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連載シリーズインタビュー(Focus NEDO48号より)

6インチ化の実現によってビジネス展開に向けた素地は整った
奥村 元氏写真

30年以上にわたり、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの次世代の材料やそのデバイスへの応用研究開発に従事、数多くの優れた成果を上げ、産学官プロジェクトのプロジェクトリーダーやサブプロジェクトリーダーを務める奥村元氏に、次世代パワーエレクトロニクスへの期待と課題についてお話を聞きました。


NEDO「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」プロジェクトリーダー
産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター 研究センター長
TPEC組織長 奥 村    元

奥村 元(おくむら はじめ)京都大学大学院理学研究科化学専攻 修士課程修了後、通産省工業技術院電子技術総合研究所入所。90年、工学博士(大阪大学)学位取得。2001年、独立行政法人産業技術総合研究所パワーエレクトロニクス研究センター入所。エネルギー半導体エレクトロニクス研究ラボ(研究ラボ長)を経て、2010年より現職。

大口径かつ高品質なSiCウエハー実現へ

――今までの、次世代パワーエレクトロ二クスプロジェクトの意義について教えてください。

奥村 SiCウエハーの実用化に向けた、大きな課題である「大口径化」によるコスト低減と、日本製の特長である、「欠陥が少ない高品質なウエハー」の実現の2点に重点的に取り組んできました。
 NEDOの最初のSiCパワーエレクトロニクス関連のプロジェクトである「超低損失電力素子技術開発プロジェクト」(1998~2002年度)で、国内のSiC関連技術の研究基盤ができました。その後、現在に至るまで10年間絶えることなく、材料であるウエハーからパワーデバイス、実装まで一貫したプロジェクトをNEDOにて実施してきました。
 SiCウエハー大口径化については、NEDOプロジェクトにおいて2002年に高品質2インチと4インチを達成し、現在は高品質6インチウエハーまで達成しています。
 大口径化のプロセスの中でも、6インチを実現したことには特別な意義があります。6インチの実現によって、既存の6インチSi(シリコン)製造ラインを転用して、低コストでの量産が可能になったことで、メーカーにとってビジネス展開時の投資リスクが大幅に軽減されます。
 結晶欠陥が極めて少ない超高品質なウエハーについては、NEDOプロジェクトを含めて我が国において開発された独自の結晶成長法によって実現することができました。特に自動車分野では、高い安全性や信頼性が求められるため、この分野での国際的競争力の向上という意味でも大きな意義を持つと考えています。
 ようやく実用化への道筋が見えてきましたが、新たな材料開発において、基礎研究の成果を産業化につなげるという、本当の意味でのイノベーションには、やはり10年単位の時間がかかるということを痛感しています。

次世代パワーエレクトロニクス開発における、今後の展望と課題

――今後、日本における次世代パワーデバイス(特にSiC)のさらなる開発にあたっては、どのような課題があるのでしょうか。

奥村 引き続き「高耐圧化」、「高耐熱化」、「高信頼性」をキーワードに、開発を行っていくことになります。
 現在、耐圧1kV級までの領域では、すでにSiCパワーダイオードが家庭用エアコンやサーバー電源などに搭載されて実用化され、SiCパワートランジスタの採用も目前に来ています。現在は、鉄道や重電機器に利用される数kV級のパワーデバイスを中心として、ウエハーからシステムまでの研究開発が行われているところです。そして長期的には、スマートグリッドや送電網などに使われる10kV以上の超高耐圧デバイスの開発を目指します。市場的な魅力という意味では、次世代自動車などへの搭載が期待される高信頼のパワートランジスタが一番のポイントになると思います。
 10kV以上の超高耐圧デバイスの領域はマーケットが小さいため、民間企業にとっては魅力がないと捉えられがちです。ただ、日本にとってエネルギー問題は国家的課題です。そのため、国の強力な舵取りによって、民間のリソースを集約させ、この領域にも取り組む必要があると思っています。今後も、産業界が独自に取り組む領域と、国が取り組む領域の切り分けを行い、継続的な取り組みが必要だと思っています。


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定期広報誌「Focus NEDO」第48号より