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次世代パワーエレクトロニクスが実現する未来社会

鉄道分野での導入が進む


鉄道分野図

次世代パワーエレクトロニクスの導入は、すでに実用化が始まっている鉄道分野から進んでいくと予想されます。大量の電力を使用する鉄道分野では、現在はまだ高価なSiC(炭化ケイ素)パワーエレクトロニクスを導入しても、十分な費用対効果があることがその理由です。具体的には、車両の床下にある電車のモーターを制御するインバーターへの導入です。新しく作られる車両だけではなく、既存の車両でも、SiCパワーエレクトロニクスを搭載したインバーターへの置き換えが徐々に進んでいくと予想されます。

■ ひと足早く導入開始! 鉄道を省エネルギー化する ■

電力とスペースを有効に活用

図1 SiCパワーエレクトロニクスによる省エネ効果/図2 鉄道車両の床下スペース削減

 次世代パワーエレクトロニクスの実用化が最も進んでいるのが鉄道分野です。実際、すでに地下鉄東京メトロの一部の車両に導入が行われています。この分野では、2020年をめどに本格的な次世代パワーエレクトロニクスの導入が予想されています。
 これらの実現にNEDOプロジェクトの成果である、「永久磁石モーター用インバーター」が活用されています。この成果にはSiC(炭化ケイ素)パワーエレクトロニクスが利用されており、従来と比較した大きなメリットとして、省エネルギー化と省スペース化の2点を挙げることができます。高効率のSiCインバーターは、インバーターでの電力損失を大幅に抑えることができます。また、電車ではブレーキを使用する時に発生するエネルギーを「回生電力」として回収・再利用しています。回生電力はインバーターを通して架線に戻していますが、SiCインバーターであれば、より多くの電力を架線に戻すことが可能になります。SiCインバーターの導入により約30%の消費電力量の削減が実現します(図1)。
 もう一つのメリットが小型化による省スペース化です。新しいインバーターでは従来のインバーターと比べて、約60%の体積削減を実現しています(図2)。インバーターの軽量化は車両のスピードアップなどにつながります。また、空いた空間に車内で情報サービスを提供するための情報通信機器を搭載することなども予想され、より充実した車内空間を実現することができます。さらに、現在は架線に戻している回生電力を、車両に搭載したバッテリーに蓄えるようにすれば、より効率的に回生電力の利用が期待できます。

2030年に20%削減を目指す

世界最大級の鉄道見本市「InnoTrans 2012」

 国土交通省は「エコレールラインプロジェクト」として、「2030年に、2010年比で鉄道の電力消費量を2割削減する」との目標値を2012年に打ち出しました。すでに省エネルギー化や環境配慮に取り組んできた鉄道分野でこの目標を実現するためには、新たな技術革新が必要とされています。そこで、この次世代パワーエレクトロニクスが注目されています。年間の電力使用量が日本全体の約2%にあたる、172億kWhである鉄道分野での省エネルギー化は大きな効果をもたらします。
 昨年9月に開催された国際的な鉄道見本市では、唯一、日本企業だけが、SiCパワーエレクトロニクスを搭載したインバーターを採用した車両を展示して、海外企業の高い関心を集めました。これは、すでに日本国内で導入され、省エネルギー効果が実証されていることも大きな理由です。鉄道分野での次世代パワーエレクトロニクスの導入は日本が世界を先導しており、国内だけにとどまらず、国際市場への参入など、輸出産業としても大きな期待が寄せられています。

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定期広報誌「Focus NEDO」第48号より