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連載シリーズインタビュー(Focus NEDO45号より)
高倉秀和氏写真

日本の優れた技術をパッケージ化し、新たなビジネスモデルを創出
NEDOは世界各地でスマートコミュニティ実証事業を行っています。
こうした海外実証事業は、どんな意義を持ち、どんな成果をもたらすのか。
NEDOスマートコミュニティ部の髙倉秀和部長に聞きました。


(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
スマートコミュニティ部 部長 髙 倉 秀 和

髙倉 秀和(たかくら ひでかず)プロフィール●1992年東京大学大学院工学系研究科を修了後、通商産業省へ入省。2001年英サセックス大学科学技術政策専攻修了(理学修士)。2007年経済産業省貿易経済協力局、2008年日本貿易振興機構ジュネーブ事務所、2011年2月よりNEDO技術開発推進部、同7月より現職。

国内で蓄積された技術や知見をさらにグローバルな技術に

 NEDOは2000年頃から、スマートコミュニティを形成する様々な技術開発を行い、知見を蓄積してきました。再生可能エネルギーの系統連系技術のほか、大規模太陽光発電や風力発電所と蓄電技術を組み合わせた様々な実証研究も行っています。さらに、スマートグリッドと呼ばれている技術、つまり大規模太陽光や風力発電所などの分散型新エネルギーを組み合わせて、その地域の電力事情に応じて需給バランスをとるシステム的な技術の実験も、現在に至るまで、約10年にわたって進めてきています。こうした実績があるからこそ、NEDOは世界各地の様々な特性に応じた、最適なシステムを構築することが可能なのです。

日本の技術システムが海外でも適用可能であることを実証国際標準化の推進にも貢献

 NEDOでは、スマートコミュニティ開発の実証事業を世界各地で行っています。現在、実証に取り組んでいる地域は、米国のニューメキシコ、ハワイなど5か所です。
ロスアラモス(メキシコ)  海外において実証事業を行うことには、法令や社会システムの違いなど、海外ならではの、地域によって異なる様々な条件下での実証が行えるというメリットがあります。
 例えばニューメキシコでは、電気料金をリアルタイムで変化させ、電力需要が大きい時間帯には高い電気料金を設定することで需要の集中を抑制する実証を行います。これは、米国の電力市場が自由化されており、料金設定が柔軟にできるなど、実証を行う条件が揃っているからです。また、日照時間や気温、気圧など、スマートコミュニティを構成する技術である太陽光発電や燃料電池などが、日本とは異なる自然環境下で必要な制御に耐え得るか、サーバー攻撃のような新たなリスクにも対応できるのかといった面でも、その信頼性を確認し、実証していく予定です。
マウイ島(ハワイ州・米国)  とりわけスマートコミュニティにおいては、個々の技術だけではなく、これらを繋いでシステムとして最適化させるための「標準化」が不可欠ですが、これも個々の民間企業では実現が困難です。「国際」標準化ですから、海外において、海外の企業や研究機関と一緒に実証した共通の成果が有効性を持つわけです。そこで政府、民間企業、NEDOが協力し、海外展開や関連機器の国際標準化を推進する実務母体となる「スマートコミュニティ・アライアンス」を設立。NEDOはその事務局を務めており、海外実証事業の知見の反映と、標準化に向けた活動に大きく関与しています。

世界各国が関心を寄せる、スマートコミュニティで存在感を発揮

2011年11月22日、米国ハワイ州マウイ島で実施するスマートグリッド実証事業のMOU(基本協定書)をハワイ州政府と締結。

 今後は、日本国内はもとより、人口の増加と経済成長の著しいアジアを中心とする新興国において、スマートコミュニティの必要性が増大する見込みです。こうした情勢を踏まえ、日本の優れた技術のシステム化を進め、世界のインフラ・システム輸出市場を獲得していくことが国家的ミッションとして期待されています。スマートコミュニティ構築に必要な技術群は、日本の得意分野です。NEDOは、その優れた技術をシステムとして構築することで、世界を舞台に貢献したいと考えています。
 一方、民間企業が海外進出を試みる場合、資金調達やリスク管理の困難性、トータルでの事業経営・商習慣等に関するノウハウ不足など、これまで経験したことのない課題に直面することが多く、それほど容易ではありません。とりわけスマートコミュニティ・システムの輸出は、まさに「まち作り」に直結しますから、海外の公的機関の関与の下に制度改定を要することもあり、そうした機関の協力を得るためには政府間での協力関係の構築が不可欠です。そのため、政府機関であるNEDOの役割は重要となります。また、NEDOの海外実証事業では、各国の政府や地域、企業などと連携しながら実証を進めていくことで、世界の多様な国・地域ごとに異なるニーズを吸収し、多様なノウハウを蓄積することが可能となります。海外における実証事業は、この分野において日本が先導していくためにも欠かせないのです。
 スマートコミュニティによって生み出される巨大な新市場において日本が存在感を示すには、優れた技術や素材を有する企業がお互いに手を組み、時には、相手国政府との関係では官民一体となって「オールジャパン」体制で新たなビジネス展開を図ることが必要です。実証事業の実施、標準化、そして政府間交渉をトータルで担うことができるのはNEDOだけです。私たちNEDOは、その中心的な役割を担っていきたいと考えています。


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定期広報誌「Focus NEDO」第45号より