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連載シリーズインタビュー(Focus NEDO44号より)

諸住 哲写真

ヨーロッパやアメリカでは、普及が進んでいるメガソーラ。日本では、これまであまり建設されていなかった。しかし、今年7 月に再生エネルギー特措法が施行されるのを契機に、日本でもメガソーラが増えることが予想されている。日本でのメガソーラの現状や今後の課題、世界の動きなどについて、NEDOスマートコミュニティ部の主任研究員に聞いた。


(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
スマートコミュニティ部 主任研究員 諸住 哲

諸住 哲(もろずみ さとし)プロフィール●1985年北海道大学大学院工学研究科博士課程修了後、1986年株式会社三菱総合研究所入社。2006年NEDOへ出向 新エネルギー技術開発部主任研究員、2010年NEDOに転籍、同年7月より現職。

メガソーラ普及に向けて、実証研究に基づく手引書と支援ツールの活用を

―なぜメガソーラが必要なのでしょうか。また、日本の現状はどのようなものでしょうか。

諸住 CO2の削減のみならず、エネルギーを取り巻く様々な情勢の変化に対応するためにも、太陽光や風力のような再生可能エネルギーを増やしていくことが必要です。日本ではこれまで、一般家庭による屋根置きの太陽電池パネルによる発電が多かったのですが、これは従来、太陽光発電による余剰電力の買い取り価格が、1kWh 当たり10円台で、主に家庭への普及を目指していたからで、メガソーラでは採算が合わず、普及が進んでいませんでした。その中で、NEDO は国家プロジェクトとして太陽光発電の実証実験に取り組んできました。

今年の7月1日から施行される再生エネルギー特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)で、固定買取価格が新たに設定され、非住宅用では発電量の全量が買取対象になるなど、自治体や民間企業で、メガソーラを事業として始めるところが出てくる状況になっています。

蓄電池の設置により、“電気の在庫”を持つという、世界初の試みを実施

―メガソーラが普及するためには、どのような課題があるのでしょうか。

海外のメガソーラトップ10

諸住 屋根置きに比べて、地面置きが多いメガソーラは、パネルを支える架台や基礎を設置する必要があります。これらは関連法令を満たしていなければならないので、どうしてもコストが高いものになります。そのコストをいかに下げるかが第一の課題です。また、屋根置きのものは、電力会社の系統との連系の認証品がありますが、メガソーラ用の認証品はありません。そのため、連系のための認証を得るのに、パワーコンディショナの性能や特性のデータをつけなければならず、手続きが煩雑で専門性が必要です。その認証制度を整備することも課題の一つです。さらに、未利用の農地に建設する場合、認可の手続きが難しいので、こうした土地の利用に関する法令の規制緩和も必要でしょう。

―メガソーラについて、世界的にはどのような動きがあるのでしょうか。

諸住 日本では一般に、太陽光発電は、コストが高いという認識があると思いますが、世界的に見ると、現状では、いわば価格破壊モードといってよい状況になりつつあります。カドミウム・テルルという化合物を使った太陽電池の価格が安く、比較的効率も良いため、太陽光発電のコストを押し下げています。最近では、1kWh 当たりの発電コストが15円くらいにまで下がってきています。

 また、日本では、再生可能エネルギーは地産地消というイメージがありますが、ヨーロッパでは、風力発電は北方の洋上に、太陽光発電は北アフリカの砂漠に建設するなど、大規模に投資し、大規模に回収するといった規模の経済が成り立つ流れにあります。

 フィードインタリフ(固定価格買取制度)についても、ヨーロッパでは10年ほど前から実施していましたから、設置、制度ともに日本が遅れをとっているという感は否めません。

―稚内と北杜でNEDOが実施したメガソーラの実証実験にはどのような特徴がありますか。

日本の主なメガソーラ

諸住 稚内のメガソーラは、蓄電池がついているという大きな特徴があります。通常の太陽光発電は日が出ている間しか発電できないので、設備稼働率は約12%です。火力発電などの電力設備の55~60%の5分の1 ほどで、従来の発電を太陽光発電でまかなうとすると、5倍の土地が必要になってしまうことになります。しかし、余剰電力を蓄電池に貯めておくことで、送電の変動を吸収することができます。いわば、電気の在庫を持つということで、このおかげで、稚内では、翌日にどれくらいの電気を送れるかをアナウンスすることができます。これは世界初のことです。

 一方、北杜では、27種類の太陽電池の特性を比較するとともに、新しいタイプのパワーコンディショナを開発しました。実証期間中にも発電特性の推移を研究し、劣化特性のデータをとっていますが、これは移譲先にも引き継がれ、継続してデータをとっています。

 また、架台を低く設定した場合、設備周辺で伸びた草を刈るときに草刈り機が石を飛ばす危険があることや、カラスが石を落として、太陽電池のガラスが割れることがあるなど、実践的な経験が積まれました。

―それらの実証研究を経て「大規模太陽光発電システム導入の手引書」と「検討支援ツール」ができたわけですが、どのように活用すればよいでしょうか。

諸住 手引書は、2010年にまず暫定版を、そして2011年に現在のものにまとめました。メガソーラを導入する際に必要な手続きを解説しており、設備を設計するときの留意点などを一通りまとめています。メガソーラを事業として進める場合のよりどころとして、必要なことはだいたいわかるようになっています。また、検討支援ツールは、太陽電池を設置する架台の設計や、発電のパフォーマンスなどがわかるものです。今後、メガソーラに関する規制緩和の論議も行われることでしょうが、その議論のベースとして活用できるだろうと思います。昨年、全国5 都市で開催した説明会には、電気工事をする事業者や公募を見据えた自治体の担当者などのべ552名が参加し、メガソーラに対する関心が高いことがわかりました。

規制緩和と人材育成がメガソーラ普及のカギを握る

―メガソーラの普及に向け、今後の展望についてお聞かせください。

諸住 メガソーラを建設できる場所に制限のある日本では、北アフリカの広大な砂漠に建設するようなメガソーラは、ごく限定された場所にとどまり、小規模のメガソーラが多くできるだろうと思います。かつて、太陽光発電や風力発電が導入され始めたころ、これらは発電所と想定されておらず、工場としての扱いになっていました。そのため、工場立地法という法律が適用され、一定の割合で、敷地内を緑化する必要があります。風力発電所は、比較的容易に緑化できるのですが、太陽光発電所は、ただでさえ広い土地が必要なのに、そのうえ緑地も必要ということになると、土地の利用効率が悪くなってしまうため、規制緩和の必要があると思います。そのほか、電力系統との連系や土地転用手続きの簡素化なども必要です。また、電線がないところにメガソーラを建設した場合、新規設置費用は、メガソーラ事業者が負担しなければならず、コスト負担増という問題点もあります。こうした問題は社会の中で解決していかなければならないでしょう。

 太陽光発電のコストは、今後10年くらいの間に大幅に下がり、普及も進むと思います。ただ、電力の自由化には、電気の理論を熟知した人材が必要ですが、電力会社以外で、メガソーラの知識を持った人があまりいないことが懸念されます。設計、コスト、環境などトータルでメガソーラを考えることができる人材を育てるという観点からも、手引書や検討支援ツールが貢献できるだろうと考えています。


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定期広報誌「Focus NEDO」第44号より