NEDO Web Magazine

電子・情報

デジタル情報機器相互運用基盤プロジェクト(情報家電分野)

ホームITシステムで、外出先からも、「家のこと」を思いのままに

東芝ホームアプライアンス株式会社

取材:November 2008

INTRODUCTION 概要


"快適な生活"は家の使い勝手から。ITが進化するにつれ、暮らしの各シーンで便利かつ安全に利用できるネットワークシステムが開発されています。

BIGINNING 開発への道


だれもが気軽に安全にネットワーク技術を使って便利な暮らし

現代社会では、これまでに携帯電話やパソコンによるネットワーク環境が普及してきました。これからは、携帯やパソコンがテレビ、エアコンといった家電製品とネットワーク化され、さらに便利な暮らしが実現するのです。

たとえば外出中、携帯電話で「エアコンや床暖房を入れる」「帰宅後すぐに入浴できるようお風呂にお湯を入れる」「防犯のため部屋の照明を付ける」「鍵掛け確認や鍵掛けをする」といったことを思いのまま操作できます。 また家の中でも、テレビ画面を通した操作で別の部屋の照明を消したり、宅配ボックスに荷物が入ったことを確認できるのです。

そのためには、どのような環境におかれた人でも、ネットワーク技術を気軽に、アクセス・操作できることが重要になってきています。また、サービスの安全性やプライバシーの保護などの強化も必要になります。

こうした課題に取り組み、人々が「家のこと」を家の中でも外でも安全かつ快適にチェック&コントロールするシステムが開発されています。

規格の異なる製品同士でも遠隔操作できる技術を開発

家電製品の操作は、同じメーカーでも、製品によって基本となるシステムが異なる場合があります。メーカーごとに規格が異なっている場合もあるのが実状です。

東芝ホームアプライアンス株式会社では、そうした規格の違いを乗り越えて、家電製品をネットワーク化し、家の中ではもちろん、携帯電話やインターネットを通して、家の外からコントロールできる技術を開発しました。

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それは、ゲートウェイを介して家の中の様々な機器とインターネット通信できるリモートアクセス技術です。

ゲートウェイとは、利用者が使う携帯電話などからの操作情報を、家の中にあるエアコン、照明、映像機器、パソコンなどの各機器に伝える"分岐点"です。また、機器どうしの情報信号を取り次ぐ"中枢"にもなります。

ネットワークの規格は機器の種類により様々です。エアコンや照明などの"白物製品"はECHONET、映像機器は「iリンク」とも呼ばれるIEEE1394、通信可能なHDD&DVDレコーダやAV機能搭載パソコンなどはUPnPといった具合です。

この3規格のうちUPnPネットワークを中心に据え、ECHONETやIEEE1394との相互接続を実現しました。異なる規格のネットワークがゲートウェイでつながったため、「テレビの画面からの操作で他の部屋の照明を消す」といったこともできるようになったのです。

リモートアクセスは、「携帯電話端末→インターネット→ゲートウェイ」といったルートで、家の中の家電製品の遠隔操作を可能にする技術です。以前から既に外出中に家の留守番電話に連絡をして家電製品を操作するシステムがありましたが、電話代がかかるなどの理由で普及せず、インターネットを介した同様のシステムが求められていました。

同社では、このNEDOプロジェクトの成果を応用して、製品化を進めていきたいと、話しています。

家電製品がつながることで、気づかぬ"省エネ"を実現

そもそも、なぜ家電製品同士をネットワーク接続させる必要があるのでしょう。背景の一つには地球環境への配慮があります。

各種家電メーカーは家電製品単品の省エネを追求し、個々の製品のエネルギー効率をほぼ向上しつくしました。そこで、さらに省エネを実現するために重要となるのが、"家電製品どうしの連携"です。

たとえば、エアコンに付いている人感センサーが「この部屋に人がいる」と感知すると、別の無人の部屋の照明が自動的に消える。このような製品間の連携を取ることで、電気の無駄遣いを防ぐことができるのです。

東芝ホームアプライアンス株式会社ホームIT事業推進部企画担当グループ長の平原茂利夫さんは「機器間のネットワークによるエネルギーマネジメントによって、利用者が『省エネをしなくては』と感じずに省エネを実現させることが可能になります」と話します。

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東芝ホームアプライアンスのITホームゲートウェイ

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エアコン用Bluetooth接続アダプタ。
Bluetoothはパソコンなどで利用される短距離無線通信技術。

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


平原さんは「苦労した点は、ゲートウェイを介して各社製品を理論上でなく実際に接続させることでした。やはり各社で開発の方向性や戦略は違います。それをまとめるために、我々は、完成したホームITシステムを使う"ユーザーの利便性"を第一にしてお互い歩み寄ったのです。」と言います。

ゲートウェイによる相互接続実験では、東芝ホームアプライアンス(株)、三菱電機(株)と(株)NTTドコモが、また、ECHONETの相互接続実験では東芝ホームアプライアンス(株)、安川情報システム(株)、三洋電機(株)が参加。「トライ・アンド・エラー」の末、2005年冬の公開実験で、メーカーを超えたネットワーク接続に成功しました。

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リモートアクセスでは、インターネット利用上のセキュリティ向上が技術開発の壁となりました。従来のインターネットを利用したリモートアクセスでは、家の中から外に情報を送信することは簡単ですが、家の外から中に情報を受信する場合、安全性を確保するため、リアルタイムでサーバーと通信しない「ポーリング方式」を採用しています。

しかし、この方式では外出先からの遠隔操作時に、どうしてもタイムラグが生じてしまいます。平原さんらは、「携帯電話で遠隔操作しても機器が動くのは数分後」ではなく「操作すれば即時に機器が作動する」方法はないかと考えました。その結果、リアルタイムで情報を受信する「ダイレクト方式」を導入しました。

ダイレクト方式が導入できたのは、不正アクセス問題を解消できたからです。従来の、携帯電話端末からインターネットを使って直接ゲートウェイにアクセスするダイレクト方式は、タイムラグがないものの、不正アクセスが起こりやすいことが難点でした。誰かに勝手に家の中の家電製品を操作されては、安心してネットワークシステムを利用できません。

そこで、東芝ホームアプライアンス株式会社では、インターネットとゲートウェイの間にワンクッション、利用者を識別するサーバーを経由させる方法を考え出しました。

サーバーとゲートウェイ間の通信管理はメーカーが担い、「最も不正アクセスされやすいこの部分を、私たちに管理させていただくことで安心してお使いいただけます」と平原さんは言う。話を聞けば、他愛のないことのように聞こえますが、この方法に行き着くまでには、数知れぬ試行錯誤がありました。

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


お客様の利便性第一に、競合相手との共同開発も

従来、各メーカーは"共同開発者"ではなく"競合相手"。各社はこぞって独自の規格をつくろうとしがちです。しかし、利用者の便利を考えれば、一社が作った製品の間でしかつながらないネットワークより、色々なメーカーの製品がつながるネットワークのほうがはるかに利便性は高いといえます。

「競合相手と共同開発するのは難しいもの。今回、各メーカーが集まって相互接続ネットワークに取り組む機会を与えてくれたNEDOの役割はとても大きかったですね」と平原さん。NEDOのもとで各メーカーが自社の利害を超えて利用者本位で歩み寄った結果、ホームITシステムの実現が加速したとのこと。

平原さんは「Bluetoothという無線ネットワークが利用できるので、新築のときにシステムを導入するだけでなく、既築の住宅にも新たに導入していただくことができます。より多くの皆様にご利用いただけるサービスにしていきたいですね」と語ります。より多くの人に快適な生活を提供するための取り組みは、これからも続いていきます。(2008年11月取材)

開発者の横顔


快適さと安心をより多くの方に

東芝ホームアプライアンス株式会社ホームIT事業推進部企画担当グループ長・平原茂利夫さん。

弊社のホームITシステム「フェミニティ」シリーズは、現在、集合住宅用を中心に約4000ユーザーに利用されています。利用者の皆様からは「生活が便利になっただけでなく、遠隔操作で部屋の照明を点けておくことができるので、夜中に安心して帰宅することができる」などの声をいただいています。今後は、戸建住宅の方にもより多く利用していただきたいと思います。

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ホームITシステム「フェミニティ」を紹介する平原さん(川崎市にある東芝科学館にて)
「デジタル家電の部屋」にて。

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