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Press Release

高性能多孔質熱電材料の創製に成功

―未利用熱を有効利用する高耐久性熱電変換モジュールの実現を目指す―
2017年11月17日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社白山

NEDOプロジェクトにおいて、(株)白山らは、従来のn型熱電材料に対し6割以上の出力因子の性能を有する多孔質p型マグネシウムシリサイド系熱電材料の創製に世界で初めて成功しました。

今後、自動車エンジンの排熱や産業分野で300~400℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する低コスト・高耐久性熱電変換モジュールの実現を目指します。

なお、本成果は、2017年11月20日から22日まで東京ビッグサイトで開催される「INCHEM TOKYO 2017」の「NEDO省エネルギー技術フォーラム2017」で展示、最新の省エネルギー技術として取り組みや開発について紹介します。

  • 多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料で試作した熱電変換モジュールの写真
    図1 多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料で試作した熱電変換モジュール

1.概要

NEDOは2015年度より「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」※1プロジェクトを実施しており、事業範囲の中でイノベーションの創出やプロジェクトにおけるさらなる成果につなげるためには、当該事業分野において、関連する技術シーズの発掘や、技術課題の解決につながる取り組みを加速する必要があります。そこで、プロジェクトで開発を行っている「熱電変換材料・デバイス高性能高信頼化技術開発」に関して、これまでに取り組めていない新たな技術・材料などを発掘し、本格研究への移行の可能性を確かめることを目的に小規模研究開発を実施してきました。

今般、株式会社白山は、石川県工業試験場、国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学と共同で、マグネシウム(Mg)-シリコン(Si)-スズ(Sn)を出発原料とした基材を、造孔材(ポリビニルアルコール:PVA)※2を用いて多孔質化処理※3することで、多孔質n型熱電材料※4の開発に成功しました。さらにこの手法をp型熱電材料※5に応用展開し、電子構造計算に基づく物性予測を行うことで、n型熱電材料に対し6割以上の出力因子(Power factor)※6の性能を有する多孔質p型マグネシウムシリサイド(Mg-Si-Sn)系熱電材料の創製に世界で初めて成功しました。今後、自動車エンジンの排熱や産業分野における300~400℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する低コスト・高耐久性熱電変換モジュール※7の実現を目指します。

なお、この研究の成果内容は2017年11月20日~22日に開催される 「INCHEM TOKYO 2017」の「NEDO省エネルギー技術フォーラム」のブース内で展示します。なお、詳細は以下URLをご参照ください。

2.今回の成果

従来、n型のマグネシウムシリサイド系で高い熱電性能を示すことは知られていますが、p型については約2割程度の出力因子しか得られていませんでした。このためモジュール作製の際には、n型熱電素子にはマグネシウムシリサイド系熱電材料、p型熱電素子にはマンガンシリサイド系熱電材料を使用することが提案されていましたが、これらの構造では、熱電発電モジュール化した際に熱膨張率の差による熱応力破壊耐性に課題がありました。

本研究では、(株)白山が熱電材料の性能の向上、石川県工業試験場が構造解析、北陸先端科学技術大学院大学が詳細な電子構造計算に基づく物性予測を担当して、高効率化への研究開発を進め、Mg-Si-Snを出発原料とし、PVAを用いて多孔質化処理をする新技術で、無次元性能指数ZT※8=1.0(450℃)の多孔質n型熱電材料を開発しました。さらにこの手法をp型熱電材料に応用展開し、電子構造計算に基づく物性予測を行うことで多孔質p型Mg-Si-Sn系熱電材料の創製に世界で初めて成功しました。この新技術は、孔を含まない熱電材料と同等の導電率を持ちながら低熱伝導率であるという特殊な特徴や、「真空・不活性ガス置換焼結※9」という一般的な生産方式に基づいているため、工業生産への移行が容易であるという特徴を有しています。

熱電デバイスの構成を表した図
図2 熱電デバイスの構成

得られた多孔質材料の出力因子の温度依存性を図3に示します。実用温度である300℃付近において、多孔質n型熱電材料で2.0mW/K2m以上、多孔質p型熱電材料で1.14mW/K2m(多孔質n型に対し6割以上の性能)を実現しています。特にp型材料の値は従来モジュールのマンガンシリサイドと同等の値であり、同一組成材料で構成された高耐久性の熱電変換モジュールを作ることが可能となりました。

多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料(n型、p型)の出力因子の温度依存性を表した図
図3 多孔質マグネシウムシリサイド系熱電材料(n型、p型)の出力因子の温度依存性

3.今後の予定

本材料の製造技術は「真空・不活性ガス置換焼結」という一般的な生産方式に基づいているため、工業生産への移行が容易であることが特徴であり、熱電変換モジュールの低コスト化にも寄与します。(株)白山は、さらなる研究開発を推進し、2020年度末を目途に実用化および事業化を目指します。

 

【用語解説】

※1 未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発
プロジェクトリーダー小原春彦氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 研究戦略部 研究戦略部長)のもと2013~2022年度(うち2013~2014年度は経済産業省にて実施)で革新的な技術の研究開発を行う。
※2 造孔材(ポリビニルアルコール:PVA)
材料中に空孔を生じさせる添加剤。材料中のPVAは加熱により分解して気化するため、PVAが存在したところに空孔を作ることができる。
※3 多孔質化処理
多数の細孔を与える処理。熱電材料に多孔質化処理を行うことにより熱伝導率を低下させることができる。
※4 n型熱電材料
熱電材料は、両端に温度差をつけることで電圧が生じる性質を持つ。温度が高い方がプラスとなる性質を持つものを、n型熱電材料と呼ぶ。
※5 p型熱電材料
温度が高い方がマイナスになる性質をもつ熱電材料。
※6 出力因子(Power factor)
熱電変換材料の発電量を表す指標。ゼーベック係数s(v/k)の2乗に導電率σ(電気抵抗率の逆数 s/m)を乗じた量で単位は(w/k2m)、単位長さあたり温度差1℃でどれだけの電力が得られるかの目安となる。
※7 熱電変換モジュール
熱電変換技術に用いられる発電モジュールは熱電変換モジュールと呼ばれており、熱から電気へ効率的に変換するためにp型とn型の熱電材料が交互に接続された構造を持つ。
※8 無次元性能指数(ZT)
熱電変換では、2種類の異なる金属または半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用している。これら材料の性能を比較するための評価方法として、性能指数Z(1/K)がある。しかし、熱電変換材料の性能は動作温度にも依存するため、性能指数(Z)に動作温度(T)の積で表される無次元性能指数ZTも用いられる。
※9 真空・不活性ガス置換焼結
電気炉内雰囲気を真空や不活性ガスにできるガス置換電気炉であり、固体粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱焼結させることで粉末が固まって焼結体と呼ばれる緻密な物体になる。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 担当:近藤、今田 TEL:044-520-5281
(株)白山 R&Dセンター 担当:高木、早乙女 TEL:076-225-8582

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp