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Press Release

世界初、燃料電池の反応生成液水の可視化を実現

―リアルタイム・高解像の解析により自動車用燃料電池の高性能化に貢献―
2017年10月5日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東京工業大学

NEDO事業において、東京工業大学は、作動中の燃料電池内の反応生成液水の挙動をリアルタイム・高解像度で可視化できる技術の開発に世界で初めて成功しました。これにより、反応が激しく変化する自動車用燃料電池の生成液水挙動の把握が可能となり、高性能化・高耐久化を目指す燃料電池の特性改善や設計指針に資する技術開発の加速が期待されます。

関連内容は10月1日~5日に開催される第232回米国電気化学会の10月5日のセッションで東京工業大学が発表する予定です。

  • 反応生成液水の時間変化を表す図
    図1 可視化された反応生成液水の時間変化(発電中の燃料電池内)

1.概要

水素社会の実現に向け、2014年に経済産業省が策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」※4では、燃料電池自動車の普及拡大のために燃料電池システムのコストを大幅に低減し、「2030年までに80万台程度の普及を目指す」という目標が掲げられており、NEDOは、2025年以降の本格普及期に求められるFCV用燃料電池の要求値(スタック出力密度:4kW/L以上、耐久性:50,000時間以上、等)を設定し、燃料電池の高度な解析・評価技術や、新規材料の設計指針に資する技術の開発を目的とした事業※5を2015年度より実施しています。

燃料電池は、水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステムです。この生成された液体水は燃料電池内に溜まることによって、供給ガスの輸送を妨げる場合があることが知られています。燃料電池の性能向上のためには生成された水の挙動を正確に把握することが重要な課題の一つとされていますが、従来は発電性能から間接的に判断されてきました。

今回、NEDO事業において技術研究組合FC-Cubic※6と国立大学法人東京工業大学(以下、東工大)の平井秀一郎教授のグループが、燃料電池内の生成液水の挙動をµmオーダーの高解像度でリアルタイムに可視化できる技術を世界で初めて開発しました。

この成果により、反応挙動が激しく変化する作動中の燃料電池内部(各層や各界面)の反応生成液水の挙動の把握が可能となり、今後、燃料電池の設計に大きく貢献することができます。

この成果を基に、東工大は企業などとの共同研究に着手し、自動車業界が求める、燃料電池のさらなる高性能化、高耐久化、低コスト化を目指し、技術開発の加速が期待されます。

なお、関連内容は10月1日~5日に開催される第232回米国電気化学会の10月5日のセッションで発表する予定です。

2.技術成果の内容

自動車用の固体高分子形燃料電池(PEFC)には、乗用車から商用車まで、さまざまな種別に応じた耐久性と性能の特性改善が求められています。また、燃料電池メーカー各社において、特性改善に加え、燃料電池車のコストをガソリンエンジン車と同等にするためのコスト低減の開発も進められています。

これらの技術課題の解決を促進するためにNEDO事業において、技術研究組合FC-Cubic等が研究テーマ「触媒・電解質・MEA内部現象の高度に連成した解析、セル評価」を実施し、現象解明など、自動車用燃料電池の基盤的な研究開発を進めています。このテーマのサブテーマとして、東工大の平井教授のグループは、X線による燃料電池作動時の反応生成液水の可視化の研究開発に取り組み、特に「高解像度化」に注力してきました。

これまで、作動中の燃料電池内の反応生成液水を高解像度で長時間にわたり可視化できる装置はありませんでした。今回、軟X線ビームの平行化技術※7とCMOS検出器※8を組み合わせ、観測用の燃料電池セル※9にも工夫を加えることによって、実験室に設置可能な大きさの装置に仕上がり、高解像の可視化像を得ることに成功しました。燃料電池の発電特性に影響が大きい燃料電池内部の各界面層での反応生成液水の挙動をµmレベルで計測する技術を開発することが出来ました。

  • 今回開発した装置(平行ビーム)と従来装置(コーンビーム)の比較
    図2 装置のシステム概要図
    軟X線ビームの平行化技術とCMOS検出器を組み合わせ、観測用の燃料電池セルにも
    工夫を加えることによって、高解像の可視化像を得ることに成功

【用語解説】

※1 リブ
燃料電池にガス供給する流路は、ゲタのように凸部と凹部から構成される。凸部はリブと呼ばれて、膜電極接合体(MEA)と拡散層を介して接触され電気の通電部の役割を果たす。凹部はチャネルと呼ばれて、外部から燃料電池の中にガス供給する通路と水などの排出通路になっている。
※2 GDL
Gas Diffusion Layerの略。化学反応に必要な空気と水素を効率よく導く機能を持つ。
※3 MPL
Micro Porous Layerの略。GDLの一部として物質移動の調整に利用されている層。
※4 「水素・燃料電池戦略ロードマップ」
※5 事業
「固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業/普及拡大化基盤技術開発」(2015~2017年度)
※6 技術研究組合FC-Cubic
燃料電池関連企業と大学、および産業技術総合研究所が参画し2010年4月2日に設立。産業界の燃料電池およびそのシステムの開発を支える共通基盤的な研究活動を行っている。
※7 軟X線ビームの平行化技術
従来のX線は、光源から放射光状に放出されていたが、これを平行に放出するようにした技術。
※8 CMOS検出器
光を電気信号にかえる素子の一種。原理的に画素間の影響を受けにくい特長があり、近年の技術開発で、高解像化されている。
※9 観測用の燃料電池セル
燃料電池中の液水をX線可視化するのに、セル構成部品の厚みを薄くして、 X線の吸収の影響を抑えるように設計されている。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:戸塚、門脇、大島 TEL:044-520-5261

東京工業大学 工学院 機械系 教授 平井
E-mail:hirai.s.aa@m.titech.ac.jp TEL:03-5734-3336 FAX:03-5734-3336

東京工業大学 工学院 機械系 特任教授 吉田
E-mail:yoshida.t.bg@m.titech.ac.jp TEL:03-5734-3853

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

(東工大 取材申し込み先)

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門
TEL:03-5734-2975 E-mail:media@jim.titech.ac.jp