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Press Release

インフラ点検ロボットに搭載できる高エネルギーX線非破壊検査装置を開発

―インフラ構造物の非破壊検査を現場で容易に―
2016年12月21日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人静岡大学

NEDOプロジェクトにおいて、産業技術総合研究所と静岡大学は、バッテリーで駆動するロボットに搭載可能な小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発しました。

本装置は、カーボンナノ構造体X線源と高エネルギーX線検出器からなり、1ショットのX線照射で5cm厚、複数ショットで7cm以上の厚さの鉄鋼部材の透過イメージングができます。

小型軽量で、ポータブルバッテリーで駆動できるため、インフラ構造物などを検査するロボットに搭載することで効率的な非破壊検査が可能となり、インフラ構造物の老朽化による事故を低減し安全安心な社会への貢献が期待されます。

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    図1 配管検査ロボットに搭載したX線非破壊検査装置

1.概要

日本国内には、高度成長期以降に建設された膨大な社会インフラや産業インフラがあり、それらを今後も安全かつ有効に活用するにはインフラ構造物の効率的な点検が必要とされています。X線を用いた非破壊イメージング技術は、肉眼では見えないインフラ構造物内部の経年劣化状態を見ることができることから、特に工場や発電プラントなどのインフラ構造物の主要な検査技術の1つですが、これまでは作業員が手動でX線装置をセッティングして撮影していたため、検査に時間がかかっていました。インフラ構造物には膨大な検査箇所があるため、小型軽量でバッテリー駆動のロボットに搭載でき、しかも検査に十分な透過能力を持つX線非破壊検査装置の導入が望まれています。このような背景のもと、2014年度からNEDOは「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」において、非破壊検査装置の研究開発を推進しています。本プロジェクトにおいて、国立研究開発法人産業技術総合研究所はこれまでカーボンナノ構造体※1を用いたX線源の研究を行うとともに、高エネルギーX線やガンマ線に対応した検出技術の研究に取り組み、国立大学法人静岡大学ではX線やガンマ線などの高エネルギー線用の高性能・高機能イメージセンサーの研究に取り組んできました。

今般、これらの成果をもとに、産業技術総合研究所および静岡大学は、バッテリーで駆動するロボットに搭載可能な小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発しました。

2.今回の成果

今回開発したX線非破壊検査装置は、カーボンナノ構造体を用いた高エネルギーX線源と高エネルギーX線に対応した検出器からなり、1ショット0.1秒のX線を照射すると5cm厚、複数ショットで7cm以上の厚さの鉄鋼部材の透過イメージングができます。また、X線源と検出器で5kg以内という小型軽量で、ポータブルバッテリーで駆動できるため、インフラ構造物などを検査するロボットに搭載すれば効率的な非破壊検査が可能になります。

カーボンナノ構造体を用いたX線源は、従来のX線源で必要であった電子源用ヒーターやフィラメントが無いため、待機電力不要で、X線発生時にしか電力を消費しません。今回、200kV以上の電圧に耐えられる小型のX線管と高電圧駆動回路を新たに開発して、200keV以上の高エネルギーX線を発生できるX線源を実現しました。またX線検出器としては、X線照射で発光する蛍光体と2次元光検出器※2を用いた光変換型X線検出器※3と、テルル化カドミウム半導体素子を用いた直接変換型X線検出器※4の2種類を開発しました。今回開発したX線源と2種類のX線検出器は、全て平均消費電力が40W以下であり、プラント配管検査用に開発しているロボット用の14.8Vバッテリーで駆動できます。

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    図2 今回開発したX線非破壊検査装置
    (左からX線源、光変換型X線検出器、直接変換型X線検出器)

今回開発したX線源とX線検出器からなる非破壊検査装置の性能を確認するため、X線源とX線検出器の間に1cm厚の鋼板を複数枚置き、鋼板の間に3mmの鉛文字を挟み込んでX線透過像を撮像したところ、1ショット0.1秒のX線照射で、光変換型X線検出器および直接変換型X線検出器ともに5cmの鋼板を透過して鉛文字の画像が得られました。また、X線を複数回照射すればイメージング可能な透過厚を増すことができ、光変換型X線検出器では18ショットを蓄積して、7cm厚の鋼板を透過した画像が得られました。

開発したX線非破壊検査装置を用いることにより、プラントの配管など、厚みのある金属部材の減肉検査を高精度に実施することが可能になりました。また、小型軽量でバッテリー駆動できることから、自動検査ロボットなどに搭載してインフラ構造物の検査現場での効率的な検査ができるようになり、安全安心な社会の実現への貢献が期待できます。

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    図3 実験の模式図(左)、実験の様子(中央)、鋼板を透過した鉛文字のX線透過像(右)
    (右上)鋼板5cm厚、1ショット照射、(右下)鋼板7cm厚、18ショット照射

3.今後の予定

今後、開発したX線非破壊検査装置を化学プラント配管検査用のバッテリー駆動ロボットに搭載して、配管の減肉計測などの自動検査の実証試験を行う予定です。また、他のインフラ構造物の非破壊検査への応用も検討します。

【用語解説】

※1 カーボンナノ構造体
炭素原子で構成され、ナノメートルサイズの構造のもの。カーボンナノチューブ、カーボンナノウォール、グラフェン、ナノダイヤモンド、フラーレン、これらが複合化したものなど様々な構造のものが知られている。先端がナノメートルの構造のものに電界を印加すると、電界放出現象によって室温でも電子が放出されることから、今回開発したX線源では電子源として利用している。
※2 2次元光検出器
光を2次元的に検出して画像化するデバイス。画像センサーともいう。X線非破壊検査用の2次元検出器は、一般的にカメラ用の画像センサーよりも広い有感面積(X線を画像として受けることができる面積)が必要とされる。
※3 光変換型X線検出器
X線が入射すると光を出す蛍光体と、その光を電気的信号に変換する光検出器からなるX線検出器で、大面積の蛍光体プレートと2次元光検出器を用いることにより、広い面積のX線画像を撮影することができる。
※4 直接変換型X線検出器
半導体素子内に入ったX線を直接電気信号に変換する検出器。テルル化カドミウム半導体は、シリコンなどの半導体に比べてX線を吸収しやすく、高エネルギーX線の検出器として適している。また、2次元検出器では半導体素子に入ったX線が直接画像化されるので、ボケの少ない鮮明なX線画像が得られる。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:安川(裕)、長野、内山 TEL:044-520-5241

産業技術総合研究所 企画本部 報道室 TEL:029-862-6216 E-mail:press-ml@aist.go.jp

静岡大学 総務部 広報室 TEL:054-238-3046 E-mail:koho@adb.shizuoka.ac.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、藤本、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp