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Press Release

細胞培養用の重力制御装置を開発

―世界唯一の装置をNASAに設置へ―
2015年8月28日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫

NEDOプロジェクトの支援により、(株)スペース・バイオ・ラボラトリーズが開発した重力制御装置「Gravite®」が、NASAケネディー宇宙センターに新設された微小重力シミュレーターセンターに設置されます。

本装置を用いた微小重力下での細胞培養法は、従来の培養法に比べ、細胞の分化を抑制する効果や増殖を早める効果があり、同センターにおいて、宇宙での微小重力実験との比較検討で使用される予定です。また本装置は、微小重力環境に加えて、過重力環境も提供できる世界唯一の装置であり、どのような研究が宇宙実験で有用なのかを明らかにすることが期待されます。

今後は、NASAが公認した模擬微小重力装置として、2015年10月から世界への販売を展開する予定です。

1.概要

iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた再生医療は、ヒトの細胞や組織を用いた治療方法であり、今までは治療困難だった疾患の新たな治療法となり得るものです。しかし、ヒト幹細胞を産業利用につなげるためには、細胞の効率的な確保方法や品質を維持・管理し培養する方法の確立などの課題があります。

そこでNEDOプロジェクト※1では、品質の管理されたヒト幹細胞の安定的な大量供給を可能とする基盤技術の開発を行いました。具体的には、本プロジェクトにおいて、株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズは、株式会社ツーセルや広島大学と共に、特に関節を包む膜である滑膜中に存在する間葉系幹細胞※2に注目し、分化能・未分化性※3・安全性を維持している細胞を安定的に大量(1012個以上)に供給・保存する基盤技術の研究開発を実施しました。また、微小重力下での細胞培養法についての検討も行い、その結果をもとに、重力制御装置「Gravite®」を開発しました。本装置を用いた細胞培養法は、従来の細胞培養法に比べて分化を抑制する効果や増殖を早める効果が確認されています。

今般、スペース・バイオ・ラボラトリーズは、本装置に独自の改良を加え、宇宙ステーションと同じ10-3Gの微小重力環境をつくるだけでなく、2Gや3G等の過重力環境を作り出すことができる世界唯一の装置を開発し、NASAケネディー宇宙センターに新設された微小重力シミュレーターセンター※4に設置されることとなりました。

今後、微小重力シミュレーターセンターにおいて、「宇宙における微小重力と地上での模擬微小重力環境を比較し、どのような研究が宇宙実験で有用なのか、またその成果を人類の科学とイノベーションにどのように活用できるか」を探索する研究と開発に本装置の活用が見込まれます。また、NASAが公認した模擬微小重力装置として、2015年10月から、主に研究用途として世界で販売を展開する予定です。

2.今回の成果

再生医療は、幹細胞を特定の細胞に分化させて体内に投与することで治療を行ったり、病気発生のメカニズムを解明したりするため、未分化状態の幹細胞を培養する必要があります。スペース・バイオ・ラボラトリーズは、ヒトが宇宙に滞在すると筋が萎縮し、骨密度が低下する点に着目し、微小重力下で細胞を培養できる重力制御装置を開発しました。

今回、微小重力シミュレーターセンターに設置される装置は、スペース・バイオ・ラボラトリーズが独自に改良を加え、直行二軸のまわりに試料を回転させ、重力ベクトルを全方位に分散させることにより、宇宙ステーションと同じ10-3Gの模擬微小重力環境を実現するだけでなく、単軸回転による遠心力を利用して2~3Gの過重力環境も作ることが可能となりました。理論的な重力環境の変化を可視化するため、加速度センサ-によってリアルタイムにモニタリングする機構も装備しています。

3.今後の予定

今後は、NASAが公認した模擬微小重力装置として、2015年10月より主に研究用途として世界で販売を展開する予定です。

また、NEDOプロジェクトの成果である大量の細胞培養を可能にする専用培養容器を搭載した「Gravite®」は、2年後の販売を計画しています。専用培養容器は、細胞を接着させるための担体に特別な処理を施し、1本で直径10cmの培養皿12枚分の培養面積を確保するものです。一般的な細胞培養は、培養皿等の平面上で行われるため、大量の細胞を培養するには大量の培養皿とそれを置く広大な面積が必要となりますが、今回の成果を活用することで、省スペースで大量の細胞を培養することが可能となり、培養空間の有効活用、培養コストの削減が期待されます。

  • 今回NASAに設置される重力制御装置「Gravite®」の写真
    今回NASAに設置される重力制御装置「Gravite®」

【用語解説】

※1 NEDOプロジェクト

名称: ヒト幹細胞産業応用促進基盤技術開発/ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発/ヒト幹細胞の安定的な培養・保存技術の研究開発

期間: 2010年度~2013年度

事業総額: 3,743百万円

参加機関: 株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ、株式会社ツーセル、広島大学 他

※2 間葉系幹細胞
組織間の間隙を埋める組織中に存在する幹細胞で、各組織で決まった細胞を生み出しています。豊富な移植実績により安全性が高いと考えられています。
※3 分化能・未分化性
「分化能」とは、幹細胞が持つ特定の細胞に変化できる能力を指し、「未分化性」とは、逆にどの細胞にも分化していない状態を指します。この未分化性と分化能を持っていることで、幹細胞を損傷している部位の細胞に変化させ、投与するという治療を行うことが出来ます。
※4 微小重力シミュレーターセンター
動・植物を使ったライフサイエンスおよび物理学研究の中から、パラボリック(放物線)飛行や落下実験、模擬微小重力装置等を使い、国際宇宙ステーションで行う候補実験への評価、助言を行う機関です。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・機械システム部 担当:福井 TEL:044-520-5241

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp