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今回のノーベル賞受賞を次世代パワーエレクトロニクス開発のさらなる追い風に

突破口を開いた天野教授の研究成果

 今回、ノーベル物理学賞を日本人が受賞したことは、次世代パワーエレクトロニクス(以下パワエレ)の研究分野において追い風になると考えています。身の回りのあらゆる製品に使われている電子デバイスの中で、頭脳に例えられるCPU(電子回路)やメモリーと並び、筋肉に例えられるパワーデバイスは、非常に重要なものです。現在、最も多く利用されているのはSi(シリコン)を使ったパワーデバイスで、その比率は99%にもなります。
 NEDOは現在、次世代パワエレの材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)の研究開発を進めています。これらの材料はSiと比較して、耐圧性能が高いことや電力損失が小さいこと、小型化が可能であることなどの特徴があります。例えば、SiCはSiに比べて、電力損失を半減でき、体積も5分の1ほどにできます。さらにGaNの材料的ポテンシャルは、それ以上と言われています。
 しかし、SiCやGaNはそれぞれシリコンと炭素、ガリウムと窒素というように異なる二つの元素をくっつけて結晶成長させるため、きれいに整列した結晶をつくることは非常に難しく、なかなか成功しませんでした。GaNに関してその突破口を開いたのが、今回ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学大学院工学研究科の天野浩教授です。天野教授が見出した方法できれいな結晶を効率よく成長させることができるようになり、多くの人がGaNの研究に取り組むようになった結果、青色LEDができました。
 今では青色LEDはいたるところに使われるようになっていますが、パワエレ用として使えるようになるためには、よりきれいに並んだ結晶の作成(高品質化)が必要になります。それを目指してNEDOが進めているプロジェクトが「SIP/次世代パワーエレクトロニクス」です。青色LEDができた時のように、今回のノーベル賞受賞によって多くの研究者が次世代パワエレ開発に取り組むようになり、製品化が早まることを期待しています。

パワーエレククトロニクスイメージ図

応用範囲は無限で、電気飛行機も可能に

 GaNのプロジェクトはちょうど今年度からスタートしました。期間は5年間で、参加メンバーは日本企業5社8大学、そして産業技術総合研究所です。GaN結晶の高品質化と低コスト化に重点を置いています。コストについては、シリコンの10~20倍を要するのが現状ですが、いずれはそれを2倍程度にとどめたいと考えています。また、高品質化については、結晶成長の過程での欠陥が1平方センチ当たり100万個という現状から、数千個程度にまで抑えたいと考えています。
 NEDOとしては、良質な材料を提供していくスキームをつくることが大事だと考えており、日本企業への材料提供をミッションの一つとしてとらえています。おそらくプロジェクトが終了して数年後には、世に出てくるものがあると思います。
 その応用範囲は幅広く、電気自動車はもちろんのこと家電、充電器、通信基地局などさまざまなところに使われることになるでしょう。面白い使い道としてはロボットがあります。これまではインバーターが大きすぎてロボットに搭載できませんでしたが、GaNなど次世代パワエレを使えばそれが非常に小さくなるため、人間の動きにより近いロボットが可能になります。いずれはロボットがジャンプすることもできるようになるでしょう。
 また電気飛行機や電気船が出てくるかもしれません。電気船はすでに、Siのインバーターを積んだものはありますが、インバーターが大きすぎてまだまだ満足のいくものではありません。また飛行機は、機体に太陽光パネルを貼って、その電力だけで飛ぶことが日常になるかもしれません。
 このように次世代パワエレは大きな可能性を秘めていますが、NEDOはGaNだけでなく、同じく重要な位置付けであるSiやSiCの研究開発も推進しています。これらの材料のうち何がどの分野に最適かを検証しながら、日本の産業力強化に貢献していきたいと考えています。

パワーデバイスのすみ分け予想図 パワーデバイスのすみ分け予想図

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定期広報誌「Focus NEDO」第55号より