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Press Release

希少金属セリウム使用量を半減する「研磨パッド」の開発に成功

―研磨能率UPで使用量を1/2に!―
2013年6月17日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫

NEDOと立命館大学、(株)クリスタル光学は、ガラス基板用研磨材に用いられる希少金属セリウムの使用量を半減できる研磨パッドの開発に成功しました。

今回開発した研磨パッドは、フラットパネルディスプレイやハードディスクドライブ等のガラス基板用最終研磨に用いられるもので、ベースであるウレタン樹脂に新たにエポキシ樹脂を添加することで、研磨能率を従来の約2倍に高めることに成功しました。この技術により、従来の半分の時間での研磨が可能となり、研磨材に用いられる希少金属セリウムの使用量を半減することができます。

  • 図1
    図1 今回開発した研磨パッド

1.背景

希少金属は、日本の産業界にとって必要不可欠な材料ですが、その偏在性ゆえに中長期的な安定供給確保に対する懸念があります。なかでも、セリウムはフラットパネルディスプレイやハードディスクドライブ等のガラス基板用研磨材として使用されている重要な希少金属です。

NEDOでは、平成20年度から希少金属の使用量低減技術及び代替材料開発に取り組んでいます。この中で立命館大学 谷 泰弘教授のグループは、「精密研磨向けセリウム使用量低減技術開発及び代替材料開発/4BODY研磨※1技術の概念を活用したセリウム使用量低減技術の開発(平成21~24年度)」として、砥粒※2、メディア粒子※3、工具、プロセス技術という4要素に基づく研磨技術の開発により、セリウムの使用量低減、および代替材料の開発を目指してきました(図2)。今回の成果は、4要素のうち工具(研磨パッド)に関するものです。

  • 図2
    図2 研磨に関する4つの要素(4BODY研磨)

2.今回の成果

ガラス研磨に使われる研磨パッドは、一次・二次研磨で用いられる多孔質パッド及び不織布パッド等と、最終仕上げ研磨に用いられるスエードパッド等に分類されます。今回は、研磨パッド全体の約50%を占めるスエードパッドの高機能化に取り組みました。

ガラス基板の研磨は、砥粒を水などに分散させた研磨液を研磨パッドに付けて行います。研磨パッドの役割は研磨液を保持することですが、親水性が高いほど研磨液がよく保持され、より多くの砥粒がガラス表面に作用するので研磨能率が向上します。本技術開発では、研磨パッドに多用されているウレタン樹脂に、高い親水性を有するエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を添加することにより、親水性の高いスエードタイプの研磨パッドを開発しました(図3)。

  • 図3
    図3 今回開発した研磨パッドの電子顕微鏡像

開発した研磨パッドは従来のウレタンパッドより高い親水性を持っています。従来の研磨パッドでは、研磨液がはじかれ球状になっているのに対し、開発した研磨パッドでは研磨液が濡れ広がっており、親水性が高いことがわかります(図4)。

  • 図4
    図4 研磨パッドの親水性の比較

図5に示すように、新たに開発した研磨パッドは、従来のウレタン樹脂からなる研磨パッドに比べて最大約2倍の研磨能率が得られることがわかりました。これにより、従来の半分の時間での研磨が可能となり、研磨工程における生産効率の向上や、セリウム使用量の50%低減にも繋がります。また、従来の研磨パッドよりも仕上げ面粗さが優れており、最終製品の性能向上も期待されます。

今回開発した研磨パッドは、様々な砥粒と組み合わせることで、ガラスだけでなくLED用のサファイア基板やシリコンなどの半導体基板にも適用が可能です。

  • 図5
    図5 従来のウレタンパッド及び開発した研磨パッドの研磨特性の比較※4

3.今後の予定

今回開発された研磨パッドは、既に試作・評価まで終了しており、1年以内の上市を目指して製造技術の検討を行っています。

なお本成果は、8月27日から29日に行われる2013年度砥粒加工学会学術講演会にて発表する予定です。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
 NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:桂山、木村、中村  TEL:044-520-5220
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
 NEDO 広報室 担当:遠藤、木内  TEL:044-520-5151  E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
 

【参考:用語解説】

※1 4BODY研磨
通常の研磨は加工域に砥粒、工作物、工具の3種類の固体が存在する3要素の研磨(3BODY研磨)での開発がおこなわれていたが、複合粒子研磨法としてメディア粒子という4種類目の固体を提案し、4要素の研磨(4BODY研磨)を行っている。
※2 砥粒
研磨において機械的除去等を行う硬質な粒子。研磨材ともいう。
※3 メディア粒子
砥粒の保持、切りくずの付着、工具面の保護、研磨材の粘度向上等、砥粒が有する除去以外の作用を行う粒子。
※4 研磨特性の比較
ソーダガラスを#2000にて粗研磨後(面粗さ:500nmRa)、スエードパッドを用いて20kPaの圧力で、30分研磨する条件での比較