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データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版などの第2版を公開
―プラント事業者のIoT活用による自主保安力と生産性の向上に期待―

2019年4月25日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭

NEDOと(株)三菱総合研究所は、経済産業省とともにコネクテッドインダストリーズの実現を目指し、プラントの産業保安分野向けに、「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版」と「IoTセキュリティ対応マニュアル産業保安版」の第2版を取りまとめ、本日、経済産業省が公開しました。

これらの資料は、プラント事業者や産業保安分野の業界団体の協力を得て、データの提供に関する取引の在り方やIoTの特徴を考慮したセキュリティー対策について手引きとして整理したもので、産業保安の現場で活用されることにより、プラント事業者のIoT活用による自主保安力と生産性の向上につながることが期待されます。

1.概要

産業が目指す姿(コンセプト)として政府が提唱した「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)※1」の重点5分野の一つに「プラント・インフラ保安分野」が位置付けられています。現在、国内の多くの石油精製や石油化学などのプラント施設では、老朽化が進むほか、施設管理の知識や技術を持つベテラン従業員が引退の時期を迎えつつあり、今後、重大事故の発生リスクが増大する恐れがあります。そこで、自主保安力を高めるために、IoTやAIなどの新技術の活用が注目されています。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、IoTを活用した社会システムの変革を促すことを目的とする「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」(2017~2018年度)を実施しました。その中で、NEDOと株式会社三菱総合研究所は、産業保安分野におけるIoTなどの最新技術の導入促進を図る環境整備として、プラントデータの提供に関する取引の在り方やIoTの特徴を考慮したセキュリティー対策について原案を取りまとめ、2018年4月に経済産業省から「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版」と「IoTセキュリティ対応マニュアル産業保安版」の初版として公表しました。業界団体や専門家の意見を基に策定した、これらガイドラインを初版とし、実用性を高めるために実務者レベルの評価を受ける改定を進めていました。

その後、(株)三菱総合研究所は、プラント事業者や産業保安分野の業界団体に対して同ガイドラインなどの説明会やアンケートの実施、さらに各種の実証事業に携わる事業者による実務を想定したレビューなどを行い、収集した実務目線での意見を反映した契約ガイドラインとセキュリティーマニュアルの改訂案を作成しました。

今般、NEDOと(株)三菱総合研究所は、経済産業省とともに、本改訂案を「プラントデータ活用促進会議※2」に提出し、業界団体、弁護士、有識者の意見を集約、データの提供に関する取引の在り方やIoTの特徴を考慮したセキュリティー対策についての手引きとして、「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第2版」と「IoTセキュリティ対応マニュアル産業保安版 第2版」として取りまとめました。今後、これらのガイドラインとマニュアルが産業保安の現場で幅広く活用されることにより、プラント事業者がデータを有効に活用することで、自主保安力と生産性の向上につながることが期待されます。

なお、本契約ガイドラインとセキュリティマニュアルは、以下の経済産業省のWEB上に公開されています。

2.改訂のポイント

各種の実証事業に携わる事業者、業界団体や有識者から収集した意見を踏まえ、主に以下の内容について改訂を行いました。

【1】「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第2版」

  • モデル規約を別冊として追加
    従前の別冊、データ提供者とデータ受領者の二当事者間の契約を想定したモデル契約条項(相対契約型)に加え、新たな別冊として複数のデータ提供者と共通利用が可能な規約を想定したモデル規約条項(規約型)を掲載しました。
  • 法的論点の解説や、各契約条項の解説の充実化
    改正不正競争防止法、契約対象となるデータの区分、開示するデータの加工方法、データの保証などに係る法的論点の解説や、各契約条項の解説を充実させました。
  • 関連ガイドラインとの関連箇所を明記
    ユースケースと異なる形態のデータ取引につき、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(経済産業省商務情報政策局情報経済課)の参照が有用な論点については、同ガイドラインの関連箇所を明記しました。

【2】「IoTセキュリティ対応マニュアル産業保安版 第2版」

  • マニュアルの対象範囲と位置付けの明確化
    プラントデータ活用によって拡大するIoT環境において、新たに「制御システム」を守るための対応の考え方を整理することで、マニュアルの位置付けを明確化しました。
  • 具体的な事例紹介を追加
    本マニュアルで想定しているIoT機器は多様なものがあります。IoT機器の活用イメージについて、ユーザーの理解共有のために具体的な活用事例を記載しました。
  • 障害発生時の対応ポイントを追加
  • ビジュアル化
    読みやすさ・理解しやすさを向上するために、イラストや図表などを充実させました。

【注釈】

※1 Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)
経済産業省は、Society5.0を実現するための日本の産業が目指すべき姿(コンセプト)として、「Connected Industries」を提唱しました(2017年3月)。Connected Industriesは、既存産業とデジタル技術の「つながり」をはじめとして、機械、データ、技術、ヒト、組織などさまざまなもののつながりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指すものです。
※2 プラントデータ活用促進会議
経済産業省とNEDOにより開催された、プラントにおけるデータ共有・利活用の実現のために解決が必要な「データ提供のメリット明確化」「データ流出に対する懸念の払拭」「セキュリティの確保」「データ利活用人材の不足」などの課題について議論を行う会議の場です。業界団体や有識者により構成されています。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO IoT推進部 担当:工藤、服部 TEL:044-520-5211

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、藤本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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