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Press Release

66kV大電流・低損失超電導電力ケーブルを開発

―長期課通電試験、極低損失通電の検証に成功―
2013年5月28日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
住友電気工業株式会社
株式会社フジクラ
公益財団法人国際超電導産業技術研究センター

NEDOの「イットリウム系超電導電力機器技術開発」の実施者である住友電気工業株式会社、株式会社フジクラ、公益財団法人国際超電導産業技術研究センターは、イットリウム系の高温超電導線材を用いた大電流・低損失の66kV超電導電力ケーブル(注1)を開発。世界最大級である5kAの長期課通電試験および極低損失通電の検証を実施し、冷却効率を考慮した上での送電損失で、従来の電力ケーブルの1/3以下を達成しました。
 なお、今回の成果について29日(水)より東京ビッグサイトで開催される「Smart Community Japan 2013」のNEDOブースにおいて展示および説明を行います。

  • 電力ケーブル、設備等の写真4点

1.概要

NEDOは「イットリウム系超電導電力機器技術開発」(プロジェクトリーダー:塩原融 公益財団法人国際超電導産業技術研究センター理事、超電導工学研究所 所長)において、これまでの技術開発によって得られた世界最先端の超電導技術を活用して、コンパクトで大容量の電力供給が期待できるイットリウムに代表されるレアアース系酸化物高温超電導線材(イットリウム系超電導線材(注2)と総称)を用いた超電導電力ケーブル、超電導変圧器等の電力機器開発に取り組んでおります。
 本事業では、超電導電力ケーブルとして世界最大級の5kAの通電が可能であり、かつ冷却効率を考慮した上での送電損失を現用の電力ケーブルと比較して1/3以下にできる66kV大電流・低損失超電導電力ケーブルを開発いたしました。
 NEDOは「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」においてビスマス系の66kV高温超電導ケーブル(定格2kA)の実系統連系による実証試験を実施すると共に、ビスマス系の超電導電力ケーブルに対して更に大容量化と低損失化が期待できるイットリウム系の超電導電力ケーブルについても開発を進めてきました。このケーブルに使われているイットリウム系超電導線材は前述の様な高性能が期待できるものの、ビスマス系線材と比較して十分に性能の高い線材の製造が技術的に困難であるために、これまで5kAもの大電流を流すことの出来る超電導ケーブルの検証試験は実施されていませんでした。
 住友電気工業株式会社は、世界最大級の570MVAの送電容量を持ち、150mm管路に収納可能な世界最大の送電密度を有するコンパクトな15m長の66kV級三心一括型(注3)超電導ケーブルシステムを構築し、30年間の運用に相当する加速条件(注4)のもとで長期課通電試験を実施し、システムの健全性を確認するとともに、その交流損失が5kA通電時に1相あたり2W/m以下という低損失であることを検証いたしました。
 株式会社フジクラは、世界最大級の臨界電流(Ic=500A/cm以上)を有するイットリウム系超電導線材を用いて作製した66kV級の超電導ケーブルによる全長約20mの試験線路を構築し、この試験線路に電力ケーブルとしては最大級である5kAの通電を行い、実環境に近い状態で交流損失を評価し、5kA通電時に1相あたり1W/m以下となることを検証いたしました。

2.今回の成果

本事業において、住友電気工業株式会社は、自社が開発したイットリウム系超電導線材を用いて三心一括型超電導ケーブル製造し、その大電流接続部となる終端接続部の電流リード開発、中間接続部の技術開発を行い、超電導ケーブルシステムの実用化に必要な要素技術開発を完成させています。また短尺ケーブルにより交流損失低減のための要素技術を確立するとともに電力系統事故時の故障電流に対する健全性を検証しています。
 また、株式会社フジクラが開発した世界最大級の臨界電流値(Ic)(注5)を持つイットリウム系超電導線材を用いたケーブルで検証した5kA通電時の1相あたり1W/m以下という交流損失は、現用の電力ケーブル(代表的には154kV 600MVA級)と比較して冷却効率を考慮した上での送電損失を1/4以下にできるものです。これは超電導電力ケーブルが、国内の電力系統の高効率化の推進にきわめて有効であることを改めて示したものであると考えています。
 これらの成果によって、第一世代と言われているビスマス系超電導ケーブルが実用化された後の更なる電力系統の高効率化に資する基礎的な技術が確立したと考えています。

3.今後の予定

NEDOは本事業の成果を基に、地球環境問題への貢献が期待できる超電導ケーブルシステムの実用化に向け、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 住友電気工業株式会社は、今回の成果をコンパクト・大電流容量が必要な電力ケーブルへ適用したいと考えています。そのためには、イットリウム系線材の長尺化・量産化の技術開発や、イットリウム系ケーブルの実系統での長期信頼性・安定性の検証が必要となります。現在、「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」にて、ビスマス系線材(注6)を用いた超電導ケーブルで、国内初の実系統での実証試験を実施し、長期信頼性・安定性を検証中です。この先行しているビスマス系超電導ケーブルの早期実用化を計り、その成果も活用してイットリウム系ケーブルの実用化に向けた開発も進めて参ります。
 株式会社フジクラは、今回、高い臨界電流を有する超電導線材は交流損失の低減に効果的であることを検証することができたことから、超電導ケーブルの更なる大容量化・コンパクト化を図れるものと期待しております。今後もイットリウム系線材の開発を進め、超電導ケーブルの低損失化を進めるとともに、超電導ケーブルシステムの実用化に寄与して参ります。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部   臼井、三津井   TEL:044-520-5281
住友電気工業株式会社   広報グループ   TEL:06-6220-4119
株式会社フジクラ   コーポレート企画室   TEL:03-5606-1112
国際超電導産業技術研究センター超電導工学研究所 塩原、大熊 TEL: 03-3536-5703

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当:遠藤  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【参考:用語解説】

(注1)超電導電力ケーブル
 超電導は、ある温度以下になると電気抵抗がゼロになる現象。超電導には、液体ヘリウム(-269℃)を使って冷却する低温超電導(金属系超電導)と、液体窒素(-196℃)を使って冷却する高温超電導(酸化物系超電導)とがある。
 高温超電導ケーブルは、その高温超電導の線材を使用した電力ケーブル。低温超電導に比べ高温であることから、冷却に必要となる設備が軽減され、コンパクトな形状となり、冷却にかかるコストを低減することが可能となる。
 ケーブルのサイズがコンパクトになるため、地中送電線の管路の小型化・少本数化につながり、実用化されれば、送電効率の向上に加え、電力流通設備の建設においても大幅なコストダウンを実現するものとして期待されている。

(注2)イットリウム系超電導線材
 表面を結晶配向化した長尺金属テープやクロム・ニッケル基合金などのテープ状金属基板上に、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法などによる中間層を介してレアアース(イットリウムなど)、バリウム、銅等からなる酸化物超電導材料を結晶成長させながら成膜した超電導線材。
 液体窒素温度(-196℃)において超電導状態となり、その特性は、電流密度が高く、磁場中でも特性低下が少なく、また交流損失も小さい。実用化された高温超電導線材の中で最も性能の高い材料である。
 住友電気工業(株)では、今回のケーブルに使用するために、3cm幅の長尺テープ上に均質高特性な超電導層を形成する技術、使用幅である2mm幅及び4mm幅へ劣化を抑制しつつ細分化する技術などの開発をこのプロジェクトで実施した。

(注3)三心一括型
 3本の高温超電導ケーブルコアを一つの断熱管の中におさめた構造。

(注4)30年相当の加速条件
 30年の寿命を1カ月間の長期課通電試験で検証するため、通常の運転電圧(対地電圧38kV)に対して初期耐電圧値51kVの電圧印加を実使用時の負荷変動に相当する5kAの負荷サイクルを加えた状態で行う。

(注5)臨界電流値(Ic)
 超電導体に流せる限界の電流の値のこと。

(注6)ビスマス線材
 住友電工が、NEDOプロジェクトの成果をもとに平成16年に開発したビスマス系超電導線「DI-BSCCO」(Dynamically Innovative-BSCCO)をさらに改良し、線材をスリム・コンパクト化することで、交流損失の低減化を図っている。
  「BSCCO」はBi2Sr2Ca2Cu3O10と記述される酸化物超電導体の頭文字をとって表記されるもの。ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、酸素(O)の化合物。