本文へジャンプ

12345 

NEDOのがん対策プロジェクトの現状

より負担の少ない治療を実現する

図7~11

 がんの治療をする場合、より身体に負担が少なく、確実、安全な治療技術があれば、それに越したことはありません。本プロジェクトでは、このような治療を実現する機器として、高精度X線治療機器と内視鏡下手術支援システムの開発を行っています。
 高精度X線治療機器の開発目標には、「画像診断にて直径1cm以下で可視化できたものについては、一刻も早く、痛みなく、しかも機能不全もなく治すことができる治療法を提供する」ことを掲げています。これを実現するためには、がん病変部のみに集中的にX線を照射することができ、しかもそれが、体内の臓器と連動して動くがんに対しても可能でなくてはなりません。そこで、動く標的に対してあらゆる方向から、X線ナロービーム※6をがんの形状に沿って照射できる技術を開発しています(図7)。あらゆる方向から動体追跡しつつナロービームを照射するためには、動くヘッドを軽量化することはもちろんのこと、タイムラグなく動体追跡するためのロボット技術や制御技術も開発する必要があります。現在、小型高出力のX線出力システムなどが出来上がりつつある状況です。また、がんだけを正確に叩くためには、どの方向からどの程度のX線を照射するのか、画像データに基づく精緻な治療計画手法も開発する必要があります。実際の治療で活用される機器を開発するためには、患者に優しく安全であることに加え、医師が煩雑な治療計画からも解放される操作のしやすさも忘れてはならない要件だと思います。
 患者の身体に負荷の少ないもう一つの治療機器に、内視鏡下での手術支援システムがあります。内視鏡手術は、開腹手術と比べて低侵襲(ていしんしゅう)※7であるため、術後の患者の回復が格段に早く、例えば、抗がん剤投与など、次の治療を早く行うことができるメリットがあります。本プロジェクトでは、より安全で確実な治療技術を目指し、日本の優れた内視鏡技術、ロボット工学、情報処理技術を融合することで、がん病巣部をピンポイントで治療でき、医療従事者が扱いやすいインテリジェント手術機器の開発を行いました(図8)。開発した機器は、脳、胸部、消化器用の3種類で、いずれの機器も、それぞれの適用に応じて必要とされる高度な処置具やセンサーが装備されており、さらに高精度な3D画像を使用することで、患者の情報のリアルタイム収集と術者へのフィードバックが可能になり、より安全な手術が可能になると考えています(図9・10・11)。また、将来的にはIT技術を活用した遠隔治療システムへの展開も考えられ、地域や病院間の格差がない、患者が等しく優れた医療を受けられるようになることに貢献できればと思います。

  • 6 【X線ナロービーム】 従来までのX線治療器で用いられていたX線ビームよりも、小さな照射野(ビーム直径)を持つX線ビーム。
  • 7 【低侵襲】 病気や怪我のほか、手術や医療行為などで生体を傷つけることを「侵襲」と呼ぶ。手術や検査などによる痛みや出血などが少ないことを低侵襲であるという。

診断・治療マネジメントシステムの構築へ

 がんは体の様々な臓器で発生し、初期には痛みなどの症状も伴わないことが多く、さらに進行した場合は転移を繰り返します。このようながんをより早期に診断し、治療することは容易ではなく、技術開発の面で取り組まなければならないことが多くあります。例えば、単にがんの有無だけではなく、がんの性質や状態を詳しくかつ正確に把握するにはどうすれば良いのか、特に、予後の悪いがんをいかに早期に診断・治療するのかが、大変重要だと考えています。
 一方、種々の新たな診断・治療方法が開発される中、かかっている病院や医師の治療方針や得意とする領域によって治療の選択の幅が狭められている可能性があるとすれば、好ましいこととは言えません。種々の診断・治療の組み合わせが選択できるようになってきた今、新たな診断・治療技術の開発と共に、患者の遺伝的情報、生活習慣や症状、がんの部位や状態によって、最も適切な診断・治療技術が一貫して提供される機能、すなわち、診断・治療マネジメントシステムの充実を図ることが重要だと考えています。地域や病院によって、提供される診断・治療技術に差がないことを目指すことが重要であり、そういった意味で、様々な地域、病院にある診断・治療機能をITで一体的に運用できる技術も、今後求められる重要なソリューションになるのかもしれません。
 NEDOは、これからも優れた診断・治療機器を、それらがより効果的に活用され、皆さまのお役に立つ総合的なパッケージとしてお届けすることを目指して参ります。


«« 【前ページ】 血液検査でがんを見つける

【特集ページ目次へ戻る】

定期広報誌「Focus NEDO」第46号より