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連載シリーズインタビュー(Focus NEDO48号より)

時代を先取りして新たな産業を創出する
吉木政行氏写真

電力を有効利用するためのパワーエレクトロニクスは、エネルギー社会を支えるキーテクノロジーとして大きな注目を集めています。
NEDOは、1998年から次世代パワーエレクトロニクスの研究開発の取り組みを始めました。現在、NEDOプロジェクトの成果が実用化され始めています。
ここでは、次世代パワーエレクトロニクスの展望について、NEDOの吉木主幹に話を聞きました。


(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
電子・材料・ナノテクノロジー部 主幹 吉 木 政 行

吉木 政行(よしき まさゆき)NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 主幹 2003年NEDO入構。研究開発推進部主幹、電子・情報技術開発部主幹などを経て、現職。

成長する次世代パワーエレクトロニクス市場

図1 拡大するパワーエレクトロニクス関連市場

 現代社会は、あらゆるものが電気で動く時代です。電気を利用するためには、交流と直流の変換や、適切な電流・電圧・周波数に調整する必要があります。このための技術がパワーエレクトロニクスです。
 パワーエレクトロニクス関連の世界市場は年々拡大していて、2020年には2012年の約3倍に成長すると見込まれています(図1)。電力をより効率的に利用し、電力損失をより小さくできるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)が次世代のパワーエレクトロニクス材料として注目されています。NEDOは、SiCを1998年から、GaNについては2008年から開発を支援しています。
 現在、SiCについては、6インチウエハーの量産設備やデバイス化技術の進歩により、国内でも実用化され、身の回りにも導入され始めてきたところです。

次世代パワーエレクトロニクスが省エネルギー社会を実現する

 次世代パワーエレクトロニクスはSi(シリコン)と比べて、①耐圧性が優れている、②高温での動作が可能、③電力損失を低減できる、という特長があります。これにより、大電流を流せるようになるということと、インバーターなどのパワーデバイスを小型化できるというメリットがあります。
 例えば、NEDOの「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発(2006~2008年度)」では、三菱電機が従来の4分の1の大きさのSiCのインバーターを実証しました。これは、SiC自身の性能に加えて、冷却システムを簡素化できたことが大きな理由です。
 次世代パワーエレクトロニクスを搭載したインバーターは小型化できるということに加えて、電力損失も低減できるので、機器の省エネルギー化にも大きく貢献します。電力損失を数%低減するだけでも、日本全体の二酸化炭素排出量や化石燃料の削減効果は莫大なものになります。
 また、市場としての魅力という点で、次世代パワーエレクトロニクスの最大の目標は自動車への適用です。次世代パワーエレクトロニクスは耐熱性があるためエンジン周りに搭載できることと、耐圧性が高く、大電流を流せるようになるため、電気で走る電気自動車や燃料電池自動車のキーコンポーネントになると考えられています。

産業化までを見据えたプロジェクト

 NEDOが最初に取り組んだプロジェクトは超低損失のパワーエレクトロニクスの技術開発「超低損失電力素子技術開発(1998~2002年度)」です(図2)。当時は、京都議定書が策定されたこともあり、地球規模での温室効果ガス排出量削減への取り組みが最重要課題でした。

図2 NEDOのパワーエレクトロニクスプロジェクトの変遷と成果
 このプロジェクトでは、主にSiCを対象とした大口径、高品質のウエハー製造を目標に進めてきました。大口径では4インチウエハーを、高品質では2インチウエハーの製造技術を達成しました。このプロジェクトで蓄積された多くの基礎技術のノウハウを活かし、その後も、ウエハーの大口径化と高品質化について、重要テーマとして継続的に取り組んできました。  しかし、基板であるウエハーだけができても、その他の電子部品や回路などの周辺技術がそろわないと実用化はできません。そこでNEDOは、ウエハーからデバイス製造まで一貫した研究開発を推進してきました。
 新しい材料が実用化されるまでには、ウエハー・デバイス・周辺材料を開発する企業に加え、基礎的な原理を明らかにする大学など多様な連携による長期的な研究開発が必要になります。NEDOは、こうした産学官かつ垂直型の連携による研究開発を実施してきました。こうした、継続的なプロジェクトを通して、単純な技術支援だけではなく、産業化のための下地づくりにも寄与してきたと思っています。


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定期広報誌「Focus NEDO」第48号より