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Press Release

砂や灰などから有機ケイ素原材料の直接合成プロセスを開発

―ケイ素化学品の低コスト化・製造プロセスの省エネ化が可能に―
2016年10月25日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫

NEDOプロジェクトで、産業技術総合研究所とコルコート(株)は、シリカにアルコールを直接反応させる上で有機脱水剤、二酸化炭素および少量の触媒を共存させることにより、効率良いテトラアルコキシシランの生成を見出したのに続き、今回、砂、灰、産業副生物などのシリカ含有物質をケイ素源として、金属ケイ素を経由せずにアルコールと無機脱水剤存在下で直接反応させ、テトラアルコキシシランを短時間・高効率に合成するプロセスを開発しました。

このプロセスを活用することにより、資源の有効活用と自動車用部材、太陽光発電用部材、化粧品基材、またはオイルなどケイ素化学品の低コスト化・製造プロセスの省エネ化が可能になります。

  • 図1:砂からの有機ケイ素原料の製造と、有機ケイ素部材を含む多様な製品群
    図1 砂からの有機ケイ素原料の製造と、有機ケイ素部材を含む多様な製品群

1.概要

テトラアルコキシシラン※1は、工業的には、天然のケイ石(二酸化ケイ素が主成分)※2を出発原料とし、一般的には1800℃以上の高温で炭素とともに反応させることにより金属ケイ素※3に還元し、これを塩素と反応させた後にアルコールと反応させる方法、または金属ケイ素を直接アルコールと反応させる方法により製造されています。しかし、いずれの方法においても、高温条件を必要とする金属ケイ素の製造工程を経由するエネルギー多消費プロセスであるため、様々な有機ケイ素原料※4のコスト高の一因となっています。

そのような状況下、NEDOプロジェクト※5において、国立研究開発法人産業技術総合研究所は、シリカ(二酸化ケイ素)※6とアルコールを原料とし、有機脱水剤※7、二酸化炭素、および少量の触媒を共存させることで、テトラアルコキシシランを得られることを既に報告しています(2014年5月20日付ニュースリリース※8)。しかし、この方法は、金属ケイ素を原料としないためエネルギー効率的には有利ですが、比較的高価な化合物であるジアルキルカーボネート※9をシリカに対して少なくとも2倍量使用する必要があり、工業的製法として経済性に課題がありました。

今回、前回報告の方法に比べて、短時間、かつ高効率でテトラアルコキシシランを合成可能な製造プロセスの開発に成功しました。国立研究開発法人産業技術総合研究所・触媒化学融合研究センターとコルコート株式会社は、砂、植物由来の燃焼灰、産業副生物など、安価でかつ大量に存在する種々のシリカ含有物質をケイ素原料としてアルコールと無機脱水剤※10存在下で直接反応させることで、金属ケイ素を経由せず、高価なジアルキルカーボネートも使用しないテトラアルコキシシランの製造プロセスを開発しました。

また、プロセスに無機脱水剤を用いますが、これは製造物のテトラアルコキシシランと容易に分離でき、また回収や再利用も可能でサステナビリティーにも優れた手法です。

この成果により、同材料を用いた自動車用部材、太陽光発電用部材、化粧品基材、またはオイル(機械潤滑油等)など、さまざまな用途に使用される有機ケイ素製品の原材料として低コスト化に寄与するとともに製造プロセスでの省エネ化が期待されます。

2.今回の成果

【シリカとアルコールの通常反応】

原料のシリカとアルコールを反応させると、目的物のテトラアルコキシシランと水ができますが、この両者は速やかに再び反応して、原料に戻ってしまうため、実際にはテトラアルコキシシランを効率良く得ることはできません(図2)。そこで、生成する水を効率的に取り除くことができれば、この逆反応を抑制でき、テトラアルコキシシランが高収率で得られると推定しました。

  • 図2:シリカとアルコールの反応式
    図2 シリカとアルコールの反応式

【シリカとアルコールの無機脱水剤存在下での直接反応とそれを用いた製造プロセス】

種々の反応条件を検討した結果、触媒として少量の水酸化カリウム、脱水剤として固体の無機物質であるモレキュラーシーブを共存させて加熱反応すると、シリカ源として岩を粉砕した砂とエタノールからテトラエトキシシランが高収率で得られました(図3)。

  • 図3:シリカとアルコールからテトラアルコキシシランを効率よく合成するプロセス
    図3 シリカとアルコールからテトラアルコキシシランを効率よく合成するプロセス

また、植物由来のシリカ源であるもみ殻を燃焼させた灰や合成石英を製造する際に出る副生シリカからも高収率で目的物を得ることができました(表1)。

  • 表1:種々のケイ素源から得られたテトラエトキシシランの収率(シリカ基準)
    表1.種々のケイ素源から得られたテトラエトキシシランの収率(シリカ基準)

3.今後の予定

今後、反応条件や触媒の種類を改良し、より低コストで製造できるプロセスを探索していきます。更にスケールアップなどの事業化に必要な課題解決を、国立研究開発法人産業技術総合研究所とコルコート株式会社と共に取り組み、数年後の実用化を目指します。

【用語解説】

※1 テトラアルコキシシラン
ケイ素原子にアルコキシ基が4つ結合した構造のケイ素化合物の総称。四塩化ケイ素または金属ケイ素とアルコールとの反応で得られます。テトラメトキシシランやテトラエトキシシランは、高純度合成シリカや電子デバイス用の保護膜、絶縁膜の原料などとして使用されます。
※2 ケイ石(二酸化ケイ素が主成分)
二酸化ケイ素が主成分の外観が白っぽい鉱石で、ガラス・陶磁器・セメントなどの原料として使用されます。
※3 金属ケイ素
Siで表される単純なケイ素のこと。通常は、ケイ石を還元して製造され、シリコーンの主要原料となります。また、半導体の基板として使われているシリコンインゴットはこの材料で作られます。
※4 有機ケイ素原料
有機ケイ素材料を作るために必要な原料のこと。有機ケイ素材料は、炭素(C)-ケイ素(Si)結合を持つ有機化合物からなります。
※5 NEDOプロジェクト
「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」。2012-2013年度は経済産業省、2014年度からはNEDOのプロジェクトとして実施中。
※6 シリカ(二酸化ケイ素)
ケイ素と酸素の化合物。天然には石英や鱗珪石として存在します。地球上に広く分布しており、その水和物はシリカゲルやシリカゾルなどとして市販されています。
※7 有機脱水剤
有機化合物からなる脱水剤で、有機反応などで脱水縮合を起こさせる物質も含まれます。例えば、アセタール合成のための脱水縮合剤としては、アセトンジメチルアセタール(2,2-ジメトキシプロパン:2,2-dimethoxypropane)などがあります。
※8 2014年5月20日付ニュースリリース
※9 ジアルキルカーボネート
炭酸エステル化合物のことで、炭酸の2つの水素原子をアルキル基で置き換えたものです。構造式はRO-C(=O)-OR' で表されます。例えばジメチルカーボネート(H3CO-C(=O)-OCH3)はリチウム電池用電解液としても用いられています。
※10 無機脱水剤
無機化合物からなる脱水剤のことです。シリカゲルや五酸化二リン(P2O5)などがありますが、アルミノケイ酸塩からなるゼオライトを主成分とするモレキュラーシーブは強力な無機脱水剤です。

4.お問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:佐藤 TEL:044-520-5252 E-mail:green@ml.nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp