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Press Release

バイオマス生産量を1.8倍以上にできる精密林業技術を開発

―土壌センシング、DNAマーカー育種とリモートセンシングの3技術を活用―
2017年6月1日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
日本製紙株式会社

NEDOのプロジェクトで日本製紙(株)、東京農工大学、千葉大学は、開発した林業用土壌センシング技術、DNAマーカー育種技術とリモートセンシング技術を活用し、植林木の単位面積あたりのバイオマス生産量を現行法の1.8倍以上に増やせる精密林業技術を開発しました。今回の成果を海外植林地の木質バイオマスの生産に活用し、林業のほか木質バイオマスを主要原料とする幅広い製造業の発展・強化を目指します。

1.概要

地球温暖化対策の手段として重要視されているバイオ燃料は、化石燃料に対して競争力を持つために、原材料の低コスト化が求められています。そこで、植林地の単位面積あたりから得られるバイオマス生産量が課題となります。また、安価で高品質な植林木の供給は、天然林の伐採量を緩和できるため、地球環境の保全にも役立ちます。

NEDOのプロジェクト※1において、日本製紙株式会社、国立大学法人東京農工大学、国立大学法人千葉大学は、2013年12月から2017年2月までの約3年間、ブラジル北部にある日本製紙(株)保有のユーカリ植林地で品種改良、植栽技術向上等によるバイオマスの収量アップを目的に進めてきた委託研究で大面積の土壌評価のための林業用土壌センシング技術、優良木を選抜するためのDNAマーカー育種技術と大面積バイオマス量評価のためのリモートセンシング技術の開発を行い、これらの技術を活用して植林木の単位面積あたりのバイオマス生産量を現行法の1.8倍以上に増やせる精密林業技術を開発しました。

  • 研究概要図
    図1 研究の概要

日本製紙(株)は、今回の研究を通じて得られた成果を、海外植林地における木質バイオマスの生産に活用するとともに、林業はもとより、木質バイオマスを主要原料とする幅広い製造業の発展・強化に結び付く展開を検討します。

2.今回の成果

(1)土壌情報を効率的かつ迅速に収集可能な林業用トラクタ搭載型土壌センシング装置(土壌セン サー)を開発

植林地ほ場において、栄養成分などの土壌情報を効率的かつ迅速に収集できる、林業用のトラクタ搭載型土壌センシング装置(土壌センサー※2)を開発しました。これを用いて、土壌を迅速に評価することにより、植林木の成長に適した土地が選択でき、現行法と比較して1.3倍のバイオマス生産量の確保が可能になります。

  • 土壌センシング装置の写真
    図2 土壌センシング装置(土壌センサー)

(2)植林木の有用形質を間接的に選抜するDNAマーカー育種技術を開発

植林木がもつゲノム(DNAの塩基配列の違い)を目印(DNAマーカー※3)に、成長性や、木質特性※4などの有用形質を間接的に選抜するDNAマーカー育種技術を開発しました。この技術により、推定バイオマス生産量が現行の1.4倍以上となる優良木の選抜にも成功しました。

  • 優良クローン選抜結果の棒グラフ
    図3 優良クローンの選抜結果

上記(1)(2)の技術を合わせると、単位面積当たりのバイオマス生産量が現行法と比べて1.8倍以上(1.3×1.4)に増やすことが可能で、ユーカリチップ原材料費(立木費、伐採費、輸送費、切削費)を44%削減することが期待できます。

(3)広大な植林地における高精度なバイオマス量評価のためのリモートセンシング技術を開発

ドローン※5、3Dレーザースキャナ※6を使用して、広大な植林地における高精度なバイオマス量評価のためのリモートセンシング技術を開発し、バイオマス量をより精密で高効率に測定することも可能となりました。

  • ドローンによる大面積バイオマス評価のフロー図
    図4 ドローンによる大面積バイオマス評価

【用語解説】

※1 NEDOのプロジェクト

事業名:バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業/ゲノム育種及び高効率林業によるバイオマス増産に関する研究開発

総事業費:5138百万円(当該テーマ263百万円)

事業期間:2013年度~2017年度

事業委託先:日本製紙株式会社、国立大学法人東京農工大学、国立大学法人千葉大学

※2 土壌センサー
トラクタに牽引させる構造を持つ光学スペクトル検出機材。測定したスペクトルデータより、土壌成分値を推定し、植栽地を評価するための土壌情報が得られる。
※3 DNAマーカー
ゲノムDNA上の位置が特定された、特別な塩基配列を持つDNA領域のこと。樹木の個体間には、DNAの塩基配列に少しずつ違いがあり、この違いを目印(DNAマーカー)にすると、木質特性などの有用形質を間接的に選抜できる。
※4 木質特性
体積当たりの重さ(容積重)、セルロース量、パルプ収率などの樹木の個体間により違いのある特性のこと。
※5 ドローン
自律飛行可能な無人航空機。カメラを搭載することで空中から写真や動画を撮影可能。
※6 3Dレーザースキャナ
レーザーを用いて3次元構造物を計測する装置。本研究では地上に設置するタイプを採用した。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:荒巻 TEL:044-520-5271

日本製紙(株) 研究開発本部 アグリ・バイオ研究所 担当:河岡 TEL:03-3911-3084

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp