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Press Release

身体感覚を伝送する双腕型ロボットの開発に成功

―世界初の高精度力触覚技術を搭載―
2017年9月28日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
慶應義塾大学

NEDOと慶應義塾大学は、身体感覚を伝送可能な双腕型ロボット「General Purpose Arm」の開発に成功しました。

本ロボットは、視覚、聴覚、移動感覚を伝送でき、さらに、触覚の伝送としてロボットがモノに触れた感覚をあたかも直接触ったかのように感じさせる世界初の高精度力触覚技術を搭載しています。これにより、操作者は遠く離れた場所からであっても高い臨場感を持ってロボットを操作することが可能です。

本ロボットにより、自身の存在や行動が時空間的な拘束から開放されることとなり、人間の代替として産業、家庭、福祉介護、医療、農業など、人手や手間暇のかかる分野の自動化、省力化、そして人間と協調した作業での活用が期待されます。

  • 双腕型ロボット「General Purpose Arm」の図
    図1 双腕型ロボット「General Purpose Arm」

1.概要

NEDOは、2015年に策定された政府の「ロボット新戦略」を受け、2015年度から「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」を推進しています。このプロジェクトは、現在の人工知能・ロボット関連技術の延長上に留まらない、人間の能力を超えることを狙った革新的な要素技術をターゲットとし、これまで人工知能・ロボットの導入を考えもつかなかった未開拓の分野で、新しい需要を創出することを狙っています。

今般、NEDOと慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の野崎貴裕助教をはじめとする研究メンバー※1は、身体感覚を伝送可能な双腕型ロボット「General Purpose Arm」の開発に成功しました。本ロボットは、視覚、聴覚、触覚、移動感覚が伝送されることから、操作者は遠く離れた場所からであっても高い臨場感を持ってロボットを操作することが可能です。特に、触覚の伝送については、ロボットがモノに触れた感覚をあたかも直接触ったかのように感じさせる世界初の技術を搭載しています。

本ロボットにより、自身の存在や行動が時空間的な拘束から開放されるとともに、人間同様に柔軟かつ力強い、環境適応性の高い動作を生成することが可能となり、人間の代替として産業、家庭、福祉介護、医療、農業など、人手や手間暇のかかる分野の自動化、省力化、そして人間と協調した作業での活用が期待されます。

なお、今回開発したロボットは、10月3日から6日にかけて幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2017※2」に出展します。

2.今回の成果

少子高齢化を背景に、ロボットによる作業支援が期待されています。人間は力触覚によって力加減を調節し多様な作業を柔軟にこなすことが可能です。しかし、従来のロボットは対象物に触れた感触を利用できず、形の異なるものや軟弱なものを破壊してしまうことがありました。

本研究開発では、世界初の高精度力触覚技術(ロボットがモノに触れた感覚を人間に伝送し、あたかも直接触ったかのように感じさせる技術)を活用することで、人間同様に器用で巧みな動作を実現可能な双腕型ロボットを開発することに成功しました。視覚、聴覚、触覚、移動感覚の伝送には以下の技術を用いています。

  • 世界初の高精度力触覚技術(リアルハプティクス技術※3)を搭載し、ロボットが物体に触れた感覚を操作者に伝送。
  • ヘッドマウントディスプレイとステレオカメラからなるビジョンシステムによって視覚、聴覚情報を伝送。
  • 筋収縮測定システムによって操作者の脚部の状態をロボットに伝送し、移動を制御。

  • システムの構成の図
    図2 システムの構成
  • アーム部を操作する様子の図
    図3 アーム部を操作する様子

図1および図2に本ロボットの構成を示します。本ロボットは、操作用のシステムであるマスターと作業用のシステムであるスレーブで構成されます。図3に操作の様子を示します。操作者がマスターを装着し、ロボットを動かすとその動きと同様の動きをスレーブが再現します。また、スレーブが何かに接触した場合にはその触れた感覚を、マスターを通じて操作者に伝え、あたかも直接触れているかのような感覚を操作者に提示します。さらに、本ロボットはビジョンシステムを有しており、操作者の頭の動きに連動して視界が変化します。これによって、操作者はスレーブシステムの視野を共有することができ、あたかもその場にいるかのような視覚情報を得ることができます。スレーブには移動機構も備わっており、マスターに備わっている筋収縮測定システムに連動して移動を行うことが可能です。さらに、これまで困難であった人間の力加減の情報を測定できるとともに、測定した情報を用いた力制御も可能であり、人間の動作を再現することができます。

本ロボットによって、移動をすることなく離れた場所での作業を実現できるようになることから、産業、家庭、福祉介護、医療、農業など、人手や手間暇のかかる分野の自動化、省力化、そして人間と協調した作業での活用が期待されます。具体的には下記の展開が見込まれます。

  • 放射線環境や高所、深海中といった人間が直接立ち入ることのできない極限環境・危険環境下での作業を遠隔で行い、安全かつ確実な作業が可能になります。
  • 多品種少量生産や軟弱なものを取り扱う生産ラインにおいては、作業の自動化が困難とされており依然として人間の手作業に頼っています。本ロボットを用いることで、器用で繊細な作業を自動化することが可能になり、大幅な生産性の向上が期待されます。
  • エンターテインメントの世界では、遠隔で楽器を奏でることが可能になります。また、あたかも現地に行ったように旅行を体験することが可能になります。介護・福祉の世界においては、高齢で歩行が困難な状況においても、本ロボットにより外出やお花見、買い物の体験を楽しむことも夢ではなくなります。

  • 開発したロボットの様々な応用展開の図
    図4 開発したロボットの様々な応用展開

なお、今回の開発成果の一部(筋収縮測定システム)は、日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号 16H06079 若手研究(A))の助成を受けています。

【用語解説】

※1 研究メンバー
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 村上俊之(教授)、野崎貴裕(助教)
慶應義塾大学先導研究センター ハプティクス研究センター センター長:大西公平(教授)、
副センター長:永島晃(特任教授) 他
※2 CEATEC JAPAN 2017
新たな産業革命といえるデータ駆動型、また、情報活用型社会到来に向けたモノ・サービス・テクノロジ―が一堂に会し、新たなビジネスの創出と先進的技術および情報の交流、社会的課題の解決策の提案を行い、一層の産業の発展と生活の向上および社会への貢献を促すことを目的とした展示会。2017年10月3日~6日に幕張メッセで開催予定。
※3 リアルハプティクス技術
従来のハプティクスは、振動等によって擬似的に触覚を伝達する技術。一方、リアルハプティクスはロボットがモノに触れた際に、その硬さや柔らかさ、変形やたわみ等をありのままに伝える技術。これによって、あたかも直接触れているかのような感覚を操作者に伝送することが可能。なお、本技術は、CEATEC JAPAN 2016において審査員特別賞を受賞しており、特許も取得済み。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:寺岡、石倉 TEL:044-520-5241
慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 助教 野崎 貴裕(のざき たかひろ) TEL:045-566-1823

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp