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Press Release

杜仲由来の非可食性バイオマスを利用した高機能複合材料の開発に成功

―石油化学製品と同等の耐衝撃性を実現―
2016年1月21日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
日立造船株式会社

NEDOプロジェクトにおいて、日立造船(株)を主体とする産学連携グループは、非可食性バイオマスである杜仲(トチュウ)が作り出すバイオトランスポリイソプレンと汎用性バイオポリマー(ポリ乳酸)を微細かつ均一に混合することで、高機能なバイオ複合材料の開発に成功しました。

今回開発したバイオ複合材料は、バイオトランスポリイソプレンを10~30%複合した動的架橋により、従来脆性が弱点であった市販ポリ乳酸に比べ、耐衝撃性を約16~25倍と改質し、石油化学製品と同等の耐衝撃性を実現しました(図1)。また、引張特性の一つである伸びについても約9~30倍と大幅に機能改質しました。このバイオマス由来の複合材料は、世界的に市場拡大が期待されている3Dプリンター用樹脂、成形加工を必要とする自動車や輸送機器の内装、生体材料分野への活用が期待されます。

  • 図1.バイオトランスポリイソプレンを複合したポリ乳酸の特性のグラフ
    図1.バイオトランスポリイソプレンを複合したポリ乳酸の特性

1.概要

NEDOと日立造船(株)、大阪大学等の産学連携グループは、非可食性バイオマスから最終化学品までの一貫製造プロセスを構築し、石油から非可食性バイオマス由来の原料への転換を図るためのプロジェクト※1を推進しています。今回開発ターゲットにしたポリ乳酸は、バイオマス由来の汎用性ポリマーとして、各分野に活用されていますが、機械的特性の脆性改質が課題となっています。これまで化学品等を加える改質方法が検討されてきましたが、実用的にバイオマス由来化学品で脆性を改質できたものは存在しませんでした。

このたび、動的架橋技術によりポリ乳酸におけるバイオトランスポリイソプレン※2の分散性を改善し、ポリ乳酸の弱点である機械的特性の脆性を大幅に改善することに成功しました。

ポリ乳酸に木本植物の杜仲(トチュウ)※3が作り出すバイオトランスポリイソプレンを10~30%の割合で動的架橋したバイオ複合材料は、ポリ乳酸の耐衝撃性を約16~25倍に増強しました。また、材料の延性の指標である伸びについても、約9~30倍と大幅な機能改質を達成しました(図1)。このことにより、バイオトランスポリイソプレンはポリ乳酸の耐衝撃性と延性を著しく改質して向上させる添加剤としての機能を有することが判明しました。

今後も、非可食性バイオマスであるバイオトランスポリイソプレンの特徴的な機能を活かした付加価値の高い用途開発に取り組んで参ります。これらの成果は、2016年1月27日(水)~29日(金)の間、東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2016 第15回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」のNEDOブースにおいて展示します。

2.今回の成果

【バイオトランスポリイソプレンを用いたポリ乳酸の高機能化に成功】

産学連携グループでは、ポリ乳酸の弱点である脆性を改善するため、高分子量かつ硬質な特徴を持つバイオトランスポリイソプレンとの複合化に取り組んできました(図2)。このたび、バイオポリイソプレンの分散性を向上した動的架橋法を用いることにより、2つの材料の単純ブレンドに比べて、耐衝撃性と延性が大幅に改善することができました。

  • 図2.動的架橋法のイメージ図
    図2.動的架橋法のイメージ図

今回の動的架橋法にはリアクティブプロセッシング技術※4を採用しました。この手法は、混練装置内に架橋剤を少量添加し、ポリ乳酸へのバイオトランスポリイソプレンの分散性を改善させ微分散化させることにより、ポリ乳酸の脆性改善に寄与したと考察されます(図3)。なお、この手法での動的架橋技術は、実生産に向けたスケールアップを比較的容易に達成することが可能です。

  • 図3.動的架橋法による分散性が改善された電子顕微鏡写真
    図3.動的架橋法による分散性が改善された電子顕微鏡写真

複合材料の引張特性の評価結果(図1)として、耐衝撃性については、ポリ乳酸にバイオトランスポリイソプレンを10%添加した場合、ポリ乳酸単体に比べて約16倍に向上しました。これは市販されている耐衝撃性ポリ乳酸の約10倍に相当します。また30%添加の場合には、耐衝撃性が約25倍まで向上し、バイオトランスポリイソプレン単体を超え、耐衝撃性素材であるABS樹脂※5下位品と同等の性能を示します。延性に関しても、バイオトランスポリイソプレンを10%添加した場合、ポリ乳酸単体に比べて、伸びが約30倍に向上し、脆性の改善に大きく寄与しています。

この耐衝撃性と延性に優れたバイオマス由来の複合材料の用途としては、世界的に市場拡大が期待されている3Dプリンター用樹脂、成形加工を必要とする自動車や輸送機器の内装、生体材料分野への活用が期待されます。これによって、非可食性バイオマス由来化学品の一貫製造プロセスを確立するとともに、大気中の炭酸ガスをバイオマスにより固定し化学原料へ転換させることで、非石油、低炭素化社会の実現を目指します。

【用語解説】

  • ※1 NEDOのプロジェクト

    名   称:非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/非可食性バイオマスから化学品製造までの実用化技術の開発/植物イソプレノイド由来高機能バイオポリマーの開発

    期   間:2013~2016年度

    参加機関:日立造船(株)(共同研究:大阪大学、委託:キャスコ(株)、ウイスカ(株))

  • ※2 バイオトランスポリイソプレン(トランス型1.4ポリイソプレン)
    バイオトランスポリイソプレンは植物が体内で合成する高分子化合物で、木本植物のトチュウは大気中のCO2を取り込んで生成します。トチュウ由来のトランスポリイソプレンは天然ゴムの主成分のシスポリイソプレンとよく似た化合物ですが、分子の立体構造の違いから硬質な化合物となっています(シスポリイソプレンは柔軟性を示します)。
  • ※3 杜仲(トチュウ)
    トチュウは地球上の栽培可能面積が最も広い温帯域で栽培が可能であり、植物体の全体にバイオトランスポリイソプレンが含まれています。100年程前に日本の植物学者の父と言われる牧野富太郎博士らにより硬質ゴムを含むバイオマスと紹介されています。
  • ※4 リアクティブプロセッシング技術
    混練装置内部での化学反応を利用する技術。
  • ※5 ABS樹脂
    アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂の総称。熱可塑性があり、剛性、硬度、加工性、耐衝撃性、曲げ疲労性など機械的特性のバランスに優れた樹脂。家電から自動車内装部品など、さまざまな用途で使用されている。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:森田、後藤 TEL:044-520-5220
日立造船株式会社 総務・人事部(広報グループ) 担当:中尾 TEL:06-6569-0013

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:佐藤、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp