STEP1 仮説立案と仮説の具体化:「日常生活における何らかの不自由・不具合」に関する調査
調査内容
調査の目的
- 「介護保険制度において、給付対象とはならない(介護保険における要支援認定を受けるまで至らない)が、日常生活に何らかの不自由や不便を感じている方々」の定義づけ
- 上記の方々に見られる特徴的な症状、「日常生活における何らかの不自由・不具合」(必要な場面、必要とされている機器、困りごと)の整理
- 課題解決に取り組むべき想定ニーズ(仮説)の立案
調査の方法
- 文献調査
-
専門家へのヒアリング調査
主なヒアリング先- リハビリテーションセンター/機能訓練専門デイサービス
- 高齢者の生活機能向上を目的としたプログラムを有するフィットネスジム
- 高齢者の社会参加(就労やボランティア参加)をサポートする支援機関
- 高齢者の相談窓口である地域包括支援センター、高齢者住宅(自立型)
- 高齢者を多く雇用する事業者、高齢者の就労相談窓口
- 高齢者も訪れる地域の商業施設
- 高齢者を対象とした教室(趣味関連)
- 検討委員会の実施
調査・検討結果
1.第1回検討委員会(2016年2月23日実施)の検討結果(概要)
-
調査結果をもとに、本ニーズ調査対象者の定義づけを検討
※定義づけの検討結果は、<ニーズ調査の対象者の定義づけ>を参照
・本ニーズ調査の対象者を「日常生活に不便さを感じる高齢者」、その前段階にある高齢者を「元気高齢者」の呼称とする
・対象者の枠組みを設けるための基準を設けるのではなく、加齢にともなう主な症状や、心身の状況や社会参加の状況/ライフスタイル、介護予防の取組状況、商品購入の際の考え方などの特徴として表現し、対象者イメージにあった困りごとや製品開発の方向性を導き出す - 日常生活に不便さを感じ始めた頃(初期段階)に購入し、継続的に使えれるような商品を想定して利用する生活シーンにおける困りごとを、第2回検討委員会までに調査する
<「日常生活に不便さを感じる高齢者」の主な生活シーン>
No | 生活シーン分類 | 主な生活シーン |
---|---|---|
1 | 全般/体調管理 |
・生活シーン全般にわたる動作 ・通院、リハビリテーション、自宅での服薬、健康状態の把握 |
2 |
移動 (自宅内の移動を除く) |
・公共交通機関(電車・バスなど)を利用した移動 ・自家用車の運転、自転車・バイクの運転 ・屋外の歩行、自宅以外の施設内の歩行 |
3 | 生活 |
・自宅内の移動 ・買物・食事の用意・後片付け、洗濯、住宅内掃除、住居まわりのメンテナンス(雪かき、草むしりなど) ・預金の出し入れや請求書の支払、新聞や雑誌からの情報収集 ・家族の介護・看護・育児、お見舞い ・健康維持のための運動、趣味やレジャー |
4 |
セルフケア (食事・排泄・入浴・睡眠など) |
・外食、自宅での食事 ・入浴、歯磨きや身だしなみ・化粧、排せつ、睡眠 |
5 | 社会参加/コミュニケーション |
・就労(マンション・ビル管理・清掃業務、介護補助職、事務職ほか) ・ボランティアや地域活動への参加、友人や若者との交流 ・職場やコミュニティにおけるコミュニケーション |
6 | IT機器の操作 |
・電話・パソコン・タブレット・スマートフォンなど通信機器の操作 ・ビデオ・DVDなど家電製品の操作 |
2.第2回検討委員会(2016年4月13日実施)の検討結果(概要)
-
大規模インターネットアンケートの全体像の確認
・回答対象者は、インターネットアンケートシステムに登録するモニター
・「日常生活に不便さを感じる高齢者」の本人500サンプル(65歳以上) および本人と同居または近居する家族500サンプル(40歳~65歳)を回収
・さらに、モデル地域として、川崎市・三重県・和歌山県にて各120サンプルを回収
・全体の設計は、スクリーニング調査で対象者を絞り込み、本調査で生活の実態・日常生活における不便さや不安について意見を収集
スクリーニング調査「日常生活に不便さを感じる高齢者」に回答者を限定するための調査① 基本属性 ② 介護保険の認定状況(認定者は除外) ③ 日常生活における不便さ(元気高齢者を除外) <家族による代理回答の場合の設問> ④ 同居と近居の状況(同居と近居以外は対象外) |
本調査(1,360サンプル回収)日常生活の状況と想定ニーズの検証をおこなうための調査① 家族や住まいの状況 ② 日常生活における活動状況 ③ 客観的に見た不便さ ④ 本人が認識している日常生活の不安・不便さ ⑤ 日常生活の不安・不便さについての自由回答 |
-
大規模インターネットアンケートにおける対象者の抽出方法の検討
・「日常生活に不便さを感じる高齢者」をアンケートモニターから抽出するための設問項目を検討。65歳以上の高齢者から介護保険認定者は対象から除外した後、元気高齢者を除外するための設問設計の検討
・以下にあげたA生活面での不便さおよびB生活全般に不便さをもたらす、多くの高齢者に見られる疾病に関する設問項目のうち、1項目でも該当した人を「日常生活に不便さを感じる高齢者」とする
A 生活面での不便さ
① 段差や車止めなど、ちょっとした段差でつまずきやすい | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
② ものが掴みづらく、食器や箸などを落としてしまう | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
③ 耳が聴こえづらく、人によっては会話がしづらいと感じる | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
④ 昼食に食べたものを夜に思い出せない | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
⑤ 階段は、手すりや壁をつたわって昇る | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
⑥ 椅子に座った状態から、何もつかまずに立ち上がることができない | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
⑦ 毎日の生活に充実感がない | ■よくある | ■時々ある | □あまりない | □全くない | □分からない |
B 生活全般に不便さをもたらす、多くの高齢者に見られる疾病
⑧ 白内障または加齢黄斑変性と診断されている(老眼除く) | ■はい | □いいえ | □分からない |
⑨ 病気やけがの後遺症がのこっている | ■はい | □いいえ | □分からない |
①~⑨の■に1つでも該当すれば対象者
-
大規模インターネットアンケートの設問項目の検討・精査
・各設問項目・選択肢の表現について精査
・対象者の活動量をレベル分けするための指標の検討
「1回あたりの平均的な外出時間」と「外出時間」に分けて、それらを掛け合わせて活動レベルを設定
・「日常生活に不便さを感じる高齢者」の生の声を収集するため、自由回答項目の設定