NEDO Web Magazine

環境問題対策

省水型・環境調和型水循環プロジェクト

海水淡水化と下水処理技術の融合で、エネルギーやコストを大幅削減

海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)

取材:September 2017

INTRODUCTION 概要


限りある水資源、海水淡水化技術の普及へ

地球の水資源のうち私たちが使うことのできる水(淡水)は、わずか0.8%未満しかありません(※1)。その一方で、必要な水資源の量は増え続けており、2050年に必要となる水資源が、2000年比1.5倍の約5,400Km³になるという予測もあります(※2)。そうした貴重な水資源を有効に使用するため、世界各地で、海水を膜で処理するシステムが広く使われています。しかし、その運転には大きなエネルギーが必要で、また、周辺環境を悪化させるといった問題も生じてきています。こうした問題を解決するため、NEDOの水循環プロジェクトで海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)が、新しい発想の水処理システム「海淡・下水再利用統合システム」を開発しました。すでに海外での実証事業も始まり、世界的な水資源問題解決への貢献が期待されています。

※1 出典:国土交通省
※2 出典:経済協力開発機構(OECD)

BIGINNING 開発への道


コスト高と塩分濃度上昇を抑制する「海淡・下水再利用統合システム」

地球には非常に多くの水資源が存在していますが、そのうち私たちが利用可能な水(淡水)は、わずか0.8%未満しかありません。そのため、淡水を作り出す技術として、海水や下水に含まれる不純物を除去して、飲用可能なレベルまで処理する膜があります(→「なるほど基礎知識」参照)。例えば、海水を膜で処理して淡水にすれば、飲料水や、工業用水、農業用水としても使うことができます。

淡水を得にくい中東やアフリカなどの乾燥地帯では、すでにこの海水淡水化システムはおなじみのものです。しかし、いま使われている海水淡水化システムには、大きな課題が二つあります。

一つは、運転に大きなコストを要することです。特に、海水を淡水と排水とに分ける「逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜」の工程では、逆浸透という原理を利用するために、海水に高い圧力をかけなければなりません。そのため、動力に費やすコストが運営コスト全体の半分ほどにもなってしまいます。

もう一つは、海に返す排水の塩分濃度が高くなってしまうことです。膜で処理した淡水を使うわけですから、使わない排水には塩分が濃縮されます。その排水を海に戻すと、周辺の海の塩分濃度がどんどん高くなってしまうのです。

この二つの大きな問題を解決するために開発が進められたのが、今回紹介する「海淡・下水再利用統合システム」です。

同システムは、海水を淡水にするシステムと、下水を膜で処理して浄化するシステムとを合わせたもので、下水を膜で処理する過程で発生する排水(下水RO 濃縮水)を、海水を逆浸透膜で処理する工程に混合します。

それにより、海水淡水化ラインの逆浸透膜に送り込む水の圧力を半分程度に抑えられることが可能で、動力コストを減らすことができます。さらに、逆浸透膜に通す海水の塩分濃度が薄まるため、排水の塩分濃度を、海水同様のレベルに抑えることが可能になります(図1)。

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図1 「海淡・下水再利用統合システム」全体の工程(資料提供:GWSTA)

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写真1 処理前の下水(左)、MBR 処理後の水(右)、統合システムでの最終生産水(中央)

省エネルギーと低コスト化を目指す

NEDO プロジェクトでリーダーを務めた篠田猛さんは、「日本の水ビジネス業界は、いま世界で展開している海外水大手企業に大きく引き離されています。それを埋めるため2008年に水に関係する企業が結集して、『海外水循環システム協議会(GWRA)』がつくられました」と説明します。

このGWRAのメンバーであり、水環境ソリューション事業を行っていた株式会社日立プラントテクノロジー(のちに株式会社日立製作所)と膜技術を手がける東レ株式会社が、2009年から始まったNEDOの「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」において、海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)を設立しました。

「遅れを取り戻すだけでなく、技術開発で差別化をはかり、後追いだからこそ可能な成果を出したいと考え、GWSTAを設立しました」(篠田さん)

このプロジェクトでは、福岡県北九州市内に「ウォータープラザ北九州」を設立し、2011年4月から2014年3月まで3年間、実証試験を行い、通常の海水淡水化システムに比べて省エネルギーと低コスト化の達成を目指しました(写真2)。

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写真2 北九州市小倉北区西港町にある「ウォータープラザ北九州」。関門海峡に面した海水取水口(上段左)、取水された海水(上段右)は隣接する下水処理場(下段左)の脇を通って、新プラントの前処理行程へ(下段右)、この工程後、海水は下水処理工程からの排水で希釈される

「東レをはじめ、日本の膜技術は素晴らしいものがありますが、この海水淡水化システムは、コストが見合い、支障なく運転を続けられることを実証してこそ、売れる技術になります。それを実現することがGWSTA に課せられた目標でした」(篠田さん)

研究開発の立案に当たっては、実証試験の実施場所について、念入りに選考しました。全国を調査し、その有力候補として上がってきたのが北九州市でした。

篠田さんは、「北九州市は水関連事業を含め、世界へ環境関連の技術者を、数多く派遣している実績がありました。また同時に、150を超える国や地域から、研修者を受け容れてもいました」と話します。

「そのような自治体は日本中探しても北九州市だけ。そしてなにより、このシステムの実証試験には不可欠な、海水と下水の両方が手に入る、関門海峡に面した下水処理場が北九州市にはありました」(篠田さん)

こうして、NEDOプロジェクトのもと「ウォータープラザ北九州」が、2010年12月に同市小倉北区に開設され、翌2011年から実証実験が始まりました。

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


「海水」も「下水」も枯渇しない「水資源」という発想がシステムの原点

NEDOプロジェクトで「海淡・下水再利用統合システム」の実証に至るまでには、いくつものブレークスルーがありました。

一つは、膜技術で海水を淡水化するシステムと、下水処理システムを組み合わせるというアイデアです。プロジェクト提案前、中東などで水処理の実態を調べているなかで、このアイデアが浮かび上がってきました。

篠田さんは、「既存の海水淡水化システムでは、逆浸透膜に高圧で水で通す工程に運転コストの大部分が費やされていました。そして、そうしたコストの高い淡水が、中東諸国では飲料水だけでなく、工業用水や農業用水としても大量に使用されている現状がありました。このような状況をどうにかしたいという思いが、海水淡水化システムに関わる技術者には長年ありました」と話します。

そこで篠田さんらGWSTAのメンバーは、どのような場所の水を活かせば状況を変えることができるかを考えました。

篠田さんは言います。「そこで思いついたのが今回取り組んだ新システムです。河川や湖沼の水は、枯渇することがあるかもしれません。一方、海水はもちろん、海水を淡水化して利用するかぎり、そこから生じる下水も、その枯渇リスクは低いはずと考えました。この二つを合わせたシステムを作ることは理にかなっているとメンバーの議論がまとまりました」

下水処理で生じる水を使って海水の淡水化のコストを抑え、なおかつ海への排水の塩分濃度を海水と同様のレベルに保つという方法は、このようにして生まれました。

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写真3 下水を処理した後(左)、その過程で生じた排水(下水RO濃縮水)を海水淡水化の工程(右)に送り込む

膜の汚れの原因を突き止め、対策を講じる

次のブレークスルーは、膜の汚れを低コストで解決できるようにしたことです。このシステムでは、海水だけでなく、下水処理水も合わせて逆浸透膜で処理します。そのため、海水のみを処理する場合よりも、膜に汚れが多くつくことが懸念されました。

実際、実証試験を行った3年間のうち1年目の夏は、汚れ具合の指標となる膜間差圧の変動幅が急激に大きくなる現象に悩まされ続けました。そのまま装置を使いつづけると逆浸透膜がつまり、安定した運転ができない状態が断続しました。

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写真4 「ウオータープラザ北九州」に設置された海水RO膜(左)と、下水RO膜(右)

篠田さんは、「まず、汚れの主成分が海水由来の無機物なのか、下水由来の有機物なのか、それを見極めることから始めました。それがわからなければ、対策の取りようがありません。しかし、季節の変動などを考慮すると、半年以上の時間をかけなければ、成分と汚れの因果関係を見きわめるのは困難です。その点、今回のNEDO プロジェクトは、3年という長い実証期間が設定されていたので助かりました」と言います。

それでは、結局、その汚れの主成分は何だったのでしょうか。GWSTAの一員で、現在は「ウォータープラザ北九州」所長を務め、プロジェクト期間中は研究開発メンバーの中心であった濱田英明さんは説明します。

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写真5 下水RO濃縮水で希釈された海水をRO膜へ送り込むポンプ

「汚れの原因はなんと微生物でした。さらに驚いたことに、海水系の細菌が下水処理された水の成分を養分にして活性化し、汚れとなっていたのです」(濱田さん)

海水の淡水化と下水の処理をまとめて実施するために生じた皮肉な結果とも言えますが、汚れの主成分を突き止められたことは、実用化に向けた大きな一歩でした。

濱田さんらは、この微生物の発生を抑える殺菌剤を探しました。「2年目の夏、『2, 2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)』という殺菌剤を使ってみると、見事に細菌に効きました。ただしこの薬品は高価なうえ、常に投入が必要で、とてもコストが見合うものではありませんでした」(濱田さん)

そこで、DBNPAほど高価でなく、DBNPA並みの殺菌効果を発揮する薬品を見つけ出すことが、2年目の重要な課題となりました。そして、担当する研究員らが調べていくなかで、また一つの物質にたどり着きました。「クロラミン」でした。学校のプールの、あの独特の臭いの元で、水道水の消毒などに使われることもある化合物です(写真6)。

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写真6 施設内のクロラミンの合成施設。分解しやすいため次亜塩素酸ナトリウムとアンモニアを施設内で混ぜてつくる

微生物が再び活性化する3年目の夏、クロラミンを使ってみると効果はてきめんでした。

実は、これまで海水淡水化分野では、膜の汚れの原因となる微生物を抑えるにはクロラミンは適さないというのが通説でした。それはクロラミンが膜を傷つけてしまうからでした。ところが今回のシステムでは、逆浸透膜へと送り込む水圧が半分で済むため、クロラミンによって傷んでしまうはずの逆浸透膜が傷まずに汚れを落とすことができました。

「前年とほぼ同等の効果を、量も頻度も抑えながら得ることができました」と濱田さんは言います(図2)。

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図2 海水を淡水化する逆浸透膜における汚れの度合の変化(資料提供:GWSTA)

生産水の供給を決して止めない

最後の大きなブレークスルーは、システムで作られた「生産水」を施設外の企業に供給し続けることでした。これには、GWSTAメンバーの強い思いがありました。

篠田さんは、「生産水の水質が基準を満たしているということをアピールしても、本当に安定供給できたという実績が加わらないと、ユーザーのみなさんには納得してもらえませんから、実用化には連続給水が欠かせなかったのです」と説明します。

「ウォータープラザ北九州」の南西およそ500mに九州電力新小倉発電所があります。GWSTAは北九州市にも協力を仰ぎ、ここへ生産水を送ることに決めました。実際、計画どおり、2011年4月から実証期間中の2年半にわたり、生産水は安定的に供給することができました。生産水は連続的に水質確認を経て、発電に不可欠なボイラー用水として使用されました。

所長として施設を安定的に稼働させることを担っていた濱田さんにとって、この連続運転、連続供給は、力の入れどころだったようです。

「供給を開始する直前まで水質の基準を満たすための試行錯誤を続けました。夜、生産水を中継タンクに貯め、翌朝、給水することになっていましたが、膜が汚れても運転を止めるわけにはいかないので、特に夏場には気をつかいました。あるとき、九州電力に送った水の質が低下する事態が発生しました。調べてみると、処理システムではなく、ウォータープラザから九州電力までの給水管でした。この給水管は、長年利用されておらず、古くなってしまっていたため、給水管から不純物が溶け出していることがわかりました。すぐに給水管を交換しました」(濱田さん)

生産水は、九州電力以外にも場内の雑用水・噴水や、夏祭りの打ち水などに使われ、計画当初の目標を果たしました(図3)。

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図3 生産水の利用(資料提供:GWSTA)

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


NEDOプロジェクトの成果から、南アフリカのNEDOプロジェクトが

GWSTAが取り組んだNEDO「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」は、2014年3月に完了となりましたが、このプロジェクトをきっかけに、南アフリカでこの海水淡水化技術を実証するNEDOプロジェクトが開始されるなど、成果は発展・継続しています。

プロジェクト中、北九州市のはからいで、「ウォータープラザ北九州」に、南アフリカ共和国・ダーバン市水道局の職員が視察に訪れたことがありました。単独の海水淡水化システムよりも、省エネルギーや低環境負荷を実現する「海淡・下水再利用統合システム」に彼らは強い興味を示し、視察後も情報交換や交流が続きました。

そして、NEDOの「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業(現:エネルギ消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業)」の「海水淡水化・水再利用統合システム実証事業」で、2016年度から5年間、同国のダーバン市で、「海淡・下水再利用統合システム」と同様のシステムによる実証研究を実施することが決まりました。

水を作る上での安定性や、南アフリカにおける飲用基準を達成すること、また、従来の海水淡水化システムに比べて約30%の省エネルギー性能や低環境負荷性能を実現することが目標となっています(図4)。

飲み水をはじめ、水資源を確保するのが難しい地域は、世界中に数多くあります。NEDOプロジェクトで培われた高効率なシステムが、そうした地域で普及していくことが、この実証事業に期待される成果となっています。

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図4 造水コスト費の試算結果(資料提供:GWSTA)

「テストベッド」から新たな水処理技術が生まれる

「ウォータープラザ北九州」の資産はNEDOプロジェクト終了後、北九州市に無償譲渡されました。施設内には、実証設備のほか、水処理要素技術及び機器の試験・研究開発が行える「テストベッド」と呼ばれる区画があります。NEDOプロジェクト期間中も終了後も、多くの企業から利用の申し込みがあり、日本の水処理技術の高度化の一翼を担うまでになってきています。

篠田さんは、「実際の海水を使って試験をできるような環境は、日本中を見渡してもなかなかありません。すでにテストベッドから、新しい膜技術や、新しい動力回収装置などが生まれています」と話します。

北九州市譲渡後3年となった2017年4月、「ウォータープラザ北九州」はさらに3年間、市の資産としてGWSTAが運営することに決まりました。

所長の濱田さんは、「テストベッドへの申し込みは途切れません。延長期間は2020年3月までですが、そのときもまた延長されるような状況になっていてほしい」と期待を込めて語ります。

「NEDOプロジェクトであること」を利用して海外の水ビジネスを展開

実証の成果をより確実に得るために、今回、NEDOがGWSTAとともに取り組んだプロジェクトでは、水処理技術の分野における大学研究者などにアドバイザー役を担ってもらいました。

「プロフェッショナルの厳しい目で、学術的な追及をしていただきました。たとえば、汚れについての現象を報告すると、汚れの原因や、そこで生じている化学反応がどのようなものかまで求められました。内部のメンバーだけで進めるのとは違い、外部からのフォローアップをいただいた点は大いに助かりました」(篠田さん)

また、「NEDOプロジェクトであることをうまく利用できた」とも話します。「NEDOが開催するフォーラムに参加して、事業の紹介をしました。通常の企業活動なら、海外へむけて独自にシステムを営業・広報しなければなりませんが、NEDO主催のフォーラムなどで国内外の来場者に向け、研究開発の進捗状況などを伝えることができました」(篠田さん)

「さらに、グローバルにネームバリューがあるNEDOプロジェクトに取り組んでいるということが、海外企業に対しては大きな信用につながりました」(篠田さん)

海水の淡水化などの水処理ビジネスをめぐっては、日本は膜技術の高さを誇れるものの、それをシステムやサービスとして提供してく競争力には課題があると言われてきました。

そのため「海淡・下水再利用統合システム」の成果を発展させることが、日本の水循環システムの産業競争力のさらなる強化につながることを期待しています。

開発者の横顔


研究開発の望ましいスタイルをとれました

篠田さんは、GWSTA事務局長に就任する前は、株式会社日立プラントテクノロジー(現在の日立製作所)の社員として海外を中心に、廃水処理や上下水道整備などの計画・設計に当たってきました。

「企業にいたころはプロジェクトに1年かけられるかどうかでした。今回のプロジェクトは、『水不足』という問題の提起から始まり、3年の期間をいただいて実証するという、研究開発として望ましいスタイルをとることができました」

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海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)
事務局長
篠田 猛 さん

さまざまな人をまとめるおもしろさ

濱田さんは「ウォータープラザ北九州」の所長に就任する前は、株式会社日立プラントテクノロジー(現在の日立製作所)で、下水処理技術の研究をしていました。いわば研究者から所長への転身でした。

「設備を運転する人、成分を分析する人、見学者に説明をする人……いろんな企業からいろんな人が集まっているのがこのプラザ。それを一つの組織にして情報発信し、一方で運転や水の供給にも責任を持つ。研究者時代よりいろいろな仕事があって大変ながらも、おもしろいですよ。『ウォータープラザ北九州』として、また何か新たなプロジェクトに挑戦できたらとも思っています」

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海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)
ウォータープラザ北九州 所長
濱田 英明 さん

なるほど基礎知識


水をきれいにするために使われる「膜」

海水や下水などをきれいな水にするために「膜」が使われています。実際はコーヒーフィルターのように1枚の膜に水を通過させるのではなく、膜をバームクーヘンのように重ねて円筒形にし、そこに水を通過させて処理しています。

水処理システムでは、用途などにより何種類もの膜が使われています。ここでは「ウォータープラザ北九州」の「海淡・下水再利用統合システム」で使われている膜を例に見ていきます。

海水を淡水化する工程では、まず「限外ろ過(UF:Ultra Filtration Membrane)膜」という膜が使われます。孔の径が1nm〜10nmで、海水に含まれるさまざまな分子に「ふるい」をかけるような役目を果たします。この膜よりも大きな、藻、泥、それに病原菌などが除去されます。

限外ろ過膜を通過した海水は(今回のシステムでは下水RO濃縮水が加わって)「逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜」へと送られます。孔の径は1nm〜2nmほど。逆浸透膜では浸透圧を上回る圧力をかけることで、水分子だけが濃度の高い側から低い側に移動していきます。この原理を使って、海水中のイオンや塩類などと水分子を分離します。

一方、下水処理の工程では、まず「精密ろ過(MF:Micro Filtration)膜」という膜の出番となります。孔の径は50nmほど。精密ろ過膜は「膜分離活性汚泥(MBR:Membrane Bio Reactor)法」という処理法に使われています。

これは、下水に空気を吹き込んで活性汚泥を生じさせ、この活性汚泥を使って水に含まれる有機物を分解し、水をきれいにする処理法です。この方法で処理された水と、活性汚泥を分離する必要がありますが、その分離のために精密ろ過膜が使われています。

膜分離活性汚泥法の工程を経た水は、下水処理工程における「逆浸透(RO)膜」で処理されます。本システムでは、この工程で生じた排水(下水RO濃縮水)が海水淡水化の工程に混合され、海水を希釈するのに使われます。

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写真7 逆浸透(RO)膜と精密ろ過(MF)膜

NEDOの役割

「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」
(2009~2013年度)

(NEDO内担当部署:環境部)

NEDOでは、世界の水問題解決に貢献すべく「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」を推進しました。このプロジェクトは、膜などの要素技術の開発に加え、国内外におけるシステム実証研究も実施しています。

プロジェクトの推進にあたっては、外部専門家によるヒアリングを定期的に実施し、進捗や方向性、問題点等を第三者の目で厳しく精査できる体制を整えました。そして、その結果をプロジェクトのマネジメントへフィードバックすることで、より効果的・効率的なプロジェクト推進を図りました。

また、将来の本技術の事業化を見据えては、国内外の展示会への積極的な出展はもちろん、ウォータープラザ敷地内に「ビジターセンター」を設置することで、実施者が主体的となって積極的に情報発信を行える場を構築しました。その結果、南アフリカ共和国のダーバン市が興味を持ち、NEDOの国際実証事業で本技術の大型実証を実施するに至りました。

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