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Press Release

高性能ナノ繊維で強化した樹脂複合材料と高効率製造プロセスを開発

―京都大学内で一貫製造用テストプラントが稼働開始―
2016年3月23日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人京都大学
地方独立行政法人京都市産業技術研究所

NEDOプロジェクトにおいて、京都大学を主体とする産学連携グループは、耐熱性と樹脂との相溶性に優れた軽量、高強度の高性能ナノ繊維と、この材料で補強した樹脂複合材料を高効率で連続的に製造するプロセス(京都プロセス)を世界に先駆けて開発しました。

また、これらの技術をもとに、木材や竹などの原料から樹脂複合材料まで一気通貫で製造するテストプラントを京都大学宇治キャンパス内に完成させ、稼働を開始しました。

  • 図1 変性リグノセルロースナノファイバー・樹脂複合材料の一貫製造プロセス(京都プロセス)
    図1 変性リグノセルロースナノファイバー・樹脂複合材料の一貫製造プロセス(京都プロセス)

1.概要

セルロースナノファイバー(CNF、図2)は、持続型木質バイオマス資源由来の、軽量、高強度、低熱膨張のナノ繊維であり、樹脂補強繊維としての利用が期待されています。「日本再興戦略」改訂2015にセルロースナノファイバーの研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取り組みを推進することが明記され、日本ではCNFに関する社会的な関心が急速に高まっています。しかし、その状況は北欧、北米、中国も同様です。日本のCNF材料開発の優位性、信頼性を確保するには、いち早く、CNFおよびCNF樹脂複合材料を安定的に製造できるプロセスおよび装置の開発、ユーザーの求める機能の開発という最も高いハードルを越え、他国が追いつけない状況まで引き離すことが重要です。

これらの実現のため、NEDOプロジェクト※1において、京都大学が主体となった、王子ホールディングス(株)、日本製紙(株)、星光PMC(株)、(地独)京都市産業技術研究所が参画する産学連携グループは、樹脂の補強性に優れたCNFの開発に取り組んできました。今般、耐熱性と樹脂との相溶性に優れた軽量、高強度の新たなCNF材料と、このCNFで補強した樹脂複合材料を高効率で連続的に製造するプロセス(京都プロセス)を世界に先駆けて開発しました。また、これらの技術を一貫製造プロセスで実証するためのテストプラントを京都大学宇治キャンパス内に完成させ、稼働を開始しました。

次年度から、複数の企業や公的研究機関に向けてテストプラントを用いて製造したサンプルの提供を予定しています。

  • 図2 セルロースナノファイバー
    図2 セルロースナノファイバー

2.今回の成果

(1)樹脂との混練時にナノ解繊し、高耐熱CNFとなる変性リグノパルプを開発

木材や竹などの細胞は、鉄筋コンクリートの様な構造の細胞壁から出来ています(図3)。鉄筋はCNF、コンクリートはリグニン※2にあたります。CNFは、細胞壁中でヘミセルロース※3を介してリグニンと一部結合して、リグノCNF(リグニン・セルロースナノファイバー複合体)の状態で均一分散していると考えられています。本プロジェクトでは、リグニンやヘミセルロースの一部を選択的に分離して、CNF表面にリグニンを残したリグノパルプを、さらに化学処理することで、高耐熱で、樹脂との混練時にナノ解繊※4し、リグノCNFが均一分散する、変性リグノパルプを開発することに成功しました。これにより、高性能のリグノCNF強化樹脂材料を高効率で製造できるようになりました。例えば、ナイロン6の様な高融点(220-230℃)の樹脂とリグノCNFとの複合化であっても、ガラス繊維強化材料より軽くて、高い強度特性が得られます(図4)。さらに、このナノ材料は、ガラス繊維強化材料や炭素繊維強化材料と異なり、砕いたのち成形し直しても強度が殆ど低下しないため、リサイクル利用に適した材料といえます。

  • 図3 木材細胞壁の構造(上)とパルプの電子顕微鏡写真(下)
    図3 木材細胞壁の構造(上)とパルプの電子顕微鏡写真(下)
  • 図4 ナイロン6樹脂におけるガラス繊維強化材料との比較
    図4 ナイロン6樹脂におけるガラス繊維強化材料との比較

(2)リグノCNF強化樹脂材料の高効率製造プロセスの開発

(1)の成果をもとに、原料である木材や竹などの木質バイオマスからリグノパルプを製造し、乾燥シートとし、それを化学処理後に、粉砕し樹脂と溶融混練して、高耐熱CNF強化樹脂材料を連続的に製造するプロセス(京都プロセス)を世界に先駆けて開発しました。さらに、このプロセスに基づき、年間1トンのリグノCNF強化樹脂を製造するテストプラント(将来的には5トン/年にまで拡張可能)を京都大学宇治キャンパス内に建設しました。

3.今後の予定

次年度から、複数の企業や公的研究機関に向けてテストプラントを用いて製造したサンプルの提供を開始予定です。これにより、植物由来の高性能ナノ繊維で強化した樹脂材料の用途開発が大きく進むことが期待されます。持続型資源にもとづく低炭素社会の実現に貢献する、変性リグノパルプ、リグノセルロースナノファイバー強化樹脂、強化樹脂成型物の実用化を目指し、化学・樹脂メーカーや自動車、家電、住宅メーカーと連携しながら生産技術の最適化に取り組んで行きます。

将来的には、樹脂についても、森林資源など非可食性バイオマス資源からポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等を製造することで、日本のバイオマス資源を100%使用した高性能の自動車用材料や家電用材料を製造し、海外へ輸出することも夢ではありません。

【用語解説】

※1 NEDOプロジェクト

名   称 : 非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫製造プロセスと部材化技術開発

期   間 : 2013~2019年度

参加機関 : 国立大学法人京都大学、王子ホールディングス株式会社、日本製紙株式会社、星光PMC株式会社、地方独立行政法人京都市産業技術研究所

※2 リグニン
木材成分の1/4を占める疎水性のフェノール性高分子。
※3 ヘミセルロース
木材成分の1/4を占める親水性の低分子量多糖類。
※4 ナノ解繊
パルプを機械的手法で構成要素であるセルロースナノファイバーのレベルにまで解すこと。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:森田、後藤 TEL:044-520-5220

国立大学法人京都大学 産官学連携本部 担当:香月(かつき) TEL:075-753-7570、0774-38-4805

地方独立行政法人京都市産業技術研究所 経営企画室 担当:北川 TEL:075-326-6100

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、佐藤、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp