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北岡 康夫フェロー

2013年、ベルギーで開催された「第3回レアアースに関する日米欧三極ワークショップ」での講演の様子。

2013年、ベルギーで開催された「第3回レアアースに関する日米欧三極ワークショップ」での講演の様子。

「 経済産業省時代の上司からの依頼で、フェローの職に就きました」。北岡康夫フェローは技術戦略研究センター着任の経緯をこう話す。

1991年に大阪大学大学院を修了後、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社。一貫して青紫色光源の開発に携わった。それは光ディスクの高密度化技術に必要な技術で、光源開発以外にもさまざまな周辺業務に関わった。2006年、職を辞して大阪大学へ戻り、大阪大学大学院工学研究科附属フロンティア研究センター教授に就任した。

大阪大学では、窒化物半導体の研究を行い、ガリウムナイトライド(GaN)基板の研究開発に取り組んでいた。そんな中、2010年に大学から経済産業省へ出向の打診があった。当時、経済産業省と大学との間で人材交流の話が持ち上がり、北岡氏に白羽の矢が立ったのである。経済産業省では、製造産業局ファインセラミックス・ナノテクノロジー・材料戦略室に配属され、産業戦略官に就任した。「ちょうど着任した頃に、レアアース問題が起こり、戦略室も右往左往の大騒ぎでした」と当時を振り返る。中国からレアアースが輸出されなくなり、価格は高騰。物によっては10倍にもなった。半年後には東日本大震災が発生。材料素材メーカーの生産活動がストップしたため、世界中の企業が材料素材の調達に奔走し、サプライチェーンに大きな影響を与えた。

このとき北岡氏は、日本の素材産業の重要性を改めて痛感したという。「何とかしなければならない」と、自らが中心となって産業構造のサプライチェーンを分析し、日本の素材産業強化を目指し、いくつかの国家プロジェクトを立ち上げた。その経験を基に、技術戦略研究センターのナノテクノロジー・材料分野のフェローに就任した。「日本の素材産業は、世界に対して非常に優位にあります。中には圧倒的に高いシェアを誇る材料も少なくありません。これから重要なのは、単なる材料開発だけでなく、海外マーケットを見据え川下産業と連携して技術開発を推進することです」と北岡氏は強調する。

それには、大学と企業が一体となって、10年先の戦略をきちんと立て、国のハンドリングの下で共に携わる必要がある。「にもかかわらず、大学と企業の乖離が進んでいるという現実があります。大学側からは“企業が何をしているのか見えない”という声をよく耳にします」。その背景には、大学の産学連携に対する体制づくりの遅れと、企業のオープンイノベーションに対する遅れがある。「大学と企業の在り方、そこに対する国の関わり方も新たな段階に入り、新しい産学官連携を築く必要があると思います」と北岡氏。大阪大学で教授を務めながらそれを模索しつつ、NEDOのフェローとして個々の材料ごとに戦略を練っていく考えだ。

主要先端製品・部材の売上高と世界シェア(2012年)

製品別市場規模および各国企業売上高と世界シェア(バブルチャート)。右にある製品・部材ほど世界シェアが高い。

定期広報誌「Focus NEDO」第56号より