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Press Release

マイクロサイズの液滴挙動の観察に成功

―立体構造物やより広範囲への均質成膜に期待―
2016年1月13日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫

NEDOプロジェクトにおいて、東京大学は、高温の固体に滴下した際のマイクロメーターサイズの液滴挙動の観察に成功し、液滴が固体表面上を飛び跳ねるなど複雑な挙動を示すことを明らかにしました。

今後、これまで成膜が困難であった配管やバルブなどの立体構造物やディスプレイモニタといった、より広範囲の均質成膜への鍵となることが期待されます。

1.概要

ナノレベルで制御され高度な機能を持つ高品質/高均質薄膜は半導体デバイスやコーティングの分野に広く用いられています。現在、その成膜は真空プロセスが主流となっております。

しかしながら、NEDOの委託事業「エネルギー・環境新技術先導プログラム/高品質/高均質薄膜を実現する非真空成膜プロセスの研究開発」においては、エネルギーとコスト削減の観点から、制御性に優れた非真空成膜プロセスの開発を目指し、成膜機構のシミュレーションと化学工学的手法をもとに実用化検討可能な装置開発に取り組んできました。

この委託事業で東京大学は、ミストを用いた化学気相蒸着法(Mist Chemical Vapor Deposition、以下ミストデポジション法※1)により薄膜を形成する際のミスト液滴挙動のモデル化と流動解析に取り組み、直径が数十から数百マイクロメーターの液滴を高温の固体に滴下すると、飛び跳ね複雑な挙動を示す液滴挙動の観察に成功しました。

本成果をもとに、東京大学は本委託事業の共同研究先である京都大学、高知工科大学、FLOSFIAとともに、さらに微小な液滴挙動のモデル化を進めると同時に、得られたモデルからのミストデポジション法に適した装置設計手法の開発を推し進め、これまで成膜が困難であった曲面や凹凸面を有する複雑な形状の立体構造物、例えば配管やバルブなどやディスプレイモニタといった立体構造物やより広範囲への均質成膜への貢献に努めます。

2.今回の成果

通常、直径数ミリメーター程度の液滴を高温の固体に滴下すると液滴は固体の温度に応じて核沸騰状態、遷移沸騰状態、膜沸騰状態(ライデンフロスト現象※2)となることが知られています。

今般、本プロジェクトにおいて、東京大学は、対象とする直径が数十から数百マイクロメーターの液滴では、どの状態においても、飛び跳ね複雑な挙動を示す液滴の存在を明らかにし、その挙動の観察に成功しました。例えば図の連続写真では、左上より撮影を開始し、液滴が固体表面上を飛び跳ね、高低を繰り返し、徐々に高く跳ね上がる((2)と(12)を対比すると液滴が上へ移動)とともに横に移動((1)と(7)を対比すると液滴が左へ移動)していることがわかる。この液滴挙動がミストデポジション法における、高均質膜形成の要因となっていると考えられます。

  • 図 固定カメラによる液滴挙動の連続写真
    図 固定カメラによる液滴挙動の連続写真 
    (白丸が液滴、左上より撮影開始、撮影間隔:約0.006秒、液滴径約100μm、ヒータ温度310℃設定)

【用語解説】

※1 ミストデポジション法
反応溶液をミストとし、成膜部を加熱することで真空とすることなく大気圧下において直接膜を形成します。本手法は京都大学の藤田教授と高知工科大学の川原村准教授の研究グループにより提案された成膜手法で株式会社FLOSFIAにて産業利用が進められており、省エネルギーに高均質の薄膜を形成できる手法として近年非常に注目されております。
※2 ライデンフロスト現象
液滴を沸点より十分に高い温度の金属などの固体面に滴下した際に、滴下した液滴が蒸発し、液滴下部に蒸気が生じることから固体から液滴への伝熱が抑制され、液滴が完全に蒸発するのに時間を有する現象。また、液滴下部に生じた蒸気のために液滴が浮遊している状態。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 担当:前田、村上 TEL:044-520-5174

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp