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いよいよ社会へ。水素元年、発進。

MIRAIに搭載されている燃料電池スタック

古川PHVはガソリンエンジンと電池で動くモーターの組み合わせですが、FCVはガソリンエンジンがないわけですから、これまでのクルマづくりで必要だったメカニックやエレクトロニクスとはまったく違う分野の人を巻き込む必要があったのではないでしょうか。概念が違う技術の知見をどう組み合わせていくか、簡単なことではなかったでしょう。

田中メカ的な部分については知見があるので、それなりに解決策が分かりますが、燃料電池のようなケミカル的な部分は、分からないところがたくさんありました。中でも、ポイントは大きく二つあったと考えています。一つは、安全性の考え方です。水素という新しい燃料をクルマに搭載する場合、どういうものだったらお客さんに安心して乗ってもらえるか。安全基準の考え方やフェイル・セーフの考え方をしっかり持つことが重要でした。

もう一つが出力の問題です。MIRAIは114kWの出力があるのですが、それを実現するために、燃料電池の性能を最大限に引き出す必要がありました。ところが、限界に近いところまで性能を出そうとすると、燃料電池の材料の特性変化が性能影響に直結します。それがたとえちょっとしたことでも性能に大きく影響が出てしまいます。販売予定の1年半ほど前、量産フェーズに移行しようという段階で、高分子系の材料に課題が発生しました。もう完全にスペックが固まっている時期でしたので、この時点での大きな変更は非常にリスクを伴います。しかし、今の段階のまま次のステップに移行して、トラブルが起きたら大きな禍根を残すことになると考え、ストップをかけ、原因を徹底的に究明し、対策をしました。ケミカルに関することだったので、慎重には慎重を期しました。

新しい生産技術を開発しFCVをより多くの方に

古川MIRAIは発売以来、大ブレークして、現在は納車まで3年以上かかると聞いています。こうした状況は徐々に緩和されていくと思いますが、FCVの普及に当たり、田中さんが考える課題というのは何でしょうか。

田中われわれとしてはクルマをもっと早く、かつ多くお届けできるようにすることが、一番の課題と思っています。ところが、心臓部の燃料電池スタックには、相当精緻な加工技術・新技術が使われておりまして、ガソリンエンジンを生産するようにはいきません。今年は約700台の生産を計画していますが、来年は年2000台、2017年には年3000台というのが現段階で精いっぱいという状況です。例えば生産規模を一桁増やすためには、機械加工のような量産技術で新たなブレークスルーが必要になります。

もう一つの大事な課題は、水素ステーションです。数を増やすことも大事ですが、ロケーション、すなわちより便のいい場所につくっていただくことが大事ではないかと思います。水素ステーションとFCVはよく「花とミツバチ」に例えられますが、2011年に自動車メーカーやエネルギー会社等で共同声明を行ったように、自動車メーカーもがんばってつくりますので、水素ステーションも継続的につくっていただける状況になればよいと思います。

古川NEDOはFCVが大量生産されると予測されている2025年を目標に、今の10倍の性能を持った燃料電池の開発を行う「固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業」を今年度から開始したところです。また、水素ステーションは、やはりFCVの普及にとって重要だと考えています。2006年度から水素ステーションの実証試験を開始し、機器の低コスト化の技術開発等を行ってきましたが、水素ステーションのコスト問題、ロケーションの問題等、まだまだやるべきことがたくさんあると思っています。公的機関として将来を見据えて、民間1社ではなかなか開発できないような難しい技術を産官学で進めると同時に、規制の見直しや国際基準の獲得等、今後も世界をリードした取り組みができればと思っています。

田中国際標準については、電気自動車(EV)の充電プラグは残念ながら世界でいくつもできてしまいましたが、水素関連については一歩も二歩もリードしていただいているので本当に感謝しています。また、安全性の話をしま したが、第三者機関であるNEDOのようなところが安全基準を評価していただけると大変ありがたいです。水素ステーションも実際に使用してみて初めて分かることがあると思いますので、集まったデータをニュートラルな立場で分析いただき、その知見を水素ステーションのみならずクルマにもフィードバックいただくことで、もっと良い形のFCVができ、FCVの普及により弾みがつきますね。

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定期広報誌「Focus NEDO」第57号より