本文へジャンプ

Press Release

超高耐久性ゼオライト触媒を開発

―CO2を資源とする化学品製造の実現に大きく前進―
2017年3月16日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
人工光合成化学プロセス技術研究組合

NEDOは、人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)の組合員である三菱化学(株)と、東京工業大学とともに、二酸化炭素と水素から合成されるメタノールから、プラスチックなどの化学品原料として用いられるオレフィンを高収率かつ高生産性で製造する超高耐久性ゼオライト触媒を開発し、小型パイロットスケールでの性能実証に成功しました。

今回の開発成果により、二酸化炭素を資源とするオレフィン製造プロセスの商用化の実現に向けて大きく前進しました。

1.概要

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)※1は、「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)」※2において、太陽エネルギーを利用して光触媒によって水から得られるクリーンな水素と二酸化炭素を原料とした基幹化学品(C2~C4オレフィン※3)製造プロセスの基盤技術開発に取り組んでいます。このプロジェクトは、図1に示す3つの研究開発テーマで構成され、二酸化炭素排出量の削減に貢献する革新的技術開発の一つとして、中長期的に推進すべき研究に位置付けられています。

本プロジェクトにおいて、NEDOは、ARPChemの組合員である三菱化学株式会社と、国立大学法人東京工業大学とともに、基本骨格として特殊な細孔構造を有するゼオライト※4をベースとし、二酸化炭素と水素から合成されるメタノールからプラスチックなどの化学品原料として用いられるオレフィンを高収率かつ高生産性で製造する超高耐久性ゼオライト触媒の開発に成功しました。本プロジェクトで採用しているMTO反応※5プロセスは、通常のオレフィン製造プロセス(ナフサプロセス)と比較して、CO2削減効果の優れたプロセスです。しかし、本プロセスは高温のスチーム環境下で反応させる必要があり、工業化されている触媒では大幅に活性が低下するため、生産性向上が大きな課題となっていました。今回開発した触媒は、高温スチーム下でも触媒の活性低下を防止する高耐久性を有しています。さらに本触媒は、天然ガスなどの化石資源を利用して製造されるメタノールを用いたMTO反応にも適用可能であり、広範なプロセス分野での生産性向上の実現に貢献できます。

また今回、(株)三菱化学科学技術研究センター(横浜市青葉区)内に固定床※6小型パイロット設備を設置し、MTO反応プロセスの検証を行った結果、スチーム希釈条件下、500℃以上の温度においても触媒の活性低下を防止する新たなプロセスの実現に成功しました。また現在も本パイロット設備において、大型化に向けたスケールアップデータを引き続き取得しています。

今回の開発成果により、二酸化炭素を資源とするオレフィン製造の商用プロセスの実現に向けて大きく前進しました。

  • 人工光合成プロジェクトの概要

【1】光触媒開発 太陽エネルギーを利用した水分解で水素と酸素を製造する光触媒材料およびモジュールの開発
【2】分離膜開発 光触媒から発生した水素と酸素の混合気体から水素を分離する分離膜およびモジュールの開発
【3】合成触媒開発 水から製造する水素と発電所や工場などから排出する二酸化炭素を原料としてC2~C4オレフィンの有用な基幹化学品を合成する触媒およびプロセス技術の開発

図1 人工光合成プロジェクトの概要

2.今回の成果

MTO反応はゼオライト骨格内の4配位アルミニウム(Al)に起因する酸点によって進行します。固体27Al MAS NMR解析※7から開発された触媒は、公知の触媒とは異なり高温のスチーム処理後においてもゼオライト骨格内の4配位Alが安定に存在し(図2左)、触媒活性が維持されていることを確認しています(図2右)。

  • グラフ:新規触媒と公知触媒の高温スチーム処理前後の27Al MAS NMRの比較、高温スチーム処理前後の活性比較
    図2 新規触媒と公知触媒の高温スチーム処理前後の27Al MAS NMRの比較(左)、
    高温スチーム処理前後の活性比較(右)

本開発の触媒はスチーム耐性が高く、脱アルミによる永久劣化の程度が非常に小さいため、スチーム分圧の高い非常に苛酷な条件においても長時間活性を維持することが可能となります。ラボスケールで実施した500℃での再生繰り返し運転において、公知の触媒の2倍以上に相当する1,500時間の触媒寿命を達成しており、スケールアップした小型パイロット規模においてもその高耐久性を実証しました(図3、図4)。本触媒は、反応時に析出したコーク(炭素)の燃焼除去との再生繰り返し操作を行っても触媒性能が変化しないため、長期の触媒寿命が期待されます(図4右)。

  • 小型パイロット設備の写真
    図3 小型パイロット設備
  • グラフ:小型パイロット設備での実証運転結果
    図4 小型パイロット設備での実証運転結果

本触媒の基本骨格となるゼオライト構造には、活性点となりうるAlの位置が複数存在します。東京工業大学グループの検討によって、MTO触媒として好ましい特定の位置にのみAlを導入する手法が確立されつつあり、また、特定の位置にのみAlを導入することによって、コーキングにより触媒が失活するまでの時間を延ばす効果があることも確かめられています。合成法、構造、触媒活性の相関性についての報告も論文、国際学会等で東京工業大学グループから発表されています。(図5)(ACS, Catalysis 2015)

  • 図:様々な合成法で合成した本触媒の27Al MAS NMRスペクトル、骨格構造
    図5 様々な合成法で合成した本触媒の27Al MAS NMRスペクトル(左)、骨格構造(右)

さらに、本開発触媒は、金属をドープすることにより高温での反応選択性が改善され、550℃においてC2~C4オレフィン収率が83%に到達することが確認されました。この高温反応の実現により、触媒と短い接触時間で反応が完結するため、積載する触媒量の低減が可能となります。これにより、MTO反応プロセスにおいて高選択性、高生産性を合わせて実現できます。 

また前段のメタノール合成についても、50年来の常識を覆す革新的触媒プロセスの開発に取り組んでおり、これらの二つのプロセスにて、二酸化炭素と水素からのオレフィン製造を目指した革新プロセス開発に取り組んでいます。

【用語解説】

※1 人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)
参画機関: 国際石油開発帝石(株)、住友化学(株)、TOTO(株)、(一財)ファインセラミックスセンター
富士フイルム(株)、三井化学(株)、三菱化学(株) (五十音順)
※2 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)
人工光合成とは太陽エネルギーを用いて、水や二酸化炭素等の低エネルギー物質を、水素や有機化合物等の高エネルギー物質に変換する技術で、本プロジェクトでは、2012~2021年度の研究期間で、人工光合成に係る基盤技術開発に取り組んでいる。2012~2013年度は経済産業省、2014年度からはNEDOのプロジェクトとして実施中。
※3 C2~C4オレフィン
二重結合を1つ含む炭化水素化合物で、炭素数2から4のもの。C2はエチレン、C3はプロピレンと呼ばれ、プラスチック原料等となる基幹化学品として用いられる。
※4 ゼオライト
アルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に細孔を持つものの総称。分子ふるい、イオン交換材料、触媒、吸着材料等として利用される。
※5 MTO反応
Methanol to Olefinの略称で、CO2と水素から合成したメタノールからC2~C4オレフィンを製造する反応のこと。
※6 固定床
反応原料を連続的に供給し反応させる流通式の反応器において、固体触媒を動かないように充填したもの。
※7 固体27Al MAS NMR解析
固体試料中に含まれる27Al核のNMRスペクトルを測定することにより、Al種の化学的環境の違いを調べる手法。
 

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 橘高、服部 TEL:044-520-5252

人工光合成化学プロセス技術研究組合 担当:西見 TEL:03-5809-2314

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、藤本、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp