本文へジャンプ

1234 

スペシャル対談

装置が故障したおかげでLEDの研究が大成功に

古川天野教授写真 このたびはノーベル物理学賞受賞、誠におめでとうございます。まず先生がノーベル賞を受賞された意味について伺いたいと思います。ノーベル賞の事務局が出した文書には「電気が届かない15億人に、低コストで光を与え、クオリティ・オブ・ライフを高めることができたすばらしい功績」と書かれています。先生のご感想はいかがでしょうか?

天野 私が抱いていたノーベル物理学賞のイメージは、日本人の受賞者で言えば、湯川先生、益川先生、小林先生のような理論物理の方を対象とした賞というものでした。それがだんだんノーベル賞の性質が身近なもの、人々の役に立つようなものへと変わってきたと感じます。LEDは省エネ効果がとても大きく、2020年の東京オリンピックの頃には日本では70%程度がLED照明になっているだろうと言われています。そうすると、トータルの発電量の7%程度はLEDで省エネができます。このような照明にスポットを当てていただいたのは、ある意味で非常にラッキーでしたし、本当によかったと思います。

古川 実は私もノーベル物理学賞は理論物理の方々でないと取りにくい分野だと思っていました。私も工学部出身なのですが、今回の先生の受賞は、工学全体に携わっている人間に対して非常に勇気を与えてくださったと考えています。

天野名古屋大学写真 私も工学部に少しでも光を当ててもらえて本当によかったと思っています。最初の頃は十分な資金がなく、原料を買うだけで精一杯でした。そこで実験装置を自作。古い装置から部品を取って使ったり、他の研究室で使っていないロータリーポンプをもらって組み立てたりしていました。その後、世界でアピールするにはデバイスまでつくって、きちんと光ることを示さなくてはいけなくなりました。その時にNEDOの仕組みを使うことによって実証を行い、世界にアピールすることができたのです。NEDOには大変助けていただきました。国際的なカンファレンスも増え、そこで恥ずかしくない結果やデータを発表できるのはまさにNEDOのおかげだと思っています。

古川 そう言っていただけると、大変うれしく思います。先生の発明では、バッファ層をかませて基層を成長させるという、私にとって新鮮なものだったのですが、そのような手法というのは最初からずっと考えておられたのですか?

天野 いえ、最初はありませんでした。なかなかきれいな結晶ができないので、何かを挟む必要があるのかなと考えました。そんな時、同じ研究室の人間が研究していた窒化アルミニウムの結晶がきれいなことに気づき、それをバッファ層として使ってみようと思ったのです。ただ、窒化アルミニウムは高い温度でつくらなければきれいな単結晶になりません。ところがたまたま炉の調子が悪くて800~900 ℃までしか上がりませんでした。それで低温でバッファ層に付けてみました。それが最終的には大成功だったわけです。ストーリーとして考えていた手法の一つでしたが、それを実際にすることになったのは、装置が故障していたからだったんです(笑)。


【前ページ】 | 【次ページ】

【特集ページ目次へ戻る】


定期広報誌「Focus NEDO」第55号より