3536-5703

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報室 担当:遠藤  TEL:044-520-5151  E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【参考:用語解説】

(注1)高温超電導ケーブル

 超電導は、ある温度以下になると電気抵抗がゼロになる現象。超電導には、液体ヘリウム(-269℃)を使って冷却する低温超電導(金属系超電導)と、液体窒素(-196℃)を使って冷却する高温超電導(酸化物系超電導)とがある。
 高温超電導ケーブルは、その高温超電導の線材を使用した電力ケーブル。低温超電導に比べ高温であることから、冷却に必要となる設備が軽減され、コンパクトな形状となり、冷却にかかるコストを低減することが可能となる。
 ケーブルのサイズがコンパクトになるため、地中送電線の管路の小型化・少本数化につながり、実用化されれば、送電効率の向上に加え、電力流通設備の建設においても大幅なコストダウンを実現するものとして期待されている。

(注2)終端接続部、中間接続部

 終端接続部と中間接続部は、超電導ケーブルを接続するために必要な付属品。終端接続部はケーブルの両端部に取り付け、室温中におかれている電気設備と超電導ケーブルを接続するための端末。中間接続部は、超電導ケーブル同士をつなぐもので、長距離の布設には必要な接続部。超電導ケーブルは、液体窒素で冷やされ、導体は高い電圧がかけられていることから、接続部は液体窒素温度と室温の熱絶縁と、アースと高電圧の電気絶縁の両方の機能をコンパクトに実現する必要がある。

(注3)瀋陽古河電纜有限公司

 1995年に古河電工、瀋陽電纜廠および伊藤忠3社の合弁会社として創立し、2003年に古河電工の全面資本参加により独資会社となり現在に至る。中国瀋陽市に工場をもち、事業内容は66kVから500 kVの超高圧電力ケーブルおよびジョイントなどの機器部品の製造、販売、ケーブル工事であり、古河電工から移転された製品の設計、製造及び品質管理技術を有する。

(注4)30年相当の加速条件

 30年の寿命を1ヶ月間の長期課通電試験で検証するため、通常の運転電圧(対地電圧160kV)に対して初期耐電圧値200kVの電圧印加を実使用時の負荷変動に相当する3kAの負荷サイクルを加えた状態で行う。この方法は、電気規格調査会標準規定(JEC-3408)に規定された長期課通電試験を準用している。

(注5)イットリウム系超電導線材

 クロム・ニッケル基合金などのテープ状金属基板上に、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法にて中間層を成膜し、レアアース(イットリウムなど)、バリウム、銅等からなる酸化物超電導材料を結晶成長させながら成膜した超電導線材。
 液体窒素温度(-196℃)において超電導状態となり、その特性は、電流密度が高く、磁場中でも特性低下が少なく、また交流損失も小さい。実用化された高温超電導線材の中で最も性能の高い材料である。