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special report

赤﨑教授との出会いで本格的な研究開発が始まる

 「青色LEDの研究開発をさせてください」
 1980年代半ば、豊田合成で一人の技術者が手を上げた。彼は名古屋大学理工学部電子工学科の赤﨑勇教授(現名古屋大学特別教授/名城大学終身教授)の講演を聴いて青色LEDに興味を持ち、上司に相談した。
 当時、豊田合成は自動車部品事業に次ぐ第2の柱として、中核事業である自動車用のゴムや樹脂部品の他に、何か新規事業を立ち上げたい考えていた。そんな時に、赤﨑教授と出会ったのである。
 その技術者は赤﨑教授の元を訪れ、共同研究を申し込んだ。何度訪ねても赤﨑教授からいい返事をもらうことはできなかったが、根本正夫社長(当時)の懇願により、青色発光が可能なGaN(窒化ガリウム)系化合物半導体の共同研究がようやく始まることになった。1986年のことである。
 しかし、5年間は全く光ることがなかった。そのため、社内からは「やめたらどうか」という声も出たという。そんな時、根本社長は「世界で初めてのことをしようとしているのだから、短兵急な結論を出さず、必ず成し遂げるんだという信念で臨むことが大切」と現場を激励。その後、1991年に青色LEDの開発に成功した。「最初に光った時は、その場にいた全員が歓声を上げたと聞いています。ほかにも青色LEDの開発についてはさまざまなエピソードが残っています」と宮本康司常務執行役員は感慨を込めて話す。

Gan基板検証写真

今後は車載分野にも注力し、さらなる事業拡大を目指す

LEDの製品事例写真  LEDを最初に採用した製品は大型ディスプレイで、国立競技場の大型ビジョンには豊田合成のLEDが使われていた。その後、信号機をはじめ、パソコンやタブレットPC、スマートフォンのバックライトとして使われるようになり、用途はどんどん広がった。「高精細な液晶パネルのバックライトとして、パソコンやモバイル端末において、小型高効率LEDが好評を得ており、照明用途を含めて約500億円の売り上げになりました。ビジネスとして苦しい時期もありましたが、今では自動車部品事業に次ぐビジネスになっています」と宮本常務はうれしそうに話す。
 しかも、LEDの市場全体は右肩上がりで成長を続け、将来は1兆数千億円を超える市場規模になると言われている。ただ、近年では台湾、韓国、中国企業の参入によって、競争はますます激化している。
 「弊社としては、お客様が望むものをつくるというビジネススタイルを貫き、お客様との話し合いによって高効率を追求し、付加価値の高いLEDを提供していく方針です。ゆくゆくは車のヘッドライト・車載関連も拡大し、売り上げを確保したいと思っています」と宮本常務は強調する。
 既に、ハイパワーで高効率なLEDの開発にも取り組んでおり、近い将来、豊田合成のLEDを使用したヘッドランプを搭載した車が登場する予定だ。その他、同社はLEDを使った自動車用内外装部品のラインアップの増加に注力している。
 そんななか、同社は2004年から10年間にわたってNEDOのプロジェクトに参加。「当初は暗中模索の状態でしたが、今ではいいものができそうだと確信しています。産学連携のNEDOプロジェクトがなければ、一企業ではここまでできなかったと思います」と開発本部研究開発部の荒尾浩三部長は話す。
 低コストでの高効率なGaN基板LEDは、世界を変える可能性を秘めている。豊田合成はNEDOでの研究成果を睨みながら今後もLEDの製品開発に邁進していく方針だ。

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定期広報誌「Focus NEDO」第55号より