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Press Release

マンガンケイ化物系熱電変換材料で従来比約2倍の出力因子を実現

―300~700℃の未利用熱エネルギー有効利用に期待―
2016年12月1日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東北大学

NEDOプロジェクトにおいて、東北大学の研究グループは、マンガンケイ化物系熱電変換材料で、発電量を表す指標である出力因子として、従来の約2倍に相当する2.4mW/K2mを実現しました。

今回の成果により、自動車エンジンの排熱や産業分野における工業炉からの排熱等、300~700℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの実現が期待されます。

  • 説明図
    図1 今回開発した熱電変換材料の外観

1.概要

現在、運輸・産業・民生の分野において、一次エネルギーの半分以上が利用されずに排熱になっています。このような背景のもと、NEDOは利用されることなく環境中に排出されている膨大な量の未利用熱に着目し、その「削減(Reduce)・回収(Recycle)・利用(Reuse)」を可能とするための要素技術の革新と、システムの確立を目指した「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」※1を2015年度から実施しています。その中でも、熱電変換技術分野においては、ナノ材料技術の急速な進展等に伴い大きな性能改善の可能性が見られるようになっている近年の状況に鑑み、これまでに取り組めていない新たな技術の発掘を目的とした基盤的研究開発をあわせて実施しています。

熱電変換技術は、固体のゼーベック効果※2を利用して排熱から直接電力を得ることが可能な技術であり、自動車エンジンや工場排熱等、中温域といわれる300~700℃(600~1000K程度に相当)の未利用熱を有効に利用して省エネルギーに資することが期待されます。しかし、中温域で熱電性能の高い材料は、鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウム等、毒性が高く希少で低融点の元素から構成されるものがほとんどです。これらの元素から構成される熱電変換材料は、原料コストが高く、また空気中での使用には工夫が必要なこと等から、広く利用されるには至っていません。

このような中、NEDOプロジェクトにおいて、東北大学大学院工学研究科の宮﨑讓(応用物理学専攻教授)、林慶(同専攻准教授)らの研究グループは、低コスト化が期待でき、かつ熱的・化学的安定性に優れるマンガンケイ化物系熱電変換材料※3において、従来の1.6~2倍に相当する2.4mW/K2mの出力因子※4を実現しました。今回の成果により、自動車エンジンの排熱や産業分野における工業炉からの排熱等、300~700℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの実現が期待されます。

なお、この研究成果の内容は、12月1日、2日の両日、仙台市内で開催される応用物理学会東北支部第71回学術講演会において発表します。

詳細については、以下のWebサイトをご参照ください。

2.今回の成果

高マンガンケイ化物(MnSi1.7※5は地殻表面に豊富に存在する元素から構成され、熱的・化学的安定性に優れることから、1970年代より我が国やロシアで熱電変換材料への応用が検討されてきました。しかし、通常の合金のように原料を高温で溶かして凝固させる手法で試料を合成すると、MnSi1.7とともに、モノシリサイド相※6が析出し、導電性と機械的強度が悪化することが課題でした。結晶構造中のケイ素(Si)をゲルマニウム(Ge)で1at%程度部分置換することにより、モノシリサイド相の析出を抑制できることは知られていましたが、ケイ素とゲルマニウムが同族元素のため、部分置換によりキャリア濃度※7を大幅に増加させることはできませんでした。このような背景のもと、研究グループは、結晶構造中のマンガン(Mn)をバナジウム(V)で1.5~3.0at%部分置換することで、モノシリサイド相の析出が抑制されるとともに、キャリア濃度を増大できることを見出しました。

さらに今回、研究グループは、結晶構造中のマンガンをバナジウムに加えて、鉄(Fe)で部分置換した試料(Mn0.93V0.03Fe0.04)Si1.7が、約530℃(800K)において2.4mW/K2mと、これまで報告されているMnSi1.7材料の1.6~2倍に相当する極めて高い出力因子を示すことを見出しました。本成果は、詳細な電子構造計算に基づき、結晶構造中でマンガンのバナジウムでの部分置換によりモノシリサイド相の析出を抑制し、かつホールキャリア※8濃度を増加するとともに、鉄での部分置換により、ゼーベック係数の増加を同時に実現したことによるものです。なお、今回開発した材料はp型※9物質であり、発電モジュールを試作するために、同等な性能のn型※10物質の合成にも並行して取り組んでいます。

説明図

図2 MnSi1.7結晶構造中マンガンのバナジウム部分置換によるモノシリサイド相の析出抑制効果
(左:MnSi1.7、右:(Mn0.98V0.02)Si1.7

説明図

図3 (Mn0.97-yV0.03Fey)Si1.7試料の出力因子の温度変化

なお、同温度域の代表的な熱電変換材料である鉛・テルル系の出力因子は、300~600℃で2.0~2.5mW/K2m程度であり、今回の開発材料はそれに匹敵する性能を持ちます。

3.今後の予定

本研究グループは、今回開発したマンガンケイ化物系熱電変換材料をベースに、同等な性能のn型材料を創製し、自動車エンジンからの排熱や産業分野における工業炉からの排熱等を利用した高出力熱電発電モジュールの開発につなげるとともに、さらなる未利用熱エネルギーの有効活用に資する材料創製を目指します。

NEDOは、引き続き本プロジェクトの研究開発を推進し、多様な状況で発生している未利用熱の有効活用を可能とする技術を提供していきます。

【用語解説】

※1 未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発
プロジェクトリーダー 小原春彦氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 研究戦略部 研究戦略部長)のもと2013年度~2022年度(うち2013~2014年度は経済産業省にて実施)で革新的な技術の研究開発を行う。
※2 ゼーベック効果
固体に温度差を与えると電圧が発生する(または起電力が生じる)現象。温度差1℃あたりの起電力をゼーベック係数(S)という。
※3 マンガンケイ化物系熱電変換材料
マンガンとシリコンからなる化合物系熱電変換材料。具体的には後述(※5)の高マンガンケイ化物を指す。
※4 出力因子
熱電変換材料の発電量を表す指標。ゼーベック係数S(V/K)の2乗に導電率σ(電気抵抗率の逆数、S/m)を乗じた量で単位は(W/K2m)、単位長さあたり温度差1℃でどれだけの電力Wが得られるかの目安となる。
※5 高マンガンケイ化物(MnSi1.7
MnとSiがモル比1:1.7で化合した物質を指す。
※6 モノシリサイド相
MnとSiがモル比1:1で化合した物質を指す。MnとSiで構成される化合物は多く存在するので、高マンガンケイ化物MnSi1.7等との混同を避けるためにこのように呼ぶ。
※7 キャリア濃度
物質中で電気伝導を担う電子または正孔の濃度。通常は単位体積中の電子または正孔数(単位はcm-3またはm-3)で表す。
※8 ホールキャリア
熱電変換材料のような半導体では、ホール(正孔)が結晶中を動くことにより導電性が生じる。例えばシリコンの価電子数は4であるが、価電子数3のアルミニウムやホウ素でシリコンを部分置換するとホールキャリアが導入され、ホールキャリア濃度を増やせば、ある濃度までは単調に導電性が向上する。マンガンケイ化物では、価電子数7のマンガンの一部を価電子数6のクロムや価電子数5のバナジウムで部分置換することによりホールキャリアが導入される。
※9 p型
キャリアが正孔の物質。正のゼーベック係数を示す。熱電発電モジュールにはp型とn型を直列接合したπ型素子とする必要がある。
※10 n型
キャリアが電子の物質。負のゼーベック係数を示す。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 担当:永井、楠瀬 TEL:044-520-5281

国立大学法人東北大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻 担当:教授 宮﨑 讓
TEL:022-795-7970 E-mail:miya@crystal.apph.tohoku.ac.jp

国立大学法人東北大学 大学院工学研究科 情報広報室
TEL/FAX:022-795-5898 E-mail:eng-pr@eng.tohoku.ac.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp