本文へジャンプ

1234 

連載シリーズインタビュー(Focus NEDO52号より)

日本の産業競争力の観点からも重要なスマートコミュニティ分野の取り組み
山本氏写真

NEDOは、2000年頃から大規模の太陽光発電や風力発電などを電力系統につなげるための系統連系技術の開発と実証事業を実施し、その利用拡大に向けた取り組みを進めてきた。
これまでの知見を踏まえ、現在は、電力系統だけでなく対象エネルギーを熱にも広げつつ、需要家サイドさらには交通システムとも情報のやりとりを行い、地域全体のエネルギー需給を最適化・効率化する「スマートコミュニティ」の実現を目指し、実証事業を展開している。その現状と成果についてNEDOスマートコミュニティ部の山本雅亮部長に聞いた。


(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
スマートコミュニティ部 部長  山 本 雅 亮

国際協力で世界共通の環境問題に取り組む

――スマートコミュニティの定義およびNEDOが取り組んでいる実証事業の特徴について教えてください。

山本 スマートコミュニティとは、これまで供給サイドからの一方通行だったエネルギー供給の仕組みにITを用いて、需要サイドと双方向で情報を共有することにより、エネルギーを賢く使う仕組みのことです。NEDOではスマートグリッドではなく、スマートコミュニティという言葉を用いています。グリッドという電力系統だけでなく、例えば交通システムや住宅、オフィス/商業ビル等の需要家など、広がりを持った分野に取り組みたいという意味を込めてのことです。
  NEDOが現在取り組んでいるスマートコミュニティ実証事業は、①日本企業のさらなる海外展開を促進する効果が大きい、②技術実証というだけではなくデマンドレスポンスのように人間の反応を探る社会実験の側面が大きいという特徴があり、今の時代においては政策的意義が大きいと実感しています。

――世界におけるスマートコミュニティの将来展望について教えてください。

山本 今や先進国だけではなく、新興国も含めて数百のスマートコミュニティ実証実験が実施されており、スマートコミュニティは世界的な流れとなっています。また、地球環境問題に対する再生可能エネルギーの高度利用や、自然災害に対する備えとしてのマイクログリッドにスマートコミュニティ技術は不可欠となっています。これらは、世界共通の技術課題であり、NEDOが国際協力体制の下で技術実証を行うのはこのためです。スマートコミュニティの世界の市場規模については今後急速に拡大することが予測されています。日本が長年培ってきた省エネ技術、系統制御技術、さらには我が国が技術面で世界をリードする蓄電池技術等に基づいたシステムインフラ輸出の点において、スマートコミュニティ分野への取り組みは産業競争力の観点からも重要と認識しています。

政府間ベースでの交渉を通じて実証の場を創出

――NEDOの役割や実証事業のミッション、現在の取り組みについて教えてください。

山本 日本企業は、個々の技術力は高いものがありますが、システム全体として上位から市場参入していくことや、現地に自力で入り込んで連携関係を構築し、海外展開を図ることはこれまで必ずしも強くはありませんでした。そこでNEDOは、“足場づくり”として民間企業単独では実現困難な技術的・社会的実証を現地政府機関とともに行うために、相手国政府や自治体との政府間ベースでの交渉を通じて“実証の場”をつくり出しています。
 ここで技術的実証という言葉を用いているのは、相手国や地域ごとに異なるニーズを満たすために、我が国の優れた技術の組み合わせを最適化し、カスタマイズするためです。また、社会的実証という表現を用いているのは、初めに申し上げたようにスマートコミュニティ実証は人間の反応を探る側面が大きいためです。こうした実証を成功させるためには、問題意識を共有し、住民に社会実験への参画を呼びかける意欲のある自治体を見つけ、協力を得ることが重要です。また、現地住民のエネルギー・環境問題への関心がさまざまである中で、より多くの人々にピークカットや省エネ行動などに参加してもらえる環境構築や仕組みを設定することも必要です。
 こうした考え方の下で現在、米国、フランス、スペイン、インドネシアで実証事業を進めています。検討段階のものを含めればさらに多くのプロジェクトに取り組んでおり、実証開始に向けて着々と進展しつつあります。

――プロジェクトの成果はすでに出ているのでしょうか。

山本 全体としてはまだ実証運転を開始して間もない案件が多い状況ではありますが、ニューメキシコの実証事業においては実配電系統を利用して、天候予測情報に基づき、定置用蓄電池が太陽光発電の変動を適切に吸収し、地域の電力安定供給と経済的な電力調達に貢献するマイクログリッドの実現や、商業施設において非常時に電力系統から切り離して自立電力供給への移行に成功するなど、具体的な実験結果が出始めてきています。自然災害による停電対策やシェールガス革命を背景とした低コストな分散型電源への期待の観点から、マイクログリッドへの関心が高まっている米国において、現地のニーズに沿ったタイムリーな成果を得られていると思います。
 また、これまでの活動を通じて、すでに地元企業や相手国自治体との連携関係の確立など、将来の自立展開に向けてのプラスの効果が現れてきています。例えば、実証事業での地元企業との連携が別のビジネスに発展することや、実証運転で日本企業の実力を示すことが商機を呼び込むことにつながっています。また、これまで主に国内で技術やシステムの高度化を果たしてきた日本の重電産業などが海外でその実力を示すことに有効に機能しているように感じています。さらに、相手国政府や自治体との関係の足場ができることも大きく、実証事業を契機として相手国政府や自治体から別の取り組みに声がかかることもあります。
 今後、プロジェクト参加企業にNEDO実証事業を踏み台としてもらい、産業界のインフラ輸出の面的拡大につなげていくことが重要と考えています。

――NEDOは今後、プロジェクトをどのように展開していこうと考えていますか。

山本 今後、運転を開始する実証サイトが増えてきます。実証データの分析を通じて、技術的成果を発信し、世界におけるスマートコミュニティの発展に貢献していきたいと考えています。また、世の中に対して、省エネや再生可能エネルギーの高度利用のためのスマートコミュニティの有効性や必要性を伝えていくこともNEDOの役割と考えています。産業競争力の観点では、NEDOのスマートコミュニティ海外実証制度は、我が国の民間企業の海外展開促進に有効に機能し始めており、産業界の皆様には本制度を積極的に活用してほしいと考えています。
 併せて、スマートコミュニティの構成要素の技術を発展させることも重要と考えています。NEDOは、スマートコミュニティ市場の大きな部分を占めることが予想される蓄電池について、近い将来の我が国経済を牽引するリーディングインダストリーに育成すべく、その技術開発に取り組んでいます。
 今後も、スマートコミュニティ海外実証と要素技術の開発を両輪として、スマートコミュニティの発展に貢献していきたいと考えています。

Japan Smart Community Allianceロゴ スマートコミュニティアライアンス

 スマートコミュニティ実証後のビジネスを見据えて、JSCAは、2010年4月に設立されました。会員数は397企業・団体で、電気・ガス、自動車、情報・通信、電気機器、建設、商社、自治体、大学など、多様な業界から多くの企業や組織が参加し、官民一体の対応と業界の垣根を越えた情報収集や情報提供を進めています。事務局はNEDOが務め、経済産業省だけでなく、他の省庁や関連機関との連携を推進しています。
 JSCA は幹事9社と4つのワーキンググループ(運営会員)を中心に運営されており、他に情報会員という一般会員から構成されています。ワーキンググループでは国際戦略や国際標準化、ロードマップ、スマートハウス・ビルが議論され、個別の企業では取り組むことが難しい課題に取り組んでいます。
 また、各国との継続的なパイプを構築しておくことも重要ですので、世界の17のアライアンスが加盟するGlobal Smart GridFederationに加盟するなど、世界との連携も推進しています。

(2014年3月5日現在)


【次ページ】
【特集ページ目次へ戻る】


定期広報誌「Focus NEDO」第52号より