本文へジャンプ

12 

連載シリーズインタビュー(Focus NEDO47号より)

伊藤 正治氏写真

インタビュー記事

欧州を中心に洋上風力発電の建設が活発になっています。国内でも、再生可能エネルギーへの期待の高まりを背景に注目を集めています。
NEDOは2009年度から沖合洋上風力発電への取り組みを進めており、世界的な洋上風力発電のトレンドとその中でのNEDOプロジェクトの位置付けについて紹介します。


(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
新エネルギー部 自然エネルギーグループ 主任研究員 伊 藤 正 治

伊藤 正治(いとう まさはる)プロフィール●2006年4月より新エネルギー技術開発部の風力担当を経て、2009年10月より現職。

世界の洋上風力発電をリードするイギリス

 世界で最も風力発電の導入が進むEUでは2020年時点の再生可能エネルギーの比率を20%とする目標達成のため、法的拘束力のある目標値を各国に課しています。中でも風力発電への期待が大きく、陸上の適地が減ってきていることや北海油田の減産に伴う雇用確保の観点などから、風力発電の設置を陸上から洋上にシフトする動きが広がっています。
 欧州における洋上風力発電は、1990年にスウェーデンの洋上に設置された1基の定格出力220kWの風車が始まりと言われています。その後、2000年にはデンマークに世界初の本格的な商業洋上ウィンドファーム(Middelgrunden洋上風力発電所)が完成しました。これは、2000kWの風車20基が海岸から2km地点に建設されており、世界一美しい洋上風力発電所と言われています。その後、イギリスを中心に導入が進み、現在、世界で約405万kWが導入されているところです。

 欧州では、現在、イギリスやドイツが風力発電企業の研究施設や製造拠点を集積し、風力発電事業を国の一大産業として発展させ、世界の洋上風力発電市場をけん引しています。
 イギリスでは2020年までに1800万kWの洋上風力を開発するというロードマップを発表しています。洋上風力発電設備を設置する大陸棚の所有権が王室にあるため、利用に際し、英国王室の海域の資産管理を行う政府系特殊法人クラウン・エステート(The Crown Estate)社の許可が必要です。海岸線に比較的近くて浅くにある「ラウンド1」から海岸線から離れて水深の深い「ラウンド3」の3段階に分けて大陸棚利用の入札が行われています。最も大きな「ラウンド3」の貸出海域の規模は約3200万kWに設定されており、現在、世界で最も注目されている、洋上風力発電の市場となっています。

克服すべき三つの課題

 風力発電は、再生可能エネルギーの中で成熟した技術体系と豊富な実績を持ち、かつ、発電原価が低いという理由から、世界的に導入・普及が進んでいます。
 日本でも風力発電の導入は、陸上を中心に2000年代前半から急速に増加し、2011年度末には約255万kW(1870基)に達しています。しかし将来、風況や立地制約などの面で風力発電の適地が減少すると予想される中、風力発電の導入拡大を図るためには、膨大なポテンシャルが期待される洋上風力発電の展開を図る必要があります。

風車概要写真


 洋上風力発電の課題は、大きく三つあります。
 一つはコストです。洋上風車は海上に設置するため、風車や基礎(海中に没している土台の部分)、海底ケーブルの設置工事など、陸上の約2倍のコストがかかると言われています。また、運転開始後のO&M(部品交換などの維持管理)についても、陸上風車と異なり、多くの費用を要します。当然、離岸距離や水深によってもコストは異なり、最近の欧州の洋上ウィンドファームは、陸域から遠く、水深の深い海域に移行しつつあるため、設置コストも上がっています。
 二つめは技術です。初期の洋上風車は増速機や発電機の故障が頻発したため、塩害対策や風車の状態を遠隔監視する技術など、信頼性を向上させるための技術開発が進められています。また、設置場所が浅い海域から深い海域へ移行する場合、コスト低減のため風車1基当たりの発電量を増やす必要があり、風車の大型化と信頼性の向上が洋上風車の技術開発の大きな課題となっています。
 三つめは、社会受容性です。漁業者など海面利用者の理解なくして洋上風力発電は成立しません。そのため、洋上における環境アセスメントが重要になってきます。
 こうした課題は、自然環境や社会環境など欧州の洋上風力発電事情と大きく異なる面があるため、現在実施している実証研究によって、日本に適合した、低コストの洋上風力発電技術を確立する必要があります。


【次ページ】 / 【特集ページ目次へ戻る】

定期広報誌「Focus NEDO」第47号より